一枚岩の組織は強い
誰もが知る鉄則と言ってよいでしょう。
ではどうやってその状態を作るか?
朝礼でスローガンを唱え、皆でエイエイオーをすればできるか?
- 組織の力を作れる理由
- 正真正銘、サンマルクを一枚岩にしようと試みた片山社長
- フランチャイズシステムに潜む「販路問題」
- サンマルクが採った戦略
- 片山社長の「決算発表へのこだわり」
- 力の無い時代の苦労は、大企業にいては経験できない
組織の力を作れる理由
もしも掛け声だけで一枚岩の組織が実現できているとすれば、それはエイエイオーのおかげではないはず。
真の理由はあえて言葉に出さず、わかり易い儀式的なトピックを前面に立てているだけでしょう。
一枚岩とは言葉を換えれば「上下関係がまとまっていること」
織田信長がてこずった本願寺門徒宗は、本拠地大阪で頑強な抵抗を続けました。
門徒宗は織田軍と違って職業軍人ではありません。
つまり、封建式の主従関係(領地をくれる主に従う)だったわけではない。
教義によって指導層と下層がまとまったものです。
だから信長は、最終的には門主に政治的駆け引きを仕掛けるしかなくなった。
戦場で戦う意思を持ち続けた、厄介な下層民との分断を迫ったのです。
これが功を奏し、ようやく織田家は大阪本願寺を降した(和解した)、と。
正真正銘、サンマルクを一枚岩にしようと試みた片山社長
60歳にして亡くなられたサンマルク創始者・片山直之さんは、難しい「フランチャイズの一枚岩化」を本気で目指していた方です。
https://www.saint-marc-hd.com/saintmarc/
本質を突く疑問
片山社長が語った言葉で、心に沁みたものは多い。
これも、その中のひとつです。
「大体フランチャイズっていうのは、契約はそうだとしても実態はFC本部が加盟店にモノを売る販路で、これはフランチャイズの在り方として問題があると思うんです」
こう語った後
「というのは、(加盟店が)得意先になっちゃいますからね」
この一言こそ、片山社長が目指したフランチャイズの理念を表す言葉として、私を魅了するものです。
フランチャイズシステムに潜む「販路問題」
この話は、コンサルタントの神田昌典さんがインタビューしたCD教材で聞いたものです。
最初のうちは正直言って、片山社長が何を言っているのか、意味がまったく分からなかった。
レストランやカフェなどを展開するサンマルクですから、「販路」という言葉が当てはまるのは、せいぜいレジ前の物販ぐらいしか思いつきませんでした。
https://www.saint-marc-hd.com/saintmarccafe/
フランチャイズが一枚岩にならない理由
⇒ 本部にとって加盟店が販路(得意先)だから ???
私にはさっぱりでしたが、これだけで「それはそうだよ」と理解できる人って、どれくらいいるのでしょう?
本部は加盟店への卸販売で稼ぎ、ロイヤリティーでも稼ぐ
私がこの教材CDをかれこれ50回以上聞いて、やっと理解できたことを簡単に記述します。
“販路”とは、主に食材の売買に関するもので、フランチャイズ本部が加盟店に商品として卸販売する形態であることに基づいています。
片山社長はこう言います。
「本部は永久に高く売りたいし、加盟店は安く買いたい。そうすると利害が一致しないんですね」
サンマルクが採った戦略
一枚岩のサービス提供集団になるためには、本部には売上に応じたロイヤリティしか入らないようにする。
すると本部は自分たちが儲けたかったら、加盟店に多くのお客さんが来てもらえるようなバックアップに知恵を絞らざるを得ない。
食材価格の上げ下げで加盟店としのぎを削るような、エネルギーのロスは生じない、と。
なるほど。
片山社長の「決算発表へのこだわり」
あと、片山社長のこだわりとして「業績が悪くなっても、決算発表会では自分が前面に立つ」というものがあります。
業績が悪い時の決算発表では、社長に非難が集中する。
企業に広報部が作られる理由の多くは、社長が非難を避けるための身代わりを立てるためで、だからだいたい業績悪化のときにできるとのことです。
だからこそ、業績が悪い時ほど自身が前に出て、誰かを批判の的にしないというスタイルだったようです。
力の無い時代の苦労は、大企業にいては経験できない
片山社長は、サンマルクの前身を叔父さんから引き継ぎました。
多額の借金を負いつつ、会社を全国組織に育て上げる中では、数々の苦労がありました。
初期はオーナー兼店長として古参の職人と対立し、総上がり(部下を引き連れて辞めること)を喰らったりしましたが、だからといって感情的になるとか冷酷になったというよりは、『苦労人』だったような印象です。
極めてクレバーかつ真面目な方であったゆえか、経営スタイルも独特な方でした。
この精神性や発想力は、他人には簡単に引き継げないものでしょう。
だから現経営陣には苦労が多いと思いますが、日本の飲食店界を盛り上げるべく、これからも頑張ってほしいです。