楽しんで書き続けているうちに、主人公・岩崎白昼夢(さだむ)警視をクローズアップする記事が3回目となりました。
「翔んでる警視」関係の記事だと、もう何回になるか…。
煮ても焼いても食えぬヤツとか、箸にも棒にも掛からぬヤツという人物は、割とあちこちにいるかと思いますが、多くはちょっと集団から離れた独自路線を行くタイプだと思います。
しかし、そんな奴が組織の太いパイプにガッチリ組み込まれた上司で、しかもとてつもなく優秀だったら、部下はどうなってしまうのだろうか?
この「翔んでる警視(のちには警視正)」シリーズは、岩崎警視の活躍を描けば描くほど、光に対する影のように、部下たちの緊張や嘆き・または憤りも比例して描かれることになります。
ただ、彼の仕事は警察官で、しかも本庁捜査一課の刑事です。
相手にするのは顧客ではありません。
プロファイリングはするでしょうが、マーケティングなどはしない。
治安を守るために従事する仕事は、おそらく一般企業などとは比べ物にならないはずでしょう。
部下たちも、肝の据わった猛者たちですし、基本的にタテ型体育会系だと思いますから、一般人とは異なる感覚で、覚悟も一味違うのではないかと思います。
それに、岩崎警視は警視庁で働いていますが、その優秀さゆえ、警察庁やインターポールなどから名指しで依頼され、国家機密を直接扱うレベルの事件にいくつも従事しています。
そこまで事情を知る人間が、ヘタに調和のとれた性格だったら、特殊命令を遂行させた上層部が、逆に不安を感じるかもしれない。
他人の感情など知ったことではなく、必要ならば冷酷に切り捨てられるほど『独自路線を突っ走れるヤツ』であるほうが、むしろ都合が良いのではないでしょうか?
といって、人間性を失ったヤツではこれまた重要な任務を任せられないのも事実ですが、岩崎警視の場合、特殊任務を命じられた際、部下たちを案じて返事を渋ることや、それだけの手厚い遇され方を要求するといったことは、割合しっかりやっている(それを部下に伝えないのだが)。
『新・翔んでる警視』のⅢ巻あたりから、岩崎警視の女性観が如実に読み取れる描写が多くなり、20代後半の男性として、真剣に女性を、そして家庭を考えていることが明らかになってきます。
人間として一皮むけてくる様子が書かれているわけですが、なにせ強烈な主人公ですので、岩崎警視の成長ぶりが、そのまま物語の成長に感じられる点も、このシリーズを読むうえでの楽しみ方のひとつです。