【感情会計】善意と悪意のバランスシート

善と悪の差し引き感情=幸福度

至言に魅力あり!! 土井英司さん③

この記事のタイトルでいう至言の主・土井英司さんは、元々はAmazonのカリスマバイヤーとして名高かった方です。

eliesbook.co.jp

それこそ”強み”を活かしたビジネス書評で有名な方で、Amazonへは編集者として入社し、バイヤーになったのは編集者としての活躍が十分に認められてからということです。

 

次に、バイヤーとしての実力が認められるようになると、出版社からの出版相談を受けるようになりますが、やがて著者自身とか個人からの相談も増えたといいます。

 

どれも同じ「売るための相談」ですが、「書物(印刷物)」を売るのと「書物によって世間に訴えたい価値」を売るのとでは、全く意味が違う

 

土井さんのところを訪れる相談者の種類によっては、単なる「出版相談」が「人生相談」になることも多かったはずです。

 

何の分野でも“カリスマ”なんていう称号が冠されるほどの人は、すでに「1つの分野だけに限定された強み」などという制約は無くなっていると思います。

 

カリスマのことを、ファンは色々知りたい。

普段何をしているのか? 何が好きなのか? 苦手なことって何なのか?

とにかくいろんなことを知って自分と重ねたい。

どうすれば同じようになれるのかを教えて欲しい…

 

「質問したい」といわれた場合、求められているのはノウハウであることが多い。

だが、カリスマと呼ばれるような人のところには「相談したい」と言ってくる人がたくさんいるでしょう。

 

「質問」と「相談」は、どちらも対人交流の中でしょっちゅう行われますが、「質問」に対等な関係性のイメージを抱くのとは少し違い、「相談」には上下の関係性を前提としたところがあると思います。

 


人生ドラマの自己分析 交流分析の実際

カウンセリングの世界に「交流分析」という分野の理論があります。

「PAC理論」とか「エゴグラム」といえばピンと来る人も多いでしょう。

 

「質問したい」は大ざっぱにいえば「A⇒A」の交流であり、そこで感じられるのは、あくまでも「受け渡される情報の価値」だと思います。

「詳しい人に聞いた」とか「相談料を払って情報を買った」など、有識者に”取引”を持ち掛けた感じの、冷静な関係といった印象です。

 

このときの有識者は“強み”で勝負して価値を受け取ったことになりますが、この形式だと強い競合が出てくるとシェアを奪われることがあります。

 

お役立ちブログのブロガーが、より専門的知識を展開するライバルが出てくるとアクセス数が保てなくなるのと似ているでしょうか?

 

しかし「相談したい」は典型的な「C⇒P」の関係が展開される可能性が高い。

いい大人があっさりと「C(チャイルド)」になり、「P(ペアレント)」に庇護を求めるほど、P側は圧倒的な存在感を持っている

カリスマがその好例でしょう。

 

カリスマには、ついつい専門分野以外のことも相談してみたくなる

 

カリスマ美容師と話していたら、実はその人がヨガもやっていて、しかもアロマ好きだと知ったら、髪や頭皮のケアなどはもちろんですが、それ以外に、姿勢のことや体幹トレーニングのこと、それにアロマについても聞きたくなるでしょう。

 

もし

「実はアロマ資格の勉強してて、30人へのトリートメントが課題なんですけど、時間が合わなくってはかどらないんです。だから今も、あと15人見つけなきゃなんですよ」

なんてカットの最中にポロッと言われたら、

「是非ぜひ! 私にやってください! 時間なんていくらでも合わせますぅ!」という展開になると思います。

 

もっと詳しい専門家が他に山ほどいるにもかかわらず、ヨガもアロマもそのカリスマ美容師から話を聞きたいと思わせてしまうなら、もはやそれは“強み”で惹きつけているわけではなく、その美容師の持つ人間性(らしさ)がそうさせているとしか思えません。

 

髪を扱うプロとしての手際もさることながら、その過程で接した人を魅了する“らしさ”に惹かれたファンができる。

 

そうすると、カット以外のことに分野を広げた活動をする場合には、まず自分のファンにとっておきのコンテンツを提供することを考えればよい。

別のターゲット向けたマーケティングを一から考える必要がなくなります。

 

本来は高い専門性がないと世間に打って出られない無名のプロと違い「得意なこと」「好きなこと」を銘打っただけで、それを求めてファンが殺到し、拡散してくれるようになる。

 

専門性だけだと縦の展開しかできないが、“らしさ”に惹かれるファンがつくと、横への展開がしやすい。

 

土井さん曰く、“らしさ”でファンを獲得した人は、出版界でいえば「底が固い」といいます。

 

底が固ければお金をかけた展開がしやすく、端的に言えば初版部数を上げられる。

書店では「棚差し(背表紙だけが他の本と並んでいる状態)」ではなく「平積み」ができてお客さんの目に触れやすい(作品数が多くて店内にコーナーが作られてる作家もいますよね)。

それから、発売前のプロモーションもしっかりできる。

 

すると当然ですが売り上げも伸びるので好循環になる。

出版社の力を上手く使えるようになる…というか、出版社と互いの力を融通し合って良い関係が作れるようです。

 

「強み」は足し算で、「らしさ」は掛け算といった感じでしょうか?