元Amazonのカリスマバイヤーで、現在エリエス・ブック・コンサルタント代表の土井英司さんが語る「ブランドとは“強み”と“らしさ”を掛けたもの」という言葉を元に、同じタイトルで書き続けてきました。
まとめるとこんな感じです。
“強み”だけで勝負するとネタ切れを起こし、元々の“強み”に加えて“らしさ”が受け入れられた人は、ブランド効果で好循環を起こす。
ベストセラー作家への近道は、このブランドを手に入れることである。
SNSが発達した現代においては、バズりが継続するためには、このブランドが強力な武器になる。
前回は、そこに交流分析のPACの要素を加えて分析しました。
強みだけの勝負だと、大衆の自我「A(アダルト)」へ働きかけることになり、関係が生まれたとしても冷静な「取引」になる。
「取引」では、目的を果たした大衆はそこで離れてしまい、感情的結びつきが得られる保証はなく、継続関係につながりづらい。
しかし、らしさを確立したカリスマ的な人にはファンができ、己の「P(ペアレント)」の部分にファンの「C(チャイルド)」の部分を惹きつけるので、単なる提供物の取引ではなく、感情的な価値の授受となる。
カリスマは自分の強みだけに限定することなく「好きなこと」「ちょっと詳しいこと」をコンテンツ化して提供するだけで、ファンはそれを好意的に拡散してくれて、継続的な拡大につながりやすい。
「なるほど」と思いますが、ここで1つ疑問が生じます。
この記事の第1回で紹介した「そわんわん」というYouTuberは、学生時代に前髪の切り方を失敗したことを友達に知らせるため、Twitterに上げた動画が拡散されたところからSNS界で有名になりました。
その後なりすましが出たことで驚き、本人として名乗りを上げて現在の立場があるという経歴のようです。
う~ん……
「どこに“強み”と呼べるほどの専門性があるのか?」
圧倒的な“らしさ”は持っているものの、土井理論でいう「強み × らしさ」の掛け算が成り立たない気がします。
では彼女もいずれ、“らしさ”が飽きられて消えてしまうのか?
たしかに彼女は視聴者離れを意識して、更新頻度に気を配るなど、努力を怠った場合の反動をすでに経験済みであるかのような発言をしていて、ただのYouTuberとしての危うさは身に染みていると思われます。
FineGraphicsさんによる写真ACからの写真
しかし、面白いことに、「彼女に相談したい」という人が多くいることを、番組の中で話していました。
先ほど私は記事のまとめの中で「カリスマは専門性を発揮する中で『C⇒P』の形によりファンを作り、ファンはカリスマに専門外のことも相談したがる」として、まずは「カリスマ○○」の称号が必要であるかのように述べましたが、どうやらそれだけではないらしい。
ファンは「あの人に相談したい」と思って感情的な結びつきを求め、そこから継続的な関係が生まれる。
「相談したい」は、交流分析的に区分けすると、どう考えても「C(チャイルド)」に相当すると思います。
だからといって、相談される対象が必ずしも「P(ペアレント)」である必要があるか? ということです。
(ファン側が「P」で「C」を応援するのがタニマチ的な展開ですが、この記事ではリーダー的な存在のことを書いているのでこの関係は除外します)
Cが「相談したい相手」は、必ずしも「先生(親的存在)」であるとは限りません。
「同朋(仲間)」でなければならない場面も多いと思います。
くだけてなれ合うような雰囲気で相談したい場合は、相手が「先生」であってはカタルシスが得られない。
「そわんわん」さんのキャッチフレーズは“お友達系YouTuber”です。
「お友達系」であって「カリスマ友人」ではないところが面白い。
そのポジショニング自体が既に“強み”なのかもしれません。
ということは「C⇒C」の関係において『相談』が成立する。
自分も「C」のまま「C」を惹きつけるマーケティングが、SNS全盛の時代だと大規模に出来てしまうのですね。
ただ、丁寧にやらないと叩かれやすい諸刃の剣ですから、プロデュースをしっかりしないといけないでしょうが。
いずれにせよ圧倒的な存在感を手に入れた彼女が、「C⇒C」の感情的な結びつきを上手く展開し、その時々の同世代の気持ちにリーチする相談相手で居続ける限り、彼女は「底が固い」のではないかと個人的には考えていますがどうでしょうかね?