我が家のマスクは残り20枚を切りました。
元々気管支が弱い私は、冬の寒気が辛いので、毎年冬の時期から使い、花粉症の症状が治まる春ごろまで外出時はマスクをする日常です。
これは別の記事で書きますが、今年は花粉症の症状が無いため、私に関していえば1日に1時間強程度の時間しか使わなくて済むため、我が家のマスク消費は全く緩やかな年となりました。
今回、売り切れが発生する数日前に無くなりかけ、ちょうど補充で1箱買ったばかりだったので本当に助かりました。
しかし、そろそろ買いたいとは思う。
そこで、試しに楽天のサイトを見ると、いまだにとんでもない値段が付けられている。
「仕方ないので高いけど買った」という話はちょこちょこ聞き、「気の毒に」と思っていましたが、このネット価格を見ていてふと考えてしまったことがあるので少し書かせてもらいます。(あくまでも私見ですので、参考程度に捉えて頂きたいと思います)
「●●億枚増産するから、ここ××週間のうちにマスク不足は解消する」は、どこに焦点を合わせてのコメントか
ネットで拾った「朝日新聞デジタル」の3月27日記事で確認すると、日本国内のマスクの供給量は月間4億枚で、それが3月現在では6億枚に増えているとの記述があります。
また、これは一般閲覧者無視の見づらいチャートですので数字を換算して読む気にはなりませんが、やはり国内供給に関する「種類別」の資料として捉えると、一口にマスクと言っても産業用・医療用・家庭用の3区分に分かれ、我々が利用する家庭用は、全供給量のうち7割5分~8割弱程度を占めることが読み取れます。
コロナ騒動が起きるまでは、4億の7割5分の3億枚が供給され、平均的な消費の流れが形成されていました。
過剰在庫で値崩れを起こすこともなく、どこへいっても置いてない、みたいなこともなかったのは、需給のバランスが大きく崩れていなかったからこそです。
私のように、ふだんマスクを使う生活をしている方は、実感としてわかりすぎるほどわかっていらっしゃると思いますが、マスクは別に月に1枚だけ買うわけではないでしょう。
1枚ずつ買って使うとすれば、3億枚なら1千万人が30日使えるわけで、さらに2億枚増えるならその7割5分の1億5千枚として、プラス5百万人が毎日使える。
企業の在庫や個人の備蓄を考えれば、ギリギリかもしれないが何とかいける、と、私も考えたくなります。
しかし、購入する瞬間というのは、未来に使う分まで一気に購入するので、瞬間的に「一人当たり消費量」が爆発的に増える。
私がやったような、人口をベースにした稚拙な計算で「大丈夫」と考えていると、購入する現場での、実際の行動まで進んだ時点で破たんします。(基本、私は抜けているので大抵破たんする計算をします)
使うという意味の「消費」と、買った時点で計上される「消費」がわかりづらい
我が家では、無くなりそうになった時点でスーパーなどへ行き、箱で買います。
40枚入りとか50枚入りとかです。
1世帯が1カ月に2箱買うとしたら、50枚入りだと100枚の消費になります。
2人で1枚ずつ30日使うから、無くなりかけた時は100枚を買うとした場合、買ったときには「まだ使わない98枚」が、経済上は“消費”されている。(要は売り場から消える)
緊急事態においては、これが「買おうとする人数分」だけ発生し、これに耐える供給量でなければあっという間に不安によるパニックを引き起こしかねない。
するとますます品薄が進む状態になるということなので、供給量を2億枚増やした場合、単純に、2億人にマスクが行き渡るワケが無いことは、計算すればわかります。
しかし、「2億枚増えて6億枚になるから、もうすぐ不足は解消する」とコメントする計算(机上の)が立つのも、理解できない話ではない。
バラ売りしているなら、増産数と供給量がリンクする計算式も、理想論では成り立ちますが、製品がどのような形で成り立っているか(何枚入りでワンセットになっているか)までを想像できていないと、上の人間は理論値でモノをいい、下が大混乱するということは充分に考えられます。
その間隙をついて買い占めが発生したから、それをやった連中はまんまとうまい汁を吸えたのでしょう。
「想像力試験の好成績者求む」という企業が、そのうち出てきてほしい
公務員時代にも理論値でソロバンを弾くのは普通に行われていたし、民間に転身してからも、結局同じ人間、そんなに大きく違うものではなく、まったく同じようにソロバンを弾く人間はごく当たり前にいました。
政治家の公的発言には、官僚の作文したものが多くあることを、私は官僚側として知っていますが、その官僚も現場へ足を運んで作文しているわけではないので(少なくとも文章を作る人間は)、理論値がまことしやかに語られることも多い。
そして、役人歴を持つ私に当てつけて、何かと役人をバカにする上司に接したときなど随分腹が立ちましたが、民間でも特に管理部門系の人は、自分の足と体当たりで情報を取る習慣を持つ人が少ないので、結局役人に似ているというのが私の実感です。
たとえば以下のような程度のことは、会議室で語られることもあるでしょうが、理論値と実態の区別をどこまでつけられているかは、結構心配になってしまう事柄です。
不安の元となる供給不足だが、その内訳は分類できるか?
(産業用、医療用、家庭用)
分類したそれぞれの規模はどの程度なのか?
(3種の割合)
ここまではデジタルな話で終始するのでまず問題ないでしょう。
しかし、この先のところはただの計算では適切な結論が出ず、想像力の出番になります。
流通上の単位により、1人又は1世帯もしくは1事業所が、一時に取得する場合、消費量は瞬間的に掛け算で現出されるため、一挙に無くなった印象をもたらし、不安からパニックを生じる可能性が高い。
このため、今後の予測見解をコメントする場合には、数値には相応の配慮を要する。
このようなことは、今回のマスクに限ったことではなく、コロナとは全く関係ないビジネス界においても、人員や什器・素材の調達やその教育や整備など、当然必要なはずのこういった点に配慮が無い場合が多い。
計画の話に付き合わされるなりイラついて現実面からの指摘をすると、慌てて善後策が協議され始めることが、何度もありました。
平常時の計画値や理論値は、緊急時には安易に適用しないという保守策も、あったほうが安全かなあ、と
マスクの話に戻りますが、以前は国内供給の約7割が中国依存だったらしく、現在は逆転しているといいますが、これからもまだ必要とされる外国の生産品に対し、どの時点で「国内供給量」に組み込んでいるのかが疑問です。
外国の工場に確認し、生産計画のめどが立った時点で「よし大丈夫」と言っているのか、それとも国内のしかるべき倉庫に搬入され、流通会社の貨物便を待つだけの状況になった場所を見て「不足は解消する」と言っているのかによって、事実は大きく変わる。
国内の色々なところが遅延またはストップしているので、国外だって同じ状況である可能性は高く、生産計画は立ってもそのとおりに稼働しているかどうか? 完成した後遅滞なく発送され日本に到着するかどうか? については、現場で検品に立ち会うレベルまで確認したうえで発表しないと、菅さんが嘘つきの看板みたいな結果になることもあり得ます。
現に、我々が政府の発表にマユツバになっている原因のひとつに、マスク不足解消がちっとも実現しないという現状があるのはたしかでしょう。
私が常駐して働いている企業さんだって、頭の良い方はたくさんいて、みなそれぞれビジネス現場で、プロとして必死に働いています。
かつていた官庁だって、優秀な人はたくさんいた。
そのプロたちの集う業務現場においても、理想論と理論値が早々に握手して結論付けられ、実態と実績が無軌道なほど浮いてしまう現実があるようですから、政治にだけそれが無いとは言い切れません。
今の我々に出来ることはそう多くはないかもしれませんが、それぞれがプロとして活動するフィールドで「その先の想像力」を働かせて末端を思いやることが、いずれ大きな成果を生む第一歩なのではないかと思っています。