人は、多くのことを最初の印象で判断される
採用面接は「会社に入れてもらえるか」の関門
現場での新人アピールは「気分よく働き続けられるか」の関門
「新人だから仕方ない」は本当に額面どおりに受け取ってよい言葉か?
大勢の人が一斉に採用され、同じ業務につく派遣やアルバイトの現場で、「初めてで知らないことだから」と、あまりオタオタしているとそのイメージが定着し、その他大勢の中でも特に「できない人」というレッテルを貼られがちです。
いったんそんなレッテルを貼られると、そこからの挽回は難しくなる。
管理者などのキーパーソンが、大勢いるメンバー全員に目を向けなければならない場合、それ自体が結構な労力になりますから、無意識に非効率を避けがちです。
そのため、毎回新たにひとり一人を見直すようなことはせず「最初の印象の続き」で情報を積み上げていくことが多いでしょう。
仮に、新人が1人とか2~3人など少数の職場でも、既にスタートした人間関係の中では、相手のことを完全に忘れてでもいないかぎり、情報は「新規登録」ではなく「継続更新」されるはずです。
逆に「できる管理者」かどうかが露呈される「先入観の排除力」
ある新人に抱いている印象が変わるような出来事があったとします(意外な知性を感じる仕事ぶりや、ちょっとしたやり取りのきめ細かさに「オヤ」と思った、等)。
すると、それまでの関係性で書かれたシナリオとのつながりに矛盾が生じる。
そのとき、即座にその新人の過去のシーンを書き換えて、新たな価値を認められる優秀な人もいますが、それが出来ない人も多い。
一度なにかの印象を持つと、その後は何を見聞きしても「自分の先入観の確認」になってしまい、それを否定するような情報は受け付けない人は結構いるものです。
(何かと「効率、効率」という人間に多いのではないでしょうか?
⇒ エッ、それはお前だろって? ・・・ハイ。ごめんなさい)
「なんか頼りになりそうな人」ぐらいの第一印象が無難
この記事では、私が比較的最近に経験した「お客様との接触が無い現場」に絞って書いてみます。『社内の人間関係』が際立つからです。
携帯ショップや家電店で、サービス申し込みをした経験を持つ人は多いと思います。
あのとき書いた契約書など一連の申込書類は、別の場所でシステム登録し、開通までの各種処理が進められていきます。
その実務を行うのがいわゆるバックヤード業務というやつで、一部例外を除いて基本的にお客様とは接しない作業につく人が多い。
すると必然的に「人間関係」といえば社内のものに限定されていきます。
いつも同じメンバー同士で接するので、”お客様”という存在は抽象的な概念に近く、社内のしきたりこそがリアルな存在です。
本来はお客様あっての事業にもかかわらず、「職場」とか「仕事」と言えば、その言葉が示すのは常に最も現実感のある社内のしきたりや人間関係になるのも当然です。
「お客様に○○○○をモットーに」とか、いくらきれいごとを並べたとしても、書類やシステムなど間接的にしか接することのない現場では、スローガンが100%機能することはない。
あくまでも、目の前の現実である”職場の掟”の中でうまく渡っていくことが重要課題になります。
もしも入社当初に「できない人」のレッテルを貼られてしまったら、早々に剥がしたいのはもちろんですし、できれば最初からそんなレッテルは貼られないほうがよい。
それなら、どんなレッテルなら貼られても良いのか?
「できない人」のレッテルはできれば避けたいところですが、逆に「できる人」のレッテルを貼られるのも、それはそれでリスキーです。
「あの人できるよね」と思われると、期待値に応じたパフォーマンスを求められるので、それが実力の範囲内でこなせる人ならともかく、初めての職場でそこまでやりきれる保証はない。
結局のところ、レッテルを貼られてしまうならば、せいぜい
「なんか頼りになりそうな人」
という程度が一番よい気がします。
同列にいる周囲の仲間からは「ひとりで淡々とこなせている」と思われるくらいで充分。
管理者からは「任せて安心な雰囲気」程度で無難に立ち回りつつ、とにかく経験を積んでしまう。
そうしているうちに「慣れ」を獲得する。
そうなると「名実共に備え持つ、頼れる存在」と言える程度になれるでしょう。
その頃には他の人も「実」は身に付けているでしょうが「無名」の人が大半なので、そこで差がついてしまう。
すると、新陳代謝の早い組織ならポジションが引き上げられることはあります。
上位ポジションの席数が決まっているなら、文字通り早い者勝ちで、早くから「名」を得ていたあなたが有利になります。
「良い印象作りの失敗」は、「業務上の失敗」以上の人間関係ダメージになりうる
「派遣やバイトだから、昇進なんて意味がない」
そう割り切ってしまうのもありですが、そこそこやっていけそうな職場なら、ポジションアップで得られるインセンティブを、確実に手に入れていくのも悪い事ではありません。
大勢が一斉に採用される現場で出世したいなら、「その他大勢」の中から抜きん出なくてはなりません。
「ポジションを引き上げられたい」「発言力を持ちたい」といった場合に最も効果的なのは、私の経験では「仕事の速さのアピール」でした。(むろん正確性も必須)
「スピードよりリーダーシップ」とばかりに、やたらと周囲の話に首を突っ込んで仕切ろうとする人にもずいぶん出会いました。
しかし、その人たちのその後は、「嫌われて終わる結末」であることが多かった。
かろうじて嫌われることは免れた場合でも、望みが叶わず不満そうに働いているので、どうしても良い印象は持たれづらい。
どうしてリーダーシップを発揮しようとする人が、大勢いるスタッフの中で鼻つまみ者になり易いのか?
「大勢が一斉にヨーイドン」の職場で、私も管理者になったことがあります。
そうなってみて改めて現場を見たときの実感ですが、そういった「仕切屋さん」は、口数が多いわりに(というか、だからこそ)件数をこなしておらず、周囲を巻き込んで時間を浪費するので、進行上ありがたい存在ではないのです。
作業処理のスピードが伴わない「仕切屋さん」も、業務立ち上げ早々の頃には、管理体制が弱い中でスタッフをまとめてくれたりして、一瞬頼もしく見えるのですが、実務が軌道に乗って組織的に機能するようになると、状況が変わってきます。
業務課題が「指導の統一化」に変わると、一般スタッフが困った時の相談は管理者に集中させるように環境が切り替わるので、「無資格のアドバイザー」が、勝手な思い込みで他のスタッフに指導されると迷惑なことが多いのです。
採用面接ならいざ知らず、実際に働く現場で初期の頃に持たれる印象というのは、つまるところ相手にとっての都合の良さが尺度になっていることが多い。
激しく動くのが特徴の現場では都合の良さも常にその姿を変えるので、最初の印象の良さに胡坐をかいたらあっという間にそれを失うこともあります。
大勢が一斉に採用になるような職場では、教育や評価、又は注意や指導に充分な手間ひまをかける余裕が無いことが多いので、仮に仕事は単純でも管理者側から見た現場は、作業中のメンバーが感じる以上に激しいものに映っていることがあります。
そんな中では、ヘタに「できるヤツアピール」をするよりも、わかり易く数字でアピールするのが一番だし(早くても間違いだらけの雑な仕事はもちろんNGですが)、個人的印象を高めたいなら実力の範囲内で余裕をもって『そこそこに』実践するのがよいと思っています。
「ギスギスした現場の雰囲気を、明るい和やかなものにしたい」という志を持つ人は、『踊る大捜査線』のセリフ ”正しいことをしたければ、偉くなれ” のとおり、自分の発言を無視できないレベルまで、己の存在感を高めてしまうのが確実であり、早道だと考えています。