財務省(当時は「大蔵省」)は夜行性だ。
環境省(当時は「環境庁」)でその窓口になる官房会計課の中でも、特に予算係はそれが主務なので、昼夜が逆転する。
ピークは夜中で、昼間に見る予算係周辺の空気は、どこか気だるい感じがする。
会計課の他の係は当然普通に朝から出勤し、日中がピークになり、夜は帰る。
局の会計担当は、その両方と付き合うことになる。
体内時計を決めるのは、TPOということにならざるを得ない。
昼は武器、夜は技で戦う「風来のシレン」はブラック的過重労働者だ
終電ギリギリの時刻に部屋を出ようとしていたところを、内線電話でI氏に呼び出された私は、帰宅を諦めた。
(↓↓↓ その時の様子はこちらに書きました)
既に廊下に足を踏み出している私に代わって電話を受け、無情にも「文鳥さんですか? まだいます」と答えて受話器をパスしてきたMくんのニヤニヤ笑いを尻目に、日付が変わる頃に会計課へ向かう。
ちなみに、午前零時のことを「お昼」または「昼」と言ったりする。
深夜残業続きの職場ならではの軽口だ。
消費税の試算システムぐらい、お宅で作れないの? 財務さん
なんで各省の下っ端公務員に徹夜でさせるの?
I氏は私の局の担当者だ。他にも担当局を抱えているのでかなりのハードワーカーだ。
I氏は紙束を差し出す。
財務省の作業通達だ。普通は単に「通達」と呼ばれる。
内容は、たまに簡単なものもあるが、概ねそこそこ時間がかかる細かな作業が課される。
時々とんでもない難物があり、24時間フル稼働しても片が付かないものが混ざっている。
消費税が3%から5%に上がるときの資料作りなどは最たるものだった。
それ以降の資料はすべて別途換算数値が必要になったりするので、とにかく足枷だった。
公務員だって、消費税なんて大嫌いだ!
たぶん、財務省で下積み作業している職員たちだってそうだ。
一度世間話したときに聞いたが、彼らは「椅子で寝る」という。
せめてソファで寝たいが、そこは上の人が使うから自分たちには許されないという。
一晩イスで寝るのはツライ。体が痛んで翌日に響く。
しかし当然ながら、彼らはそれが連日続く。
そう考えると、まだ自分のほうがマシかなとも思う。
財務省にも私らのような下っ端がいて、足元を支えるべく踏ん張っている。
消費税が大好きなのは、下っ端に作業をさせた結果の数値を見て
「ここをね、こうするとね、ここが膨らんで歳入が上がりそうだよ」
とか
「この括りのとこ、こっちへ動かしてみようか? ちょっと試そう」
とかやってる上級公務員と閣僚だけなのではないか?
「ちょっと試そう」で受話器を持ち上げて
「ちょっと来て」と中間管理職を呼び出して
「あのデータをさ、こっちの係数で作り直させてくれ。大至急」
とかやってるとしたら、その数階層下の実態こそ、私が深夜に呼び出されたこの光景なのじゃないかと思ってしまう。
(↓↓↓ 深夜に呼び出された光景はこちらに書いてます)
財務省のパリピ上級官僚がノーパンしゃぶしゃぶの接待を受けている深夜の頃、イスで寝る下っ端の財務省職員たちと、同じく下っ端の木っ端公務員である私たちは、国会質疑で蓮舫氏が口走っちゃった『高卒になっちゃってる』現実を思い知るのであった(大卒ノンキャリも一緒だけど)・・
(後編へ続く)