私のPCの古いフォルダに、2013年に保存したテキストファイルが入っていました。
「education's」とタイトルを振ってあり、人材の育成と成長に関する雑多な書き込みがあります。
その中に、ネットで見つけたブログからの転記がありました。
内容が素晴らしいと思ったので文章を貼り付けたのですが、ソースを残していなかったことが悔やまれます。本当ならここにURLを貼りたいです。
現場で起きがちな「最新ファイルはどれ?」に関するわかり易い記事
私・四緑文鳥が書いたものではない、ということを強調したうえで、このあと長い引用文を載せます。
もしこれを読んで「自分が書いたものだ」という方がいたら、この引用はその方のURLに貼りかえるつもりですので是非教えて頂きたいと思います。
多くの方の職場も似た環境にあり、これに類似した揉め事を実見した方も多いでしょう。
そういったことを、第三者目線で冷静に語ってくれています。
一見単純なミスに見えるが、実はもっと深い問題
引用文にはタイトルが無かったので、今回の記事のタイトルは私が付けました。
マニュアル作成だけではカバーし得ない、コミュニケーション不全の話です。
コミュニケーションの『ミス』なら、その発見や検証、改善のプロセスは比較的組み易い。
コミュニケーションの『不全』だと、単なる業務スキルで片が付かないことが多い。
『コミュニケーションミス』なら、そのことで業務がストップしても、あるいはストップせず完了後に気づいても、各自が担当したプロセスを開示しやすい。
それに比べ『コミュニケーション不全』は、事が完遂・未遂の如何を問わず、なんだか釈然としない。
パスが通っても心が通じていないと、いつかパス自体にミスが起きた時、関係が崩壊する。
『ミス』と『不全』は分けて考えるべき
作業マニュアルだけ作ってあれば良いというものではありません。
このあとに紹介する例のように、部下側が上司よりも高いITスキルを持っている場合などは、力関係が入り組んでいるだけに、よけいに決着がつきづらくなったりします。
私は別サイトで『業務スキルの高い困った人』のことを書いていますが、問題があるのは必ずしも当人だけとは言いきれません。
コミュニケーションの『ミス』と『不全』の見分けがつかずに、マニュアルさえあれば問題は起きない(解決できる)と思いこんでいる管理者もまた問題です。
ましてや、原因がコミュニケーション不全なのにもかかわらず、特定メンバーを悪者に仕立てて事態の収拾を図るようだと、100%禍根を残すと言えるでしょう。
コミュニケーションミスは、思い違いや記述ミスなどによって起きる伝達スキルの問題。
でもコミュニケーション不全は「場の病理」という、全く別の問題。
仮にそのメンバーを追い出すことに成功しても、「場の病理」が残っているかぎり、シーンやキャストを変えて同じことが繰り返される。
(おことわり)引用文です
LANの共有フォルダには、業務名のフォルダと、個人名のフォルダが置いてある。
業務フォルダに置かれたファイル以外に、個人名フォルダ内のファイルを使って処理しているらしい。
深い階層に置かれているので、当初はファイルへのショートカットを作り、彼の作業用内容を確認していたが、修正を加えたときに名前に(2)などのバージョンを入れたり、日時を入れたりするようになった。
古い情報を参照したりして間違いが起きたので、彼と話をした。
彼によれば、その作業用ファイルは、他の業務との共通情報が含まれているとのことだった。
前任者は同じ情報を複数のファイルに入れ、一つ一つ更新していたので手間がかかるし、ミスも散見された。
合理化を図るため、更新は1回、ファイルも一個で済むよう、あえて個人フォルダに残しているとのことだった。
そこで、フォルダへのショートカットを貼るようになった。
旧習にとらわれず、より良いやり方を自発的に行うようになってきた。
思えば自分も若いころ、そんなことを心掛けてきたなと感慨にひたり、新人の成長を頼もしく思った…。
良いことばかりが続くわけではない。
彼の作った資料が間違っていた。
役員会で誤った報告がなされた。
会議の席上で常務が発見してくれたから、意思決定は正しい情報をもとに伝達された。
しかし、最新情報を調査確認するまでに時間を要し、初動が遅れることになった。
上司は叱られながら、彼を責めた。
席に戻り、注意をした。
プライドの高い彼は、業務習得が早かったことや、作業手順の改善が一任された状態だったことで、着任からまだ日が浅いながら、すでに一人前以上の自信を持っていた。
そんな事情もあり、頭に血が上った状態の上司からの指摘に、すぐに非を認めるといった態度を取らなかった。
結局原因は、彼のミスというわけではなく、両者の伝達ミスだった。
一旦フィックスした情報に動きが発生し、緊急だったため、上司は彼の作業ファイルを開けて修正し、作業名+最新日時の名称で保存した。
それを伝え忘れていたため、ファイルを開けた彼は、自分の手元資料と異なる数字を見つけ、元の数字に修正し直したことを、これまた上司に伝えなかった。
ファイル名がログになっているため、役員会中にテンパりながら見ていた上司とは違い、彼はすぐに事情を察した。
抑えていたことだったが、上司への感情が悪い文章で言語化され、表出してきた。
パソコンに慣れ、作業の早い彼は、その点で上司より優れていた。また、担当で決まっている資料を中心に知識が集中している点でも、とっさに出てくる記憶では、上司を上回ることが多々あった。
内心、能力では下に見ていたのだ。
自分より劣る上司が、なぜおれのファイルを勝手に修正し、黙っていたのだ。
その後再修正し、それを上司に黙っていた点については、後ろめたさもある。
その傷の痛みもまた、忌々しかった。
彼は上司の席へ行き、データが書き換えられていたことに触れ、自分だけのミスではないと主張した。
最後のデータを勝手に書き換えたのはおまえだろう、と上司は憤るが、いつ変わるかわからないファイルをこれが最後だとはこちらもわからない、そこはちゃんとチェックしてくださいと食い下がり、険悪な空気を残して諍いは一旦幕を閉じた。
お互いに疑心暗鬼に陥った二人の間には、ギスギスした関係が生まれ始めた。
彼が自分のフォルダ内に置いていた作業ファイルは、形骸化し始めている。
本体は彼のデスクトップ上で作業し、共有ネットワーク上には置かない。
ひと段落ついた時点で書き換える形に変えてしまった。
デスクトップに置かれたファイルは、チェック用に検算や参照機能が次々と付け加えられ、本人以外が使うためには、計算式を解読しなければならず、新しい変更が加わるたびに仕様も変わっているようだ。
注意しても態度は変わらない。何より、彼が自分の作業を囲い込んでいるのが困りものだ。
さらに、他の業務に関する資料まで同じことをし始め、他の課との連携も、彼が握りこんでしまうようになった。
そのうちに、上司が異動でそこを離れ、後任と入れ替わることになった。
周囲は期待と不安を込めて、新しい二人の関係を見守っている。