論理療法(ラショナルセラピー)
「ラショナル」とは「合理的な」という意味です。
論理療法では、悩んでいる相談者が抱いている不合理なビリーフ(信念や思い込み)にアプローチします。
不合理な共感より、合理的な問い質し
論理療法では、自分に不利なビリーフでムダに悩んでいる状態は、その人の人生にとって合理的な姿ではないとして、積極的に改めていく姿勢を取ります。
このため、「相談者の思いを何でも受け入れる」とした在り方のカウンセリングとは随分趣が違います。
「○○を見て(されて)、あなたは××と考えてしまったのですね」
このように、相談者を一切責めたりせず、また、「じゃあこうしたら?」などの提案もせず、ただただ『あなたに起きたこと』を受容するスタイルが、アクティブリスニング(ノンディレクティブリスニング)の特徴です。
その一方、
「○○を見たとき(されたとき)のあなたのその考えは、事実なのか? 推論なのか?」
と、いきなり質問してしまう論理療法は、かなり挑戦的です。
共感的理解のアクティブリスニングで行き詰ってしまった場合には、こうした技法の転換が用いられることもあり、「ただ共感してもらうだけでは、しっくり来なくなった」という“自ら考えて対処していこう”との傾向を持つ人にとっては有効な手段のひとつです。
適用対象は『挑戦者』
ツラい思いを聴いてもらって、カタルシスを得ているだけではジリ貧だ。
私の目の前には、解決を必要とする問題がある。
ビジネスの現場で、いつまでも子供がぐずっているような現実逃避をしていても始まらない。
だから、事態の打開のために動こうと思うのだ・・・
このように考えるビジネスパーソンは、すでにその心に“挑戦”を掲げていて、その心境になったときこそ、この『論理療法』はマッチすると思います。
ビジネスでは概ね、合理的であることが優先されますが、対人関係の解決においては、必ずしも合理的なことだけが正解ではありません。
なぜなら、対象はあくまで『人』であり、機械の部品や数学の公式のように、強引に合理主義をあてがえばよいというものではないからです。
前回記事で「部下や後輩を叱れないことで自分を責め、追い込んでしまうまでのプロセス」を例示しましたが、心が落ち込んで下降し続けている最中の人には、安易に合理的な尺度で接しては逆効果になる危険性があります。