先週、ラジオ番組の中で京都大学の専門家の説を聞いたのですが、番組MCによる要約の中に「感染する行為の回避に集中することが重要」という言葉がありました。
どうやら「感染のメカニズムさえ理解すれば逃れることが可能」とのことです。
なんというか・・「学者さんの見解」といった印象。
「実行者がどんな人間か?」「人間性や理解度が不均質で、実行場所と時間帯がバラバラ」という点がぼやけてしまっているのが気になります。
普遍性と応変性をつなぐ想像力が、現場を動かすときのキーアイテムになるのですが・・
実行者の質にバラつきがあると、理想どおりに物事は進まない
その番組内では、続けてインタビューに答えていましたが、聞いているうちに不安になってきました。
どうも、何かの話に続けてしゃべっていて、部分的に切り取られている印象だったのですが、最初の一声は「これは本当に単純なことでして・・」であり、誰でも一様にできることだというところからのお話しだった。
しかし、単純だという割には、続けて季節による気候や人体の自然免疫の変化、付着ウイルス量と活発化などの話が続き「もう少しだけ注意が必要。だが皆さんのしていることは過剰」といった内容で、お話を最後まで聞いた人が、皆この先生が提唱するとおりの行動を、それぞれの日常の中で正しく実行できるかというと、それは難しい気がしました。
「どうして出来ないのか?」の答が「その伝え方ではダメ」である場合
論理先行で進めていってしまうと、後に現場の実態を見て「どうして出来ないんだ!」という怒声が飛ぶ状況は、ビジネスの中でもしょっちゅうあるでしょう。
(実際に声に出して言うかどうかは別として)
理屈をしゃべっているときは、すべて理想で語って「なるほどそうですね、スゴイ!」「フフン、そうでしょう?」が成立するが、実戦でちっとも役に立っていない。
その多くは、繰返しの作業部分・・つまり戦術を理論値で語ってしまうからです。
原価計算でいうところの『理論的生産能力』です。
妥協したとしても『実際的生産能力』で達成可能な最大値を元にしゃべるでしょう。
何かを始めるときのぶち上げ感には配慮しますからね。
理屈に没頭して想像力が働かない計画は、現場で惨敗する
理想と全く同じ状況であり(まあ無いけど、机上以外では)、全員が指示を一字一句完璧に覚えていて、その時発案者が言葉で言い尽くせなかったニュアンスも正確に捉えていた場合にのみ成功するピンホール理論は、パワポ資料だけが煌々としている(※Amazonを除く)。
実際には、戦術を実行したときに、最も効果的に勝つ方法・・つまり【戦略】が調っていないと、優れた戦術が活きてきません。
戦術が得意なことが、戦略能力の証明ではない
小銃の弾込めが神業というほど早く「天才リローダー」の異名をとる戦士が活躍するのは、生身の人間同士の撃ち合いの場です。
戦車戦が行われている戦場に「成績表ではお前の戦術が一番だから」というだけの理由で、得意の小銃を渡されて送りこまれたら、跡形も残らずに消え去るでしょう。
ラジオ番組で話しておられたその先生は「GOTOを目の敵にするのではなく、ひとり一人が感染防止対策をだれもが正しく行えば恐れることはない」とのことですので、当然そこで語られるのは「戦術」です。
戦術は繰り返される。場所や時間によって精度は変わるのが前提
前回記事で「人間は感情の生き物。好きなことや他者との感情交流で気持ちが高揚すると、目に見えない存在は意識の中で弱まる。お酒が入るとさらに困難」といったことを書きました。
兵士の戦術に頼るいっぽうで出来上がった戦争運営を、理想どおりの戦術が極めて困難な状況で課すことは無理がある
おまけに、課された結果を出せなかったことを「お前たちの努力が不足していたからだ!」と批評されることは、兵士たちにとっては心外なものです。
「だったら、実戦現場のあの状況で、具体的にどうするのが正解だったのか、あんたがやってみろ!」と言いたくなるでしょう。
そのときに「わかった。私自身がその場へ行って、身をもって実行する」といえる人はまずいないけれど、実際にやってみて「なるほどこれは『戦術が効果を発する場作り』に問題がある」と目覚めれば、戦略領域の充実が図られるでしょう。
勝てる状況を作って「戦術」させるのが優れた戦略
頻繁に会食しつつも感染しない総理などは、細かい戦術レベルの身動きなど、これまでずっとしてこなかったと思います(一口ごとのマスクの付け外しみたいな)。
それでも安全だったのは、高い精度で勝ちが拾える戦局を作ったうえで、戦い(会食)に挑んでいたからでしょう。
そこでさらに戦術を実行すれば、勝利(感染防止)の確度はさらに高まると思われる。
質がバラバラな兵士に「繰り返しの号令」なんかを掛けたら戦場が混乱することぐらい、政府内でこの国の各種戦略を担当なさっている方々は重々お判りかと思うけど。
いっそ設備投資してあげたら?
飲食店が、総理の会食時に近い環境が作れるように支援することを「GOTOイート」にしたら、すべての店が一席ウン十万円レベルの料亭並みになってしまうでしょうが、余計な予約サイトに膨大な予算を流すより、ウィズコロナ用設備投資財源と割り切って使うほうが、戦略面が充実するので効果的かもしれないと思う。
ゴミゴミした雰囲気こそが魅力の飲食店や飲食街もたくさんあるので、全店舗を総理御用達レベルの面積になど到底できないが、どうせ年単位でこの状況は続くはずなので、狭いなりの設備をGOTOで入れてもらい、愛される商売を続けて欲しい。
どうせやるなら、これからの外食産業の建て替えをするつもりで財政出動すれば、安定的な経済活動の保護・促進になると思うのだけれど、そういう方向にはいかないんですかね・・
そして、専門の学者の中には「狭い視野におけるハイレベル」がいることは、冒頭の学者さんが活躍なさっていることからも良く分かるので、ハイレベルな戦術が最高に活きる場を、戦略の担当として調えてください。それができなきゃ辞めるまでです。
そうでなくてはなんのための国会議員なんだか・・