シングルタスクは、つまらない。
ひとつのことをチマチマと・・はかどらないったらありゃしない・・。
速度を上げると言ったって、しょせん一つのことなんだし、急いだって限界がある。
マルチタスクは、おもしろい。
全く違うふたつのことを同時並行!
たとえゆっくりでも、二つの世界の航路を進むことの価値は大きい。
この「つまらないことをしている自分」に対し「おもしろいことをしている自分」に、脳は報酬系ホルモンを出すらしい。
「何か変わったことがないか?」「何か得することがないか?」のチェックで生き残ってきた人類
我々の脳は狩猟時代に作られた損得の感覚が残っているらしく、「チェックする」ことが生存にかかわる大事な要件であるようです。
そして、チェックしたことにより有益な結果を獲得できると、報酬(満足)が得られるという経験を、数限りなく積んできている。
ただし、毎回報酬が得られるわけではなく、ほとんどが空振りで、不定期にしか成果が得られない。
人間がギャンブルにハマるメカニズムは、かなりルーツまで遡れば、いわば普通のことと言えます。
今回の記事は、アンデシュ・ハンセンというスウェーデンの精神科医が記した「スマホ脳」という書籍を、岡田斗司夫さんが解説した動画をもとに書いた私の私見です。
念のため岡田斗司夫さんの紹介
岡田斗司夫さんをご存じの方は、いわゆるオタクに多いそうですが、エヴァンゲリオン制作会社「ガイナックス」の初代社長と言えば、オタクじゃなくても記憶に入りやすいと思います。
それではピンと来ないという方でも「いつまでもデブと思うなよ」というショッキングなタイトルを覚えている人は多いのではないでしょうか。
あの頃は痩せていましたが、今は小太りなオジサンです。
しかし、相変わらずの”岡田節”は健在で、久々にYouTube動画を発見したときはうれしく思いました。
「ながら作業の優越感」と「ギャンブルの喜び」は同じ?
マルチタスク(ながら作業)に憧れを感じたり、マルチタスクが出来ている自分に優越感をおぼえる人は多いと思います。
これは、狩猟時代の人間の脳にプログラムされた、チェックすることによる危険回避や食物発見といった、生き残り強者への指向性によるものと言い換えることができそうです。
ただし、ハンセン博士の主張は違うと、岡田さんは解説しています。
『マルチタスクは効率を下げる』
いや、むしろ効率を上げるためにこそのマルチタスク。
それでなぜ効率が下がる?
その秘密は『報酬にある』らしい。
「優越感」はドーパミンにごまかされた状態。
「劣等感」はドーパミンの影響を受けていない状態
報酬系ホルモンは達成感をもたらす。
つまり、他人から見たらしょぼい成果でも、当の本人はご満悦というギャップが生じていたとしても、それを感じなくさせてしまうことがあり得ます。
シングルタスクで他を圧倒するダントツの成果を出し、日ごろから他人を驚愕させているような人ならば、たとえマルチタスクで効率を下げたとしてもなお、本人の「ごまかされた達成感」と第三者的評価は一致するでしょう。
しかし、そんなレベルの人なんて、そんなにいないはず。
大多数の標準的な人が、ドーパミンで上塗りされた達成感で満足していたら、冷静に効率を感じ取ることは叶わない。
ということは、本人的には「よっしゃオッケー!」の内容が、周囲からすると全然オッケーじゃないことは、あちこちで起きているのではないかと思います。
「タフなメンタル」なのか「勘違い脳」なのか?
どんなに叱られても「めげない人」というのがいます。
同じことで何度も注意されているにも拘らず、なぜかさほど意に介さないタフなメンタルの人です。
本来なら精神的に落ち込んでしまうところでも、それを打ち消すような報酬系ホルモンが出ているとしか思えない。
多いなる錯覚により自己肯定感が強く、「何か言われた気がするが、自分のスタイルを変える必要はない」と思い込んで、自分が良しとする事柄に固執し続ける。
私の印象では「めげない人」は良い意味での錯覚をしている人。
「懲りない人」は悪い意味での錯覚をしている人。
その人が「めげない人」か「懲りない人」かは別として、どちらにしても劣等感というものとは無縁な気がします。
ながらスマホ(チラ見)で麻痺する劣等感、増大する肯定感のバランス
仕事でミスが多く動きも緩慢で、その現場の雰囲気や不文律に添わない人が、そのことに気づいておらず、注意すると心外な顔をしたりするケースがあります。
私も実際に出会ったことがありますが、能力的には元々「?」なところがあった新人にも拘らず、仕事中に「ながらスマホ」をやりだした途端、気の毒なほどわかり易く効率を落としました。
しかしながら、当人に自覚はなかったようです。
ひょっとしたら劣等感を解消するコツは、努力よりも錯覚のほうが手っ取り早く効果的かもしれない。
もしもマルチタスクを意図的に行って、その報酬でドーパミン放出が行われ、”達成感の錯覚”を起こしたことで自己肯定感が上昇するのなら、ながらスマホも「劣等感を避ける」という意味においては有効かもしれません。
その結果、それまで「叱られないかな」と委縮しっぱなしだった人が、叱られることよりも ”達成感の錯覚” のほうに強く反応し、「コイツ懲りねえなぁ」と思われるメンタルタフネスをゲットできるかもしれない(評価がどうなるかは保証できませんが)。
ただ、できれば「懲りない人」ではなく「めげない人」と思われたほうが良いでしょう。
愛されやすくなるでしょうし、協力も得やすくなるに違いない。
しかし残念ながら、両者に共通するのは ”集中” や ”没頭” で、人並外れたシングルタスクの結果とも言えますので、「ながらスマホ」とは対極にありそうです。
マルチタスクを実践するうえで、「ながらスマホ」は手っ取り早さや手軽さにおいては申し分ないのですが、よほど実力が高くないかぎりリスクばかりになるので、おすすめとは言えなさそうです。