さて、物語の13日目、11月21日の青山でのディナーで、およそ隠密行動とはかけ離れた食べ方をした朝倉哲也。
その目立ちっぷり⇧⇧は、食のプロであるブロ友さんからコメントを頂いたほどです。
⇩⇩こういった記事をお書きになられている方です。やはり、劇中の ”食” に注目する人は多いと思うので、食事シーンの描き方はとても大事ですね。
ところで、この日の朝倉は「グリルで肉を喰う」という行動をとります。
私にとって「外食で肉を食べる行為」として最もセンセーショナルだったのは、”ハンバーグ革命” ともいえる『あの店』の誕生でした。
”国内のハンバーグ回数増加” を実現させた『あの店』
1992年。
ファミリーレストラン界に衝撃をもたらした、すかいらーくグループからの刺客『ガスト』
はじけたとはいえ、バブルの余韻がなおも残るこの頃の時代に
「品目を少なく絞り込む」
という逆張りともいえるやり方。
さらに、過当競争でサービスはきめ細かになっていく傾向の中
「店員は、客が呼ぶまで客席に行かない」
というスタイルは斬新でした。
しかし、この二つに特化することで、確実にコストは抑えられる。
そして、それを客単価に転嫁する。
『安く食べられる外食ハンバーグ』というコンセプトは、当時とても話題になりました。
しかも母体が『すかいらーく』ですから、知名度や信用の裏打ちもあります。
「気軽に食べに行けるハンバーグ」は、開始して即繁盛だった
当時私が住んでいたつくば市にもガストの波は押し寄せ、特に大学近くの大きな店舗では、フランクなレイアウトのホールに、大学生をはじめとした大勢のお客が入っていました。
その店のレイアウトは、店内の窓や壁に向かってグルリとカウンター席になっていて、めいめいが簡素な椅子に腰かけて食べるスタイルでした。
もちろんそれだけでなく、中央部分のテーブル席エリアは、集団で来店した客で賑わっているという活気のある店内だった。
代表メニュー『目玉焼きハンバーグ』は380円。
(写真は「すかいらーく - Wikipedia」よりいただきました)
むろん、「380円」はハンバーグの値段で、ライスなどのメニューは別料金だったはずなのですが、それでも5百円程度で充分満足な内容でした。
現在のガストは、ハンバーグに限らずメニューのバリエーションが豊富です。
ガスト草創期を知らない方にとっては想像がつかないかもしれませんが、当時のメニューはハンバーグだけといって差し支えなく、そのハンバーグメニューさえも、せいぜい2~3種類程度しかなかった(はず)。
そしてその中でも、特に私の目を引いたのが『300gハンバーグ』480円。
見た目は大きさのインパクトも相まって『ワラジ』と呼ぶにふさわしく感じました。
ランチで食べると夕食が食べられなくなる迫力のボリュームにもかかわらず、ワンコイン以下だった・・
朝倉が喰らったビフテキは、どのくらいの量だったのだろう??
さて、本題に入ります。
私はガストの300グラムハンバーグでお腹がいっぱいになりましたが、当然ながら朝倉哲也にそれはあり得ない。
大藪春彦的世界観の中では、「肉はキロ、バターはポンド」で表現されることになっています。
だから「300グラムハンバーグ」などという概念は存在しない。
ステーキでも当然そうでしょう。
”肉の描写” で『三皿』は、大藪的美意識に適合なのか?
『蘇る金狼』原作では、この時のシーンを次のように記しています。
グリルに入り、ビフテキを三皿と大鉢の生野菜を平らげて晩飯とした
そもそも、せっかくビフテキが登場しているのに、その表し方が『三皿』ということに違和感がある。
これは ”肉そのものの姿” を表現していません。
たとえば別のシーンでは『三センチの厚さのビフテキ』と、あくまでも肉が主体の書き方が為されているのに、この「青山のシーン」だと、あたかも主体は器のほうに移ったかのように感じられる。
なにか、大藪流の美意識を損ねるような事実が、そこにはあったに違いない。
たとえば、『一皿がキロで表現できないほど少量の肉』であったとか・・
大藪さんの無念を晴らすべく、この時に朝倉が喰らったステーキ肉を、私が表現してみましょう。
大藪先生の沽券にかかわることなので、ここは『ポンド肉』にご登場いただきました。
1ポンド肉のステーキ3皿が並んだテーブルの状況を想像してみよう
肉の分量が決まったところで、次は、それを並べたテーブルのことを考えてみます。
朝倉は一人でグリルに入店し、料理を注文しています。
私がこだわって記事にしている「孤独なグルメ『蘇る金狼』」は、朝倉が独りメシを喰らうシーンがメインです。
(※個人の感想です)
この時も彼はひとりテーブルに向かい、三皿のビフテキと大鉢の生野菜を食します。
ちなみに『大鉢』の定義は私のほうでやっておきました。
(この画像はめでたいな.comの上記リンク内の写真です)
となれば、大鉢1個とステーキ皿3枚が乗るほどのテーブルサイズです。
当然、二人で向かい合って食べるのが精一杯な程度のテーブルでは、お話になりません。
大判ステーキ皿を3つ並べられるスペースを確保する
「大判」とされるステーキ皿の大きさは、楕円形のものだと概ね25cm×16cmといったサイズのようです。
ステーキ皿 IH対応 楕円 25cm×16cm 専用木台付き【ステーキ皿】【スキレットパン】【小判型】【大判型】【オーバル】【鉄板】【鉄フライパン】
ただし、ここで忘れてならないのは、「25×16」というサイズは、料理が乗る鉄板部分の大きさを表すものだということです。
卓に並べるときのスペースとしては、鉄板の下の土台までを含めて考えねばならない。
ステーキ皿 IH対応 楕円 25cm×16cm 専用木台付き【ステーキ皿】【スキレットパン】【小判型】【大判型】【オーバル】【鉄板】【鉄フライパン】
店側としても、テーブルの端ギリギリに器を置くのは危険なので、ある程度のゆとりをもって並べるでしょう。
ということは、縦横の全長にプラスアルファして、料理を置くスペースを想像する必要がある。
朝倉君は、最初は「おひとり様」で席に通されたかもしれないが、彼の注文内容に驚愕した店主が「それじゃお客さん、そのテーブルじゃとても足りないよ。悪いけどこっちの席に移ってもらえるかい?」と、4人掛けテーブルへの移動を促された可能性が否定できない。
(益々目立ってしまうのだが・・)
本当にそこで良いのか? 4人掛けテーブル
かくして、最初は2人掛けテーブルに、その後4人掛けに移されたと想定される朝倉君ですが、本当に4人掛けテーブルが、この時の彼の食事にふさわしいか?
ダイニングテーブルセット 4人掛け 4点 折りたたみ 鏡面仕上 ホワイト天板 伸縮タイプ ラック付 ベンチ付
具体的に、4人掛けのサイズだと、幅は120cm、奥行きは80cmは必要とのことです。
食事の際に隣の人と肘がぶつからない「1人分の寸法」は、幅60cmだそうですので、そこからの計算らしい。
ビフテキとの闘いに勝つ陣形を求めてみる
ということで、120×80のフィールドに、【ステーキ皿A~C】と【大鉢P】を置くことを考えてみましょう。
まず、メインディッシュである【ステーキ皿A~C】の3つが並ぶわけですが、単に並べて鑑賞するわけではなく、そこにある肉をナイフで切ったりする「作業」が行われることを、我々は考えねばなりません。
その作業の効率性はもちろんのこと、食べている最中に他の皿が食事の妨げにならないように配置され続けねばならないとすると、これは連綿不断なる戦いといえます。
艦隊の船首と船尾を連ねる隊形になる「単縦陣」に、ステーキ皿を並べるとします。
国旗みたいな見栄えになりましたが、こう並べると、朝倉君が反復横跳びのごとく左右に位置を変えることで、なんとかこのディナーを無難に終えることができそうです。
ボッチ飯なので、大鉢の位置はこのまま不動で良いでしょう。
これがもし、誰かとつるんで飯を喰らうような、「孤独なグルメ」の名に恥じる食事だったなら、大鉢のほうを左右に動かしながら食することも想定せねばなりません。
そうなると、『蘇る金狼』は食事シーンとしては『家族ゲーム』への転換を迫られることになります。
ま、どっちにしても松田優作だけど。
せっかくなので、「ステーキ皿戦艦戦隊」として、単横陣の場合のレイアウトも検証しないと、私は夜の眠りが浅くなる。
一応やっときましょう。
この配置にした場合、生野菜の大鉢に手を伸ばしやすくなるとはいえ、ステーキ皿の扱いには難渋しそう。
このような配置でディナーを食したとは思い辛い。
やはり、単縦陣の構えでビフテキ三皿を喰らったと考えられます。
『蘇る金狼』の青山のグリルのシーンを読む際の参考にしてください。