前回記事で、「4人掛けテーブルの面積で、”生野菜が大量に盛られた大鉢” と、"大判ステーキ皿3枚" は同時におけるか?」という検証をしてみました。
整然とした朝倉の食事には、納得できない
私自身が意外に思ったのですが、出来てしまいました。
このような構図です。
本当は「やっぱりこれじゃ狭すぎますね」といって、『結婚できない男』で桑野信介が一人で陣取る6人掛けテーブルの話題まで持っていく予定だったのがポシャってしまいました。
ハードボイルドは「ワイルドに手づかみで食える炭水化物」しか、食べてはいけないのか?
しかし、朝倉哲也がそんなにあっさりと敗北するはずがない。
彼はまだ、なにがしかの余力を残しているはず。
そうだ! メシだ!
大藪春彦先生はこのシーンで「ご飯」のことは書いていない。
朝倉は「パン」はよく食べます。
「寿司」も食べる。
しかし、茶碗によそって食べる「ご飯」が劇中に登場した記憶はありません。
初期の「シティーハンター」では、冴羽遼は洋食ばかり食べている印象で、ハードボイルド的要素が色濃かった当初の姿に ”和食” は適さないといったイメージがあったのでしょうか?
だから私が図示した卓上配置では、白飯の存在が無しになっています。
普通ならステーキ皿と同じ枚数のライス皿が並ぶはずなので、それが無い分だけレイアウトがすっきりしてしまっている。
「肉を喰わないと力が出ない」と考えていたであろう大藪先生にとって、穀類が二の次なのはうなずけます。
ですが、このシーンでは生野菜も摂っていることですし、ここはひとつバランスも考えて、どうでしょう? いかがですか、ご飯は?
じゃあ、どれくらいの飯(めし)量を要するのか?
ということで、半ば強引ではありますが、元々が勝手な憶測で成り立っている「孤独なグルメ『蘇る金狼』」ですから、今回に限り、多少の脚色をしてみます(⇦絶対ウソ)。
ただし、どの程度の飯量にするかでまた頭を悩ますことは避け得ません。
サンプルをどうするか?
もちろん、小食の私の例などは論外。参考になりません。
ここは朝倉同様、大食いの人間を据えるべきだ。
となれば、私の頭に思いつく人物といえば「土田康一」
???
誰? という感じですが、もし名前だけで分かった人は、相当な「美味しんぼ通」といえるでしょう。
私自身は美味しんぼファンではないにもかかわらず、あまりの強烈なインパクトで、「たしか30巻の1話目だったな」とまで記憶している大食いエピソードがあります。
第1話「大食い自慢」というまんまのタイトルに登場する土田康一
彼は山岡たちとなじみの食堂へ入店。
やってきた康一を見て顔色を変えた店主夫婦は慌てて入口ののれんを下ろし、閉店の札をかける。
彼がすべての食材を食べつくしてしまうからです。
とんでもないヤツです。
ちなみに一行がついた卓は「4人掛け」
そして、康一への白飯の提供は「おヒツ」
しかも前菜の代わりとしてオカズもなしで丸ごと一つ食べ尽くし、おかわりする。
その後、トンカツ、天プラ、オムレツ、サバの塩焼き、レバニラ炒め、麻婆豆腐、豚汁、ハンバーグステーキをおかずに「おヒツおかわり」を繰り返します。
麻婆豆腐に至っては箸を使わず、お皿を持ち上げて直接口へ・・
かつてアメーバブログで初の殿堂入りとなった、若槻千夏の『マーボー豆腐は飲み物です』を彷彿とさせます。
参考までに「引き」で見たかった康一の食事シーン
残念ながらこの食事シーンでは、卓上全体を描いたコマが無い。
このため、皿の専有面積がわかりませんが、康一の左右に食べ終えた食器が積み上がっているので、かなり場所を取っているのは間違いない。
左に座った富井副部長がオーダーした冷や奴定食のお盆は、間違いなく「縦置き」されていることでしょう。
ゆう子「副部長、そんなに張り出してこられると、わたし食べづらいです」
副部長「そう言わないでくれよぉ栗田君。私のこの状況を見てわかるだろう。どうして君はそんな冷たいこと言うんだよぉ~」
山岡「居場所が無いのはいつものことでしょう?」
副部長「や、山岡ぁ~!!」
という、いつもの調子が繰り返された(であろう)セリフはカットされているようです。
おヒツの大きさを考察する
話がそれましたが、最後に康一は「おヒツ茶漬け」で豪快な食事の ”シメ” を行っています。
このとき彼は、おヒツを抱えて直食いで口に流し込んでいますが、顔の大きさとの比較から、おヒツのサイズは大体30㎝と読み取れます。
コマを確認すると、おヒツの8分目ぐらいまではビッシリとご飯が入っているので、康一が食べたおヒツ1個につき、1升はあったと目される。
もしもこの土田康一と朝倉が相席したら・・・と考えた場合、そのテーブルにはカオスが渦巻いていることでしょう。
もはや無法地帯・・
「ヒャッハー!」みたいなやつが走り回っていてもおかしくない。
(『北斗の拳』ファンにしかわからないたとえ)
1升のおヒツを置いて、どうやって食べるかを考察する
ともあれ、さすがにおかわりまではしないにしても、少なくとも1升は喰らったであろう朝倉君のために、テーブルにおヒツスペースを設けることにしてみた。
やはりおヒツは手元に置きたい。
さらに条件を付加するならば、「あらかじめステーキを切り分けておいてから、全部をお箸で食べる」なんてことを、ハードボイルドの朝倉君はしない。
すべてフォーク1本で仕留め切ったと考えるのが自然だ。
佐々木主浩魔球フォークボール (名手に学ぶプロフェッショナル野球論)
ステーキはまるごと1枚をフォークで突き刺してかぶりつき、1升飯のおヒツに顔を突っ込んで白飯を喰らい、時々大鉢からまるごと野菜を掴み出して食いちぎる。
まさに闘争・・戦いだ。
その時の構図はこうだ。
なんとも不思議なことに、4人掛けテーブルに収まってしまった。
こう考えると「一人で6人掛けテーブルを占有した」桑野信介の迷惑度がよくわかります。
どうしても ”大食い” は目立ってしまう
結局、美味しんぼの土田康一も朝倉も、ド外れた大食いは目立ちすぎて、その光景を目にした多数の人の記憶に焼き付いてしまう。
朝倉君なんかは、犯行を隠すために車を乗り換えたり指紋を残さないようにしたり、色々と気を使っているのだけれど、どう考えても『OOGUI』というKOパンチ一発で、すべての小技を吹き飛ばしてしまう。
小手先のテクニックは通用しないのだよ。
スーパーマンが変身の時に電話ボックスに入るように、キミも食事の時は人目を忍んだほうがよい。