前回までに、『朝倉哲也が大衆的なオデン屋で食べる300円分のおでん(昭和41年バージョン)』について、その店構えやおでん鍋のサイズなどの検証を行ってきました。
今回は久々に ”番外編” から ”本編” に戻り、いよいよ朝倉君の登場です。
長かった「11月23日のシーンの想像」
『蘇る金狼』11月23日の夜の食事シーンは、「300円分のオデン」という条件があまりにもシンプルで、さらに他の手がかりも少なく、令和4年でその陣容を想像することが非常に困難でした。
もう一度、設定のおさらいです
朝倉が食べた「昭和41年における300円分のオデン」は、令和4年に直してみると概ね80~90個ということでした。
鍋に何個くらいのタネが入るのかは、下⇩⇩⇩の情報から「家庭用」なら約40個、業務用ならサイズ的に3倍程度は行けそうなので、120個くらいのキャパはありそうだと思料しています(タネの種類にもよりますが)。
しかし、2つの理由から、おでん屋の御主人はひとつのおでん鍋に120個もタネを入れる愚は犯さないと判断しました。
大将の「うまいオデンへのこだわり」その1
1つは、営業時間内に訪れる客の数やその顔ぶれから、店主は「来店時に美味しいおでん種」に仕上げることを指向するであろうという理由です。
効率優先で隙間なくギチギチにタネを詰め込み「これが利益最大化の期待できる投資です」とかいう机上の空論は採用しない。
常に最前線で商売をするなら、現実を見て判断するはず。
大将の「うまいオデンへのこだわり」その2
2つ目は、おでん鍋の1区画には、燗をするための「ちろり」を浸けてあるからです。
この「ちろり」からコップに注がれる熱燗は、お酒をほとんど飲まない私ですら、とても美味しそうに見えます。
私の想像の中にある、このおでん屋の店主のこだわりは「熱燗の温度は、おでんと同じにする」ということです。
一緒に出されるおでんと同じ熱さで、時間と共に一緒に冷めていく演出は、訪れる酔客たちの心をつかんだでしょう。
”夕方のおかず目的”、”家族連れで食事”にも対応する「おでん鍋2台体制」
例として挙げた下の業務用おでん鍋の場合、8区画のうちひとつは「ちろり」専用として使われ、残り7区画には、いい感じにおつゆが循環する程度の隙間を開けて、適度におでん種が浸かっていることになります。
なお、「商店街にある大衆的オデン屋」ゆえ、近所の主婦がおかずに買っていくことや、休日に一家で食事に来るシチュエーションが想定できるため、店内の収容面積はそこそこ大きく、おでん鍋は常時2つ使われている設定です。
ということで、各おでん鍋に60個程度、合計120個のタネと、4号入りの「ちろり」が1つずつ燗されていたと仮定します。
この、のびやかな昭和の大衆店に、非常事態が起きるわけです。
非常時に強まる絆
朝倉は久里浜街道を横切って、賑やかな三笠通りの商店街に出た
大衆的なオデン屋で五合の酒と三百円分のオデンを平らげ
たったの2行で表現された、サバクトビバッタ 朝倉哲也の来訪。
夜7時ころのことですから、他にも客は居たはずです。
祝日なので仕事帰りのおじさんは少なかったと思います。
逆に、休日の夕食を取りに、一家で訪れた一団は居たかもしれません。
そういう意味で、仕事の都合とかとは関係なく、この店とおでんと酒が好きな客、それと、日ごろからご近所づきあいのある家族に限定されていたでしょう。
つまり、『常連』や『ご近所さん』だけが集っていたため、お店への感情移入が強く、店主とお店を思いやる傾向が高かったと思われます。
結果から考えると、それが功を奏した感がある。
「忙しいから立ったままつまむ食事」の量が多いとこうなる
朝倉は、やたらと大量に食べる割に、食事に要する時間が極度に短いことは、私のこれまでの検証記事を読んでいる方はよくご存じのことと思います。
このときも同じ状況だったことは疑えません。
というのは、食後にはすぐに次の行動に移っている。
そもそもこのオデン屋には、移動中に「腹”も”へった」という理由で足を踏み入れています。
つまり「移動のついで」なのです。
我々の感覚でいうと、「忙しくてしっかり食べる時間が取れないから ”ちょっとつまむ”」というのに等しい印象・・
立ちながらサンドイッチを口に放り込んで、すぐに家を出ていくあの感じを、大衆的なオデン屋で実行したと考えてよいでしょう。
個人的には、座ったかどうかも疑わしいと思っています。
ハードボイルドは「おまかせメニュー」を頼まない
朝倉哲也ともあろう男が、おでん種の選択を店主まかせにしたとは思えない。
動物性たんぱく質の摂取にこだわる朝倉は、基本的にコンニャクやシラタキは好まない気がします。
しかし、店に任せるとそれらの定番が必ず入れられてしまう。
だから、ひとつひとつオーダーしたことでしょう。
ただ、いきなり来店して偏ったオーダーを繰り返されると店側が迷惑することは、美味しんぼの土田康一の件で明らかになっています。
そして、そのしわ寄せが富井副部長のサイフにきたことが、下の検証記事で確認できます。
「ヤベー客」のやり過ごし方
来店するなり躊躇なく席の位置を決めて場所を陣取り、一皿に乗り切らないほどの分量を「とりあえず」注文する朝倉哲也。
そして、一息に飲んだわけではないとしても、彼が摂取した酒の量は5合。
それも短時間ですから、今「ちろり」に入っている燗された酒を飲み切ってしまったら、再び店主こだわりの「おでんと同じ温度」まで調節している猶予はありません。
4合のちろりは、2つの鍋に一つずつ浸けられています。
朝倉に5合を提供するには、2つの鍋から燗酒を総動員しなければならない。
ここで、今日が祝日で「コア客」しかいないことが活きてきます。
「おい、なんかヤベー奴きたぞ!」
突き合って小声で言い交す常連客と家族客。
しかし、燗酒程度なら、店主に与える影響はさほどのことではない。
こっち側の「ちろり」の酒が尽きそうになったら、向こうのちろりから一回だけ補充すればことが足ります。
問題はやはり、おでんです。
かつて「そば以外のわんこ」を表現した作品は無い
飲む速度でおでんを咀嚼する朝倉は、最初に出されたタネの山を、ものの1分も経たないうちにあっさりと瓦解させます。
当然ですが、追加オーダーの速度もエグイ。
ひとつ皿にのせてやっても、数秒後には次のタネを乗せなければ間に合いません。
こうなるともはや「わんこ」
常連客達が事の行方を案じながら一心に見守る中、店主は朝倉一人に付きっきりになります。
当然、その間彼らは一切のオーダーをストップ。
目立ってはいけないはずの朝倉哲也の顔を、しっかり記憶に焼き付けることになるのはいつものことです。
あれは・・ハムスター?
確実に俺は今「酔拳」の”あのシーン”を見ているww
#ここでもやっぱり晒し者ww
#玉子が熱すぎて口から飛び出した
#ねえママあのオジちゃんなにー?
#ピッコロ
#お客さん、払えるの?
#富井につけといてくれ
#富井副部長は朝倉と同世代ww
あ~~っ、見てみたい!
いまだかつてない状況!!
これまで誰一人としてこんな光景、想像すらできなかった!!!
確実に我々は今、人類初めての出来事を目撃している ( ー`дー´)キリッ
「にぎり寿司=ど根性ガエル」
— miakesan(高知) (@miakesan) 2017年3月28日
回転でもパックでも、お寿司をたべると必ず頭の中でこのシーンの脳内再生が始まってしまう。しかも40年以上ずっと。(ちなみにこのシーン、映像ではひろしとピョン吉が物凄い速さで寿司を食べ…いえ飲み込んでます) pic.twitter.com/j0pOsCAThw
ど根性ガエルの連載は昭和45年から(アニメは47年から)
なんと、数年前にオデンでこれをやっていたなんて・・
さすがは大藪先生。
やっぱり半端ネェーっスね!!