さて、前回の記事で朝倉が食した鶏股は「四、五本」ではなく「45本」だったという衝撃の事実(こじつけ)が露呈したことで、『蘇える金狼』の展開が俄然ハードボイルド感を増しました(あくまでも四緑文鳥的脳内変換です)。
この11月25日(金)の赤堤での初めての夕食では、隠蔽の匂いのする「京子のボロニアソーセージ摂取」など、大藪文学の屋台骨を揺るがす聖域侵食問題などを扱ってきました。
朝倉が京子を騙すために偽名の「堀田」名義で借りた赤堤のアパートには、数時間前に新宿のデパートで購入した家具が一気に運び込まれるわけですが、一足早く到着した二人が、ガランとした2DKの部屋に最初に持ち込んだのが食料だったということになります。
45本の鶏モモの他に、朝倉哲也の象徴であるボロニアソーセージも大量に購入したでしょう。
この食事シーンでは、デパ地下で大量購入した食物の運搬と室内への据え置き(!)についても考察が必要となります。
京子は「それ」を ”テーブル” とわきまえていた。さすが大藪作品のヒロイン!
考えてもみてください。
そもそも、たかが120センチ✕60センチの面積しかないテーブルが、我らが朝倉哲也の食事台を努めおおせるのか?
二人が「両手に持ちきれぬほどの」食料を買ってこの部屋へ到着したことは、原作の記述が証明しています。
地階の食料品売場で、両手に持ちきれぬほどの買物をしてタクシーに乗った。
これは完全にトランク案件です。座席のシートにはとうてい収まり切らないと考えて良い。
トランクというよりコンテナ案件かもしれません。
運搬時の光景がとても気になります。
新婚旅行へ出発する昭和の夫婦を象徴するような『大量の空き缶を引きずって走り出す自動車』を、タクシーと鶏モモ45本で再現していたかもしれない・・(今の若い人は絶対知らない光景だな)
毎回「どうやって運んだのか?」が気になる食材買い込みシーン
朝倉は以前、十数キロの食料を買い込んでアパートに持ち帰っていますが、その程度では「両手に持ちきれぬほど」という表現を使うにはほど遠いらしく、このときのシーンでは ”運搬に関する記述” 自体が全く見られません。
⇩⇩⇩「十数キロの食料」を買った11月14日のシーンはこちらで検証しています
鳥の丸焼き三羽分とウイスキーを買ったときですら、どのように持ったかが記されておらず、その程度では書くにも値しない少量だったことがうかがえます。
その分だけ私の妄想のほうが止まらなかった・・⇩⇩詳しくはこちらをお読みください
今回の場合、京子と二人でもなお「持ちきれぬほど」の分量が!
ということは、テーブルに乗り切らない紙袋が、部屋のあちこちに林立していた可能性が高い。
もしくは、パーティー開けした紙袋が臨時の皿代わりとなり、料理が床に広がっていたのではないか?
花見の概念を持ち込まないと想像が難しい
ビニールシートを敷いて花見する場合、地面がテーブル代わりになりますが、さらに簡単な調理台が必要になったりすることもあるでしょう。
だから、そういう作業台がビニールシートの横に設けられることもあるし、ときにはシート上に乗せて使われることもある。
この赤堤のアパートの洋室8畳間では「作業台」とは朝倉君が『ローストチキン崩し』をする応接セットのテーブルを意味します。
しかし、ここには45本の鶏モモが敷き詰められていて、それ以外のものを置くスペースはなさそう。
ということは、その他の食材はどこに置いたか?
ビニールシート代わりの「10万のベルギー絨毯」の上に置かれたことは、ほぼ間違いないでしょう。
なるほど、高い絨毯はこのためのものだったとは・・
高級な絨毯の面積は?
これまで何度か説明した「朝倉の手取り度量衡」に照らすと、ベルギー絨毯の購入代金10万円は「手取りの4倍」。
令和4年換算で48万円(朝倉の手取り「月12万円」の4か月分)。
⇩⇩朝倉の手取りを現在に換算して12万円とした検証記事はこちらです
私がどんなにECサイトを駆け回っても「48万円のビニールシート」は見つけられない。
豪華なレジャーシートでも、せいぜい3万円といったところです。
48万円ということは、これを16枚買わないと京子の買物に合致しない。
このレジャーシートのサイズは180✕270センチ 4.86平方メートルです。
16枚だと 77.76平方メートル
おそらく、京子が住んでいる参宮マンション(4LDK)の専有面積に近い。
彼女にとっては、これを目いっぱい使うことにより、自分のラグジュアリーなマンションで、愛する朝倉とふたりきりで過ごしている気持ちになることができる(・・に違いない)
なに? 敷き詰めるには面積が足りない?
大丈夫。『蘇る金狼』は昭和41年を描いています。
昭和41年に、日本に何が起きたか?
『敷物を重ねる使い方』が、広く日本に普及し始めた年なのです。
京子もきっと、『笑点』を見ていたことでしょう。
この食事の時も、面白いことを言うたびに、余ったレジャーシートをお尻の下に積んでいったのではないでしょうか。
(※あくまでもレジャーシートは私の頭の中の妄想です)
「愛する彼のための、食料を置くシート」に、そんな壮大な想いが込められていたとは・・
彼女がなぜ絨毯に10万円もかけたのか、京子の朝倉への愛の大きさがわかる気がします。
(・д・)チッ