居候とは「他人の家に住み、衣食の世話になっている者」というのが一般的な定義らしい。
これこそが昭和から続くライダーシリーズを通じ、主人公の経済生活を分類する『ライダー・クワドラント』の最終形態(理想形)です。
居候最強説
一般的なキャッシュフロー・クワドラントは下記のような図で、「左上⇒左下⇒右上⇒右下」の順で経済的勝者たる投資家を目指す人が多いのは周知のとおりです。
ざっくりいうと左側が ”労働する” で右側が "労働させる" という特徴がある。
それに対し、ライダーたちの経済的なクワドラントは以下のとおりです。
ここでは最上級が居候です。
左側が ”衣食住のすべてを自己又は自己と生計を一にする者が負担する者” で、右側が ”衣食住の一部または全部を自己以外の者に負担させる者” ということになる。
(役所でおなじみのまわりくどい書き方をしてみました)
レジェンドの『昭和ライダー』がほぼ居候の地位で活躍したのに比べ、平成ライダーではほんの一握りの主人公しか、この地位を獲得できていません。
争わない居候ライダー
しかし、居候が最上級のカテゴリーとはいえ、その中だけで見ればドングリの背比べになることは否めません。
本来最強である居候ですが、それに該当する主人公だけを並べてみると、居候ゆえに収入金額の多寡では勝負がつかない。
経済生活上の最もわかりやすい指標が失われてしまうのです。
そのため、単に居候というだけではインパクトがなくなるので、別の要素を用いて比較する必要があります。
もちろん当の本人たちは「別にそこで争う気はない」との認識でしょうが、各作品を横並びに鑑賞する我々の側ではやはり「1番つえーヤツはどいつだ?」とドラゴンボール的価値観でスカウターを用いたくなる心理も否めない。
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やはり、弱者がいてこその強者
ナンバーワンを決めるには、他のやつを全員退けて自分がトップに立たねばなりません。そしてそこには大抵の場合、なにがしかのリスクは避け得ない。
ひょっとしたら自分自身が弱者になってしまうかもしれないけれど、とにかく動いてみることも必要でしょう。
いわゆる「守ってても勝てないから勝負に出る」といった行為がそれに相当します。
勝負に出る方法として ”最初から最後まで居候では変化に乏しい” という現状否定から入るのも、考え方の一つに挙げられるでしょう。
そういう意味では、最後に脱落してしまったとはいえ、当初の居候身分をあえて放棄した【アギト】の津上翔一は、やはり相当な異彩を放っていました。
彼が開業して稼ぎを得るようになってしまったのは、よくよく考えれば実に残念。
もっと別な変化の手法はなかったのかと色々考えてしまう。
もしも津上翔一が『居候』を貫いたら・・
美杉教授宅を出た津上翔一が、たとえば葦原涼のアパートに転がり込むとか、Gトレーラーに寝泊まりするとかはどうでしょう?
翔一のあの性格ならば、その程度のポテンシャルは十分に持っていたと思うのだけど。。
特に「Gトレーラーに寝泊まり」はサブストーリーが多彩で楽しそう。
小沢澄子は昼でも夜でも焼き肉に誘ってくれそうだし、愚痴を聞いてもらいたい小室くんからの誘いも引きを切らないことでしょう。
それから「私はあなたのお世話係じゃありません。自分の食い扶持くらい自分で稼いでください」と、財布を開きながら説教する北条さん。
「これがGトレーラーなのね、翔一くん」とお弁当を持った真魚ちゃんが訪ねてくるし、「ショーイチ~!、俺もオマエの菜園でコレ作ったぜー!」と野菜を抱えた太一も顔をのぞかせる。
そして・・
寸劇 ~ 氷川誠と津上翔一の「いつものやつ」
「津上さん! いやしくもここは警察組織の中ですよ! 少しは場所をわきまえてください!」
と、ひとり真面目に詰め寄る氷川主任こそ、津上翔一が最もいなしやすい相手。
以下、想像されるやり取りを記してみましょう。
「まあいいじゃないですか氷川さん。オレがここにいれば、また氷川さんが負けちゃったときにはオレがG3-Xで仇とってあげますから」
「あ・・あなたは・・アギトじゃないですか! どうしてアギトのあなたがわざわざG3-Xを装着する必要があるんですか! 余計なことはやめてください! だいたいなんですか?『また負けちゃったとき』なんて人聞きの悪い・・、失礼じゃありませんか!」
「嫌だなぁ〜氷川さんは・・またそんなムキになって。大丈夫です。オレと葦原さんとでしっかり氷川さんのこと守りますから、大船に乗った気持ちで戦ってください。アハハハハ」
「ボ、ボクを守る必要なんてありません! だいたい貴方がたに守られたくなんかありません! ボクは警察官です! ボ・ク・がッ!市民を守るんです! わかりますね?」
「チョットォ、何するんですか氷川さん、落ち着いてください。ひどいなぁ、いきなりそんなモノ向けて。何度も助けてあげたじゃないですか・・」
まあこのあたりで小沢さんの、ちょっと翔一に肩入れした大雑把な大岡裁きが発動して、不満げな氷川君がしぶしぶ矛を収める展開になるのは目に見えています。
翔一が警視庁内で無理の利く理由
ちなみに、Gトレーラーで寝泊まりする翔一は、おそらく警視庁内のシャワー室や仮眠室、売店や食堂にも出入りすることでしょう。
一般人にそんな自由が許されるハズはない・・が、警視庁にはこの人がいます。
そして劇中ではこんなシーンすらある。
「今の俺のできないことを君たちがやってくれ」だそうです。
こうなっては、誰も文句を言えないですね。
思い返せば津上翔一は一時期、店主が死亡したパン屋の営業を独断で継続するなど、どうやってそれができたのか不可解な事業運営ができる特技を持っている。
【カブト】の天道総司が急に屋台のラーメン屋を出したりするのは、彼が持つ多額の資産を後ろ盾にしているからと容易に想像がつく。
ですが翔一はレストラン「アギト」の開業といい、このパン屋の件といい、身を寄せる対象から無条件に一定の庇護を受ける、いわば ”居候気質” が飛び抜けて高いのではないかと思われてなりません。
彼が居候でいてくれたなら、居候界最強(甲子園制覇レベル)だったかもしれないと、返す返すも残念に思うものであります。
<続く>☜まだやるんかい!