水戸黄門では、茶店を見つけた八兵衛が「ご隠居ぉ~、団子食べていきましょうよぉ~」とおねだりし、お銀が風呂に入って白い肌を見せ、最後は派手な立ち廻りのすえ印籠を掲げ、「ハハ~~!」とひれ伏す悪人たちを𠮟りつける展開となり、それを見た我々はいつものパターンに心が安定し、「よかったよかった」と腑に落ちて自分たちの日常に戻る。
野球のヒーローインタビューは毎回聞くことがだいたい決まっているせいか、インタビュアーの質問の語尾が「○○という感じがしたんですが・・」など、フワッとして質問形になっていなくても、答える選手の話法もだいたい決まっているのでコミュニケーションが成立し、最後は選手が「これからもチームのために、出来ることを一つひとつやっていこうと思います。ありがとうございました!」とシメの言葉を発すると、一拍置いてインタビュアーが「○○選手のヒーローインタビューでした。ありがとうございました」と締めくくり、ここでもいつものパターンに心が安定し、そのシーンを見守ることができる。
しかしこの流れ、のべつまくなしにやっているテレビショーは、これをやりすぎて劣化している感が否めないなとあらためて思ったのが、今回の選挙特番を見た感想です。
決まり切った予定調和式の対話を垂れ流しているかぎりにおいて、インタビュアーはカメラの前で立ち振る舞うことができる能力があれば、質問の練り方とか対話の掘り下げ自体は浅くてもそれなりに成り立つことになって、使い勝手の良いうま味調味料みたいになっているのでは?と。
「若い世代のテレビ離れ」というけれども、若くない私だって完璧なまでにテレビ離れしているのは、NHKが大嫌いだという以外に、何を見ても ”同じもの食わされてる感” に、いいかげん食傷しているからと言ってよい。
選挙特番までステレオタイプな同じ質問の繰り返しで、落選者がこのような言葉⇩⇩⇩を言うことで、それを引き取ってコメントすれば仕事した体を装えるかのような造りはどうかと思う。
「今回は力が足りずこのような結果になりましたが、それでも予想以上の手ごたえは感じられましたので、今回のことを糧に、さらに皆様の声を反映するような施策を練り上げて今後に活かしたいと思います。本当に応援してくださった皆様には、お詫びと共にあらてめて心から、感謝の気持ちをお伝えさせて頂きます。ありがとうございました」
この一連の流れを見ていつものパターンに心が安定し「なんか一層深く政治参加した気分」を味わっている視聴者ほど、石丸氏の対応に嫌悪感を抱いたのではないかと思えます。
石丸氏の反応にどうのこうのと批判が飛んでいますが、桜井誠氏の会見を見た経験がある人間にとっては、あれには大したインパクトを感じない。
個人的には「2位桜井、3位蓮舫」で、マスコミは蓮舫氏にインタビューしたければ桜井氏を避けては通れないシチュエーションが見たかった。
マスコミへの塩対応という点で、石丸氏とは比較にならない不協和音ぶりは楽しそう。
テレビを見て「いつものパターンに心が安定し」なんてのは、それ自体がすでに洗脳戦略に陥っているのではと、すっかりテレビ嫌いが板についている私の感想でした。