さて、前2回で言いたいことはほぼ言い切ったので、もはや余談の域ですが、ガッツ星人について少し・・
極めて頭の良いエリート宇宙人ということです。
怪獣戯画 ガッツ星人 セブン暗殺計画 ウルトラセブン 怪獣名鑑 ジオラマ
初戦がヤマ場だったガッツ星人
計画どおりにセブンを追い詰めたまでは良かったが、『セブン暗殺計画』と銘打った話にしては、地球人たちの目の前で大々的に処刑を敢行しようとしたお茶目なガッツ星人。きっと台本の表紙を読み忘れたのだろう。
最後はウルトラ警備隊の尽力により磔から解放されたセブンの不意打ちをくらい、桶狭間の今川義元のように狼狽する姿を晒されたあと、狙いすましたアイスラッガーの一撃で大爆破の餌食となります。
やっぱり許し難きペダン星人
今にして思えば、こうやっておちょくりながらトドメを刺すべきは、キングジョーを使ってセブンの力不足を喧伝した挙げ句、約束を違えて地球侵略に舵を切ったペダン星人であるように思われてなりません。
あの連中こそ、徹底的にアタフタさせまくった後で、最後には物理的に円盤を叩き割るくらいのことをして、よーく分からせてやったほうがよかっただろうと思えます。
個人的にはゴーロン星人と戦ったときに見せた、手刀を振るうたびに指先から1発ずつ出る短い光の高速連続弾を「オラオラオラオラオラオラオラオラ!」と喰らわせてくれればなお嬉しい。
あの、様々な角度で多彩に手刀を振るアクションが、途中から高速再生になる演出は、小学生の時に真似したくなるほどの魅力を備えていました。
脳波攻撃などという姑息なマネをしたゴーロン星人への ”お仕置き” の意味もあったのでしょう。やはりあの技は、ペダン星人にこそふさわしい。
「おとなしく地球を去る」との前言撤回。
「ピッチャー鹿取」 キングジョーのゴリ押しや、要人の誘拐・暗殺。
自分は決して現場に出ず、裏での画策が目立つペダン星人。
「悪質宇宙人」と冠されたメフィラス星人の称号は、むしろペダン星人にこそふさわしかったのではないかと・・(あるいは『変節宇宙人』かな?)
ウルトラ怪獣オーブ 01 悪質宇宙人 メフィラス星人 タグ カード ◆ ◆
悪質なことをやった宇宙人はウルトラシリーズには多数登場しますが、ペダン星人のそれは、何かむしょうな 自民党 リアル感があり、やっぱりオラオラで倒したい敵ではあると思います。
意外に爽やかなガッツ星人
で、ガッツ星人ですが・・
彼らは最初から「ウルトラセブンを倒して地球を侵略する」と旗幟を鮮明にしています。
最初にアロンを前面に立ててセブンと戦わせていますが、それはデータを取る乾先輩的な行為であって、セブンとの決戦は自分自身が担当します。
そして、前哨戦となるウィンダムとの戦いでは自分の戦いをモロボシダンに見せて事前情報を提供しており、一方的にセブンをのぞき見していたわけではありません。
やはり『セブン暗殺計画』というタイトルにはそぐわない、堂々とした立ち回り。
地球人へのリスペクトを感じるシーン
磔にしたセブンの姿を空に晒してウルトラ警備隊を救出に向かわせますが、それはフェイクで実際にはセブンは地中に埋められていた、、というシーンがありますが、あれは個人的にグッと来る部分です。
09 セブン暗殺計画 クリアVer. ウルトラ怪獣名鑑 ウルトラセブン編2 2003年 名鑑シリーズ ウルトラ警備隊 食玩
ウルトラホークで飛び立ったウルトラ警備隊は、枯渇したウルトラビームのエネルギーをセブンに撃ち込んで復活を図ろうとしますが、そのセブンが幻影だったため空振りに終わります。
フジミ模型 1/72 特撮シリーズ No.4 ウルトラホーク1号 プラモデル 特撮4
ガッツ星人があえて幻影のセブンを宇宙空間に置いた理由として考えられるのは「ウルトラ警備隊はそれをやってのけるだろう」と、その実力を認めていたからと思われます。だからこそあえて手間ひまをかけさせ、処刑までの時間を稼いだ、と。
そこに、ガッツ星人の「地球人リスペクト」を感じる。
また、ウルトラビームの源泉になる鉱石の存在を知るや、充分な分量を所持しているフルハシ隊員の友人女性を探しだして襲うなど、地道な活動にも余念がない。
(これはガッツ星人自身が原形を保ったまま実行しています)
その結果、鉱石を奪うことに成功するのですが、実は彼女が持っていたのはイミテーション。
セブンの幻影を用いてウルトラ警備隊に無駄足を踏ませる事柄とのアンチテーゼが成立しており、まさに地球人とガッツ星人との丁丁発止といったところでしょう。
まんまとガッツ星人を出し抜いた彼女は、あとから到着したウルトラ警備隊にそのことを告げ、本物を渡すことでいよいよ逆転劇の火蓋が切られるという一連の流れ、スリリングで見ごたえがありました。
ウルトラ警備隊の働きは存外スゴかった
ちなみにペダン星人の命運を分けたのが、ライトンR30爆弾の製法を知るドロシー・アンダーソンという女性で、彼女をウルトラ警備隊に押さえられたのが敗因です。
ガッツ星人の回では絶体絶命のセブンからの信号を解読し、ウルトラの星の助力なしの「純然たる地球人の活躍」で救出に成功したことなどを考え併せると、キリヤマ隊長をはじめとするあのチームの働きは、かなりレベルの高いものだったと、私は中学生の頃から考えていました。
しかしこの、鉱物を狙った襲撃においてもガッツ星人の爽やかさが目につきます。
狙うのはあくまでも鉱物で、その所持者だった女性に手をかける意思を持たず、強奪するやいなやその場を去っている。
フジミ模型 ウルトラ 地球防衛軍ウルトラ警備隊マグマライザー TDF MRI
その後のシーンでセブンを救出しようとするマグマライザーからのエネルギー照射を邪魔しなかったのは、その救出行為自体に気づかなかったというよりも、ニセモノの鉱物を掴まされていることを知らなかったためでしょう。
「地球人は結局、充分な効力を有しないエネルギー照射を試みているようだ。やらせるだけやらせて、無駄なことを思い知らせて戦意を喪失させ、そのうえでセブンを処刑しよう」
と考えていたのかもしれません。
こうして、ガッツ星人の企みは終焉を迎えることになる。
思えば、双方が全力を出し尽くした天晴な戦いだったとも言えて、セブンがあえて一息にとどめを刺さず、まずは波状攻撃を仕掛けた理由もわかるような気がします。
最後にあのセキセイインコみたいな頭を持ったユーモラスな姿を、ユーモラスなアクションとともにカメラに映してあげるための計らいだったのかもしれない。
そうだったのか・・
栄誉ある選抜メンバーだったガッツ星人
ちなみに、私が当時愛読したもう一冊の書籍『決定版ウルトラ怪獣』で、たしかガッツ星人は紹介されていたと思います。
決定版 ウルトラ怪獣 22版 1985年 入門百科シリーズ 97 円谷プロ バルタン星人 メフィラス星人 ゴモラ
数多いる敵の中で、あの書籍に単独で載るのは極めてハードルが高く、いわば選抜メンバーの一人ということになります。
表紙には登場しなかったが、個人的にはキーラ(左上)が載るくらいならむしろガッツ星人のほうが・・という想いはあります。
今思えば、センターがベロクロンだったのか・・
とはいえ、こっちで報われていたな、ガッツ星人。
「ボルトビーム」の謎
さらにちなみに、選抜メンバーの解説ページでは軽いエピソードが紹介されるのですが、ガッツ星人の項では、あらかじめ能力を調べ上げたがために、初戦でセブンの技が利かないシーンの画像カットがあります。
そこでは「アイスラッガー」「ワイドショット」と並び「ボルトビーム」なる技をセブンが発射している画像が1コマだけ掲載されています。
(しゃがんだ体勢のセブンを、やや下から映したアングルだった気がする)
ボルトビーム
この技を知っている人いますか?
揉み手するように両手を合わせて、そこから前方に稲光のようなジグザグな光が走っていたと記憶しています。たぶん使ったのはガッツ戦の一回のみ。
同じ一回限りの技として、たとえば帰ってきたウルトラマンがキングザウルス三世に放った「シネラマショット」などは、ネーミングもビジュアルもそれなりに名を知られていますが、「ボルトビーム」はあまりにも地味。
確認できる自信がない「フォッグビーム」
ちなみに(多いな)、キングザウルス三世もたしか『決定版ウルトラ怪獣』の選抜メンバーだった記憶がありますが、そこで使用した技として紹介されていたもののひとつに「フォッグビーム」があった気がします。
こちらは画像がなく名称のみで、この回を見たことがないことも相まって、「フォッグビーム」は「ボルトビーム」以上に謎です。
いつかサブスク利用して検証したい・・
ということで ”余談のつもり” だったガッツ星人の話を終了します。