では次に、仮面ライダーファイズの主人公・乾巧の名言②(陰徳版)についてです。
(なお、記憶だけで書いていたので②のセリフが間違っていました。厳密には「だが」ではなく「でもな」でした)
俺には夢がない。でもな、(他人の)夢を守ることはできる。
が正確な言い回しのようです。
歴代ライダーで最もリアルでかっこイイと思ったヒーロー像は②の名言シーンだった
他の記事でも書いていますが、私の平成ライダー視聴歴は初代のクウガからウィザードまでと中途半端なものです。
とはいえ、それでも全部で14作品。放映期間にすれば13年半あります。
その13年分にわたる全エピソードの中でも、乾くんの名言②が発されたシーンに最もリアルなヒーロー像を感じ、カッコよく思っています。
それでは①と同様に、名言②に至るまでの背景をざっとなぞっていきましょう。
この7話~8話のエピソードは、ヒロインの園田真理がアルバイト先の美容室の採用面接を受けることが主題になっています。
仮面ライダーファイズフォトブックCD2 園田真理(CCCD)
ちなみに、上の写真⇧⇧(16歳当時の芳賀さん)と日向坂46の正源司陽子ちゃん⇩⇩の顔立ちが似ている気がするのは私だけでしょうか?
物語の象徴シーンに「名言」が出るファイズ
第2話で「美容師になる」と語った真理の夢の第一歩が、満を持して実行に移されるのが7~8話のエピソードです。
このファイズという作品は、いわば「それぞれの夢」とでも題するギャラリーが、物語の横に展開していてもおかしくないほど、モブキャラにさえそれぞれの人生観が描かれていることが多く、その点でも深みを感じます。
その中で、ヒロインの ”夢” が具体化していくこのエピソードは、①の名言回と並ぶキーポイントと言って差し支えないでしょう。
また、出会うのは更に後のことになりますが、この美容室には先輩バイトの添野ひかるがいます。
彼女の父・添野錠二は、”怪物らしきものが介在する謎の失踪事件” を追う刑事なので、ここで初めて真理たちと警察につながりができることになります。
そんなわけで、ストーリー展開のギミックとしても大事な回です。
そう考えると、乾巧は野球に例えれば「ここ一番で打席が回ってくる4番バッター」とも言えるので、そこで名言をかっとばせる主砲っぷりは圧巻です。
やはり、さすがは井上のアニキと言わざるを得ない。
真理の事情
さて、初回面接でカールの巻き方を酷評された真理は、次がラストチャンスと宣告されてあとが無い状態に追い込まれます。
その晩「アンタが練習の邪魔したからよ!」と荒れて巧と喧嘩になるも、結局は彼の協力を得て徹夜で特訓。
2度目のテストではその成果が顕れ、めでたく憧れの美容室でのアルバイト職を得るお話となります。
ちなみに、厳しいセレクションを突破したにも拘らず正規スタッフにはなれないのが少しかわいそうな気もしますが、真理がまだ16歳で経験不足ということもあるでしょう。
それに加え、物語の構成上、ここで正規スタッフになってしまうと啓太郎のクリーニング店を手伝うことに無理が生じてしまうからという事情も無視できません。
なにせ、美容室勤務開始後に、ピザ屋のバイトを引き受ける回があるので、さすがに正規スタッフにしてしまったらそのストーリーは組めないかと・・
『陰徳シーン』への伏線
巧の名言②に話を戻しますが、このセリフを引き出す条件は「夢がかなった真理を、巧が守る状況」です。
ということで、エピソードの1話目で、真理はビジネスマン風の男に狙われます。
いよいよ襲いかかろうと怪人に変身しかけた瞬間、男のスーツの胸ポケットで携帯が鳴り、慌てて人間体へ戻った彼は電話の相手に応答する。
真理はその横を通り過ぎるときに男を一瞥しますが、男の慌てた様子が目を引いただけでまったく不審感は無く、自分が狙われている認識はゼロです。
とにかく真理が何も気づいていない点を強調し、それこそが名言②のシーンへ至る、重要な伏線です。
陰徳シーンの開始
その後、2度目の挑戦で念願叶った真理が、意気揚々とした足取りで並木道を通って家路につくシーン・・
(写真はイメージです)
流れが分かったうえで改めてこのシーンを見ると、並木道が、これから始まるクライマックスに向け、ライトアップされた舞台のように思える・・
特訓に付き合ったこともあり、結果が気になって美容室の近くまでやってきていた巧。
離れた場所から「やったな、真理・・」と言いたげに、清々しい表情で見守っているわけですが、真理は狙われているのと同様、巧がこっそり見に来てくれていたことも知らない。
嬉しそうに並木道の中を進んでゆく真理を、カメラは道の外側から彼女と並んで平行移動しつつ真横からとらえていく。
フレームに収まる真理の姿が、木の幹に隠れては現れ、また隠れては現れを繰り返す。
そして後を尾けるビジネスマン風の男もまた、現れては木に隠れ、そして次に現れたときには怪人体に・・、満を持して背後に迫ろうとし、そこでハタと足を止める。
カメラは怪人視点。数本前の木の陰から現れる乾巧。
立ちはだかった巧は一瞬後ろを振り返り、真理が何事もなく遠ざかっていく姿を確かめ、おもむろに、以前真理が口にした『夢というもの』について、オルフェノクに語って聞かせる。
(同じタイミングで敵に向けて『夢というもの』を語った木場勇治との対比も込みで、このセリフも名言とされている)
そして、満を持して②が発せられるというわけです。
なぜこのシーンが私にとって歴代ナンバー1のカッコいいシーンかということは、ここまでが長くなりすぎたので、誠に勝手ながら次回送りとさせていただきます。