前回の続き
ウルトラセブン第一話『姿なき挑戦者』についてです
相次ぐ謎の人間消失
目撃者がいるのに、犯人はもちろんのこと、その犯行状況さえつかめない不可解な事件に対し、ついにウルトラ警備隊が乗り出したところから物語は始まります。
「なろう系」だった第一話のモロボシ・ダン
ポインターでパトロールするウルトラ警備隊員たちの前に謎の青年が現れ「この先は危険だから行ってはいけない」と彼らを制止する。
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この青年がモロボシ・ダンなわけですが、警戒地点とはいえ、”まだ何も起きていないのに” 自信満々で警告する態度が隊員たちの気に触ったのか、案の定ひと悶着起きます。
ちなみにこの回のモロボシ・ダンは「なろう系」の主人公のごとく、何もかもお見通しなセリフを吐きまくります。
たとえば、眼の前にいるフルハシなど隊員たちの名前はもちろん、そのキャラクターまでスラスラと諳んじてみせたり、なぜか敵のやり口まで解説してみせる。
敵を知り己を知れば百戦危うからず
クール星人が本気になった理由は、標本用として地球人をさらう行為に対し、ウルトラ警備隊が乗り出してきたからということです。
つまり、隊員たちは敵側から「地球防衛の切り札」と認識される存在であることが推測されます。
ということは当然そのメンバー構成や、各人の能力などの情報は絶対に部外秘で、決して外へ漏らせないのがセオリーだと思うけれど、なぜかそれを知悉している謎の青年。
誰なのかを訊ねても「モロボシ・ダンとでもしておきましょう」と、曖昧な回答しかしない。
彼の話が本当なら、人間消失現場はすぐそばだということになります。
にも拘らずこの余裕あふれる態度は、どう考えても敵側の人間としか思えないのですが、なぜか誰もそこを突っ込まない。
こんなときフルハシ隊員ならばたとえば、
「やい!さてはお前が犯人の手先だな。観念しろ!基地へ連れ帰って洗いざらい吐かせてやるからな!」
と、現在ではほぼ使われることがなさそうな「やい!」から始まる昭和感たっぷりのセリフが飛び出してもおかしく有りません。(昭和42年作品)
「フルハシがウルトラ警備隊いちの力持ち」ということまで知り尽くしている怪しいやつとなれば、当然のことと言えるでしょう。
重い病の少年に勇気を与える 王選手 モロボシ・ダン
ただし第38話『勇気ある戦い』では、入院中の少年が「ダンが来てくれたら、ボク、手術を受ける!」と駄々をこねてモロボシ・ダンを来室させるシーンがあります。
ダンがまるで王選手のような扱いになっていることが明らかですので、ウルトラ警備隊メンバーがいかにメジャーな存在なのかは劇中で明らかにされています。
どうやら、一般人が隊員情報を詳しく知っていることは、べつだん不自然なことではないらしい。
だいたい、あのユニフォームでポインター乗り回してたら目立つし・・
それでもアマギ隊員なら、アマギ隊員ならきっと何とかしてくれる
話を戻しますが、止めたポインターの横で押し問答しているダンたちの横を、警察車両が通っていきます。
当然ダンは警官たちを止めようとするのですが、ウルトラ警備隊でさえ止まっているというのに、なぜか彼らはゴリ押しで通り、謎の攻撃を受けて消失してしまう。
ここに少し違和感があります。
モロボシ・ダンが、パトカーの制止にはさほどの熱意を見せなかったにも拘らず、ポインターだけは絶対止めるマンになった理由として私が想像しているのは、相対峙していたウルトラ警備隊の顔ぶれによるもの、ということです。
このときに出動していたのはフルハシ隊員とソガ隊員。
もしもこの場にアマギ隊員がいたならば、ダンは逆に、パトカーは絶対にストップさせ、むしろポインターのほうを素通りさせていた気がする。
ウルトラセブン最終回の有名なダンのセリフを覚えている方も多いでしょう。
珍しくBGMにクラシック曲が使われた「見せ場シーン」
満身創痍の状態で戦いに赴こうとするダン。
ダンの身を案じるアンヌはそれを止めようとする。
しかし
「アマギ隊員がピンチなんだ」
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そう言ってアンヌの制止を振り切ったダンは、彼女の眼の前でセブンに変身する
感動的なシーン、そして心に残るセリフ。
そこにしっかり名前出ししているアマギ隊員。
彼の「ピンチに陥る力」はじつに手堅い。
安定感は抜群だ。
もしも彼がこのとき同行していれば、ダンの脳内ではきっと・・
そう、アマギ隊員だ!
ピンチになることに定評のあるアマギ隊員をクール星人に!!(いったん引き渡そう!)
最終回でゴース星人に捕まった以外にも、ゴドラ星人の巣と化したマックス号に乗せられるわ松坂慶子に襲われて操られるわ、空間Xで迷子になるわ・・と、とてもウルトラ警備隊の精鋭とは思えない頼りなさで描かれることの多いアマギ隊員。
「ぼくが地球を救う」でウッチャンが演じた足立友作に匹敵する弱々しさのわりに、どんなピンチからも スーパースターマン 不死鳥のように帰還するアマギ隊員。
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ウルトラ警備隊のことを知り尽くしていたモロボシ・ダンならとうぜんアマギ隊員の特質も頭に入っているでしょう。
そして、なんといってもこれは第1話。
視聴者の心をガッチリつかむ展開が必須ゆえ、見せ場を作っておきたい。
こんなときアマギ隊員なら・・・アマギ隊員ならきっと何とかしてくれる・・・!!
しかしウルトラセブン最大の見せ場『アマギ隊員のピンチ』が実現しないと知ったモロボシ・ダンは、すぐさま気持ちを切り替えます。
これはまだ第1話。流れはまた来る、と。
円盤を透明化しているクール星人に「色塗っちゃいましょう」と助言したうえで、決戦場へは一人で赴きます。
「ウルトラセブン」はテンポラリーネーム
ちなみに、第一話のこの時点では、地球上のだれひとりとして【恒点観測員340号】のことを知りません。
いや、【恒点観測員340号】は現在の地球人でも知っている人はきわめて少ないか・・。
ウルトラセブンの職務上の呼称なわけですが、クール星人襲来時においては、とにかく地球人のすべてがセブンを知らない。
ということは、セブンが等身大サイズで透明な宇宙人をなんぼやっつけてしまおうと、その活躍は誰も知り得ない。陰徳の積み放題です。
かくして、340号に変身してたった一人で円盤に乗り込み、出会い頭にクール星人を一刀両断してその場を去ったモロボシ・ダンは、見事にミッションを達成したのでした。