【感情会計】善意と悪意のバランスシート

善と悪の差し引き感情=幸福度

はじめての「杖選び」に役立った「ウィリアムズ・ルノーFW14B」のアクティブサスペンション

数年前、母のために購入した ”杖”

記録で確認すると2022年10月のことでした。

「りんごすとあ」という、日用品や介護品などを取り扱っているショップで見つけました。

 

年齢の割には足取りも軽く、調子よくスッスッと歩いていたのに、神経痛でそうもいかなくなったのがきっかけでした。

 

これまで家族で杖の使用者はなく、知り合いにすらいなかった私。

人生で初めて「杖」というものに対して、ゼロから向き合うことになりました。

 

 

選定条件

さて、どんなものを選べばよいのか?

自分用ではないだけに、よりいっそう手探り感が強まります。

 

単に「杖」というキーワードだけで探すと膨大な情報が出てくるので、この中から母に最適なものを見つけ出すのは私の双肩にかかっている。

 

①長さ

まずはやっぱりこれですね。

 

加齢による身長減の影響は大きく、【小柄な女性用】であることは必須条件です。

これは絞り込みの際に考えやすい要素です。

 

②重量

長さとともに、思いつきやすい条件です。

 

母は歳の割には握力が強い人ですが、「重いから気を付けて」と言いながら手渡されるものを受け取ったときの軽さから、自分の基準のかなり手前で重さ判定をすべきと考えました。

③自立式

ここから先は、人によって条件は様々でしょう。

 

介助者が居ると居ないとでは、求める杖のタイプは大きく異なると思いますが、我が家の場合は基本的に母が自分で動くので、できるだけ本人の行動をスポイルしない様式のものが一番のニーズになります。

 

たとえば買い物で財布を出す際、杖から手を離せないことが負担なのは容易に想像がつく。

 

「手間取っている間、相手を待たせてしまっている」という気持ちを強く持つタイプの人である場合は、杖を抱えながら別の行動を強いられる仕様はふさわしくない。母はそういうタイプです。

 

ならば、杖が自立してくれれば、手を離して別のことができるじゃないか・・。

ということで・・

先端に4本の足が付いている形状の杖をよく見かけますが、ああいうタイプがいいなあと考えました。

 

しかしこれは②(重量)の条件に抵触するな、とも考えました。

先端に付いた足の分だけ安定はするものの、その分重量はかさむ。

 

握った手から最も遠い部分が重いと、取り回しには相応の力が必要でしょう。

実際、私がこの杖のユーザーとして見かけるのは、圧倒的に男性が多い。

 

そして実際に使用している人の動きを見た印象は ”振り子”

 

重い先端をできるだけ負荷が少なく扱うには「振った勢い」を活用して前後に行き来させるのが有効だと思いますが、そのため意図的に ”振り子” のように動かしているのでしょう。

つまり、上手に使いこなせる人にとっては、あの杖の重量は思ったほどではないのかなという印象です。

そう考えると、結構「上級者向け」なのかもしれない・・

 

ということで

自立の利便性を得るためには、相応の握力とそこそこの巧緻性が必須。

あとはもちろん、重い杖を片手で扱いながら歩き続けられる腕力。

 

「初めて杖を使う」という心理的負担に上乗せされる条件としては難しいかなと判断し、③の「自立式」についてはいったんペンディングとしました。

 

④路面からのキックバック吸収

ここからは私のこだわり感が満載です。

 

実は私なりに「杖での歩行の際の、気づきづらい負担」として最も懸念していたのが、”杖を突いた際のキックバックによる握力調整” でした。

 

自分の体を杖に預ける一方、路面の傾きや凹凸のすべては、握りの部分で吸収しなければならない。

このとき主に使うのは握力で、常に握りを細かく調整しながらでないと、結局足がふらついたりする。

 

普通なら当たり前に「足」でさばいている ”着地の負担” が『手』にも課されるということですね。

ということでこの歩行動作は、想像以上に握力が消耗するというのが私の感覚です。

どの程度杖に自分の体重をかけるかは個人差がありますが、杖に頼った分に比例して、自らの握力で路面状況の悪さを贖わねばならない点は無視できません。

 

歩いている間、これがずっと続く。

 

これが想像以上の負担であることを、使っている当人すら気づかない可能性があるのも大きな問題です。

 

本当は手がツラいだけなのに「歩くのがツラい」と拡大解釈されるかもしれないということです。

 

そうなるとますます歩かなくなって外に出る習慣を手放し、状況が悪化してしまう危険をはらんでいる。

そんな厄介な物理条件です。

 

ちなみに③(自立式)の際にふれた「街でよく見かける四つ足の付いた杖」に抵抗を感じた理由には重さの問題もありますが、もうひとつ、地面に着地した際に二段階の衝撃となって握力を奪う原因になるというのもあります。

片側二本の足がまず斜めに「ガッ」と地面につき、一拍遅れて反対側二本の足が「ガンッ」と着地するあのアクション・・

 

いくら自立するからと言って「これが楽だよ」と母に渡す気にはなれなかった。

(購入前にこんなところまで考えるのは取り越し苦労かという気もありましたが)

 

ということで、③(自立式)はメリットはあるにしても重量に難がありそうなことと、この④(キックバック)に抵触するため、ここで難航しました。

 

最終的に選択した杖

そのときに私の目を引いたのは、こちらの杖です。

(以下、商品ページからところどころ切り抜きさせていただきます)


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アピールポイントはいくつもあるのですが、ちょっとユニークなものとしては、こんな機能がついています。

鍵を開けるときなど、手元が暗い場合はライトで照らすことができ、普段は折りたたんでおけます。

 

 

さらに、利用状況まで細かい配慮がなされている面白機能としてこんなものもある。

「よっこらしょ」と立ち上がる際、想像以上に頼りになる補助ハンドル。

椅子から立ち上がる時に、テーブルに両手をついて立ち上がるあの感じに近いです。

 

魔法の足首 ⇒ この機能に固有の名前が欲しい

上の写真のとおり、ライトとか補助ハンドルは確かに目を引くものですが、私がなによりも重視したのがこちら。

 

「足」が短くコンパクトに纏まっている。

かつ、ゴムで衝撃が抑えられるため柔らかい着地が可能。

これも4本足ですが、あのいかつさが無くて心理的な負担も少ない。

 

・・という点も確かに優れているのですが、私の購買決定に最も役立ったのは【足首】です。

 

「アクティブサスペンション」という捉え方

突然話が変わりますが、私が上の杖を見た瞬間に脳裏に描いたのは、1992年のF1レースを席巻したウィリアムズ・ルノーのマシン「FW14B」です。

 

前年のチャンピオン、アイルトン・セナと、彼が駆る最強マシンのマクラーレン・ホンダという、もはやチート級ともいえる組み合わせを散々に打ち負かしたのがウィリアムズのマシンでした。


エグゾト EXOTO 1/18 ウィリアムズ ルノー FW14B パトレーゼ

 

セナとマクラーレンという「チート級」が、このFW14Bの前には全く歯が立たない。

 

ウィリアムズの1stドライバーであるナイジェル・マンセルにはもちろん、2ndドライバーのリカルド・パトレーゼにも太刀打ちできない力の差は、メカニカル性能の差をそのまま表した姿でした。

 

前年のチャンピオンを置き去りにし、ワンサイドゲームに終止したこのシーズンのウィリアムズの強さを一言で言えと言われたら、私なら「アクティブサスペンション」と答えます。

 

「”リ” アクティブサスペンション」が安定歩行を促す

F1でのアクティブサスといえば、1987年にロータスチームが採用したものが話題になりました。


1/43 ロータス ホンダ F1 99T モナコGP アイルトン・セナ 1987 AYRTON SENNA ミニカー [並行輸入品]

 

その後の開発が思うように進まなかったせいか、この新たな試みは下火になりましたが、再びF1界の話題をさらったウィリアムズのアクティブサスは、ロータスのそれとは違ったようです。

 

ウィリアムズのアクティブサスは、完璧な事前プログラミングに沿った姿勢制御というよりも「路面の状況を認識し、その状況に応じてマシン姿勢を最適にする」というコンセプトだったようです。

 

ゆえに「これは『アクティブサス』ではなく『リアクティブサス』だ」などと言われたりしましたが、なんとなく人間的な、TPOに応じて対応を変えるような特徴を持っていたらしい。

 

そしてこの『リアクティブサスペンション』こそ、私が母のために求める杖の仕様でした。

 

「着地を担う手」を助ける仕様が素晴らしい

凹凸や傾斜面に触れた瞬間、先端の足部分とスティック部分を繋ぐ『足首』が作動して、常に4本の足で踏ん張りつつ、路面からの直接的なキックバックを吸収してくれる。

持ち手を握った手は、よほど荒れた道でもない限りは路面状況とは無関係に、一定の力加減とテンポを保てるので長く歩いても負担は少ない。

 

私は個人的に、杖に「頼っている」「すがっている」状態が続くと、それが心理的に固定化しやすいと考えているのですが、この杖の場合は「歩行が主で、杖はあくまでも ”補助” にすぎない」という考えに至りやすいという印象です。

 

実際に母は、この杖を使い始めた時点ではヨロヨロと足元もおぼつかない感じでしたが、現在では「一応ついている」ぐらいの軽々とした接地でしかなく、初期のあの感じは全くなくなっています。まさに「転ばぬ先の杖」といった予防的感覚。

定期的にトレーニングしていることとの相乗効果で、歩くことへのハードルが格段に下がっているなというのが、ここ数年の状況を見ての感想です。

 

ついでに言うと、この杖を使っている母以外の人を見たのはまだ一度しかなく、それが不思議です。良い製品なのに・・と。

 

また、母が時々話してくれますが、この杖を持っていると周囲の高齢者たちが最も関心を持つのは「補助ハンドル」だそうです。

「これいいねぇ~」と称賛される機会が多く、次に多いのがライトだそうです。

そういった、ちょっとした交流にも効果があるという点でも、この杖はおすすめです。

 

さすがに「この足首?みたいなとこが姿勢制御に利くねぇ〜。昔に見たウィリアムズのマシンを思い出したよ」なんていう老人はいないようです。

 

もしいたら私が話に行きたい(笑)

 

ということで、杖とウィリアムズ・ルノーFW14Bが、私の脳内で自然に結びついたお話でした。

 

杖の購入を検討されている方がいらしたら、ぜひこちらをご覧になってみてください。