戦いでは敵陣の中でも特に「最も弱い敵」に狙いを定め、まずは局地戦で彼我の陣営に「我が勝利」を誇示し、味方の士気を上げつつ敵の士気を挫くのが良いと言われます。
強力な先鋒部隊を目立つ出で立ちで演出した「赤備え」の武田信玄などは、それを効果的に使ったようですね。

一番の勝負どころをわきまえているからこそ、そこに最高の戦力を集中させることができ、いち早く局地戦を制しつつ、戦況全般をも支配してしまう。
その後は「すでに勝利している戦いの運営」です。
先鋒部隊に比して ”あまり強くない後続部隊” については、主としてここに使われるでしょう。
残敵掃討や占領地の鎮静など、戦果を広げたり確定したりする仕事です。
戦力に見合った負担としては、適切と言えるでしょう。
そんな、各自の個性を活かせる舞台を整えた大将こそ、【名将】と呼ばれるべきでしょう。
もちろん、勝っていてこそ与えられる称号ですが。
「勝つためのシステム」とは何だろう?
双方の陣容や戦闘の推移、地形や天候、時刻の推移による環境変化とそれに伴う士卒の心理・身体条件など、得られるすべての情報をもとに、考えうるすべてを前線の部隊(動体)の効果的な実力発揮に絞って戦いを総括する。
それには「具体的で明確な勝利像」が必須でしょう。
「最新兵器を投入したからあとは良きにはからえ」では、さすがの信玄もフロックでしか勝ちを得られない気がします。
それで、今回は「システム会社に開発プロジェクトのコーディネートを依頼する」としたケースについて、例によって私見ですが書いてみます。
「各自が抱く成功イメージ」に依存したらシステム開発は失敗する
システムの開発というのは、ユーザー側にとってはそれ自体が手柄(成果物)になるわけでもないから、あまり詳細で明確な勝利像がない。
「昨対実績で百〇〇%」とか「所要時間◯◯時間短縮」なんていうのは、基幹システムの改編という観点だとまるで具体性が無いものとなります。
目標数字を掲げるのは良いとして、それを実現するために現場がどう動くかをイメージできないのなら、それは何も考えがないのと一緒です。

要は「何がどう便利になるか?」がテキストベースのお題目でしか存在しないので、聞いただけでは現場のメンバーも、自分たちの作業にどう影響するのかが判然としない。
「システムが導入された実感」の最悪パターン
新システムが稼働してからしばらく経った頃、おもむろに前工程の変更による影響を受け、まるでバケツリレーのように、自部署にも作業内容の部分的変更が求められることがあります。
足並みが揃わないとはまさにこのことで、導入されて実際に動いてみてから「これまでのやり方じゃ上手くいかん!」と慌てた現場が急いでオペレーションの手直しをし、それが他の現場にも波及するという現象です。
各現場が次から次へと五月雨式に対応を強制され、それがまた次の震源地となって他部署に負荷をかける。
しかもそれがいつになったら治まるのか見当もつかない・・
これは現場にとってかなりの負担です。
「システムができたら却って忙しくなった」とか「システムのお守りが大変だ」なんて不満が生まれる要因は、これが大きいでしょう。
戦いの現場に無関心な人は「赤備え」の手柄にも無縁
上のほうにいる偉い人は、前線の些末な状況に疎い。
作業手順や、担当者の業務へのコミット具合などは、ほぼ気にしないでしょう。
しかし、市場との接点、言い換えれば顧客にとってのインターフェースが満足を引き出す装置になり得るかどうかは、信玄が赤備えを整備して前線に据えるような周到さが求められます。

基幹システムにそれを期待するのであれば、舵取りを任せるシステム会社に対し、全社的な姿勢が統一されているのが理想です。
開発期間はそこそこ長くなるのが普通ですから、最初に赤備えをぶつけて短期決戦・・という形にはできないので、あまり強くない部隊が関わるターンなど、多少の緩急は発生します。
そう考えると、それを掌握するプロジェクトマネージャーという役割がいかに重いかということは如実にわかります。手柄として誇っても良いことだと思います。
納得の行く成功さえさせてくれれば我々末端の作業員たちも惜しみなくスタンディングオベーションを贈ることでしょう。
・・あれ、軽い前置きのつもりが、思いがこもってつい長文に・・
いったん終わります。
<雑談は続く>








