『新撰組遺聞』
主に司馬遼太郎作品で培われた自らの新撰組知識が、小さく見えてしまう一冊です。
昭和3年のインタビューは、ダテじゃない。
新撰組隊士たちとじかに接した人の話は、さすがの司馬さんの取材力でも年代的に不可能です。
この作品に関して一筆書こうと思うのですが、今回はもうひとつの作品との意外なつながりについて、自分なりの見解を述べてみます。
ゲーム実況で知った『龍が如く』
『龍が如く5』
人気ゲームシリーズのナンバリング作品のひとつです。
私はいわゆる「極道モノ」という作品群が苦手なタチなので、普通なら素通りします。
ですが、『龍が如く維新』というスピンオフ作品を経由して、苦手な極道モノに辿り着きました。
といっても私はこのゲームのプレイ環境が無いので、自分がプレーするわけではありません。
ゲーム実況者『牛沢』さん(うっしー)の切り抜き動画で『維新』の存在を知った私は「幕末モノなら」と興味を持ち、ガッツリと視聴してみました。(#1~#55にわたり、1本が30分前後のゲーム実況集)
#1の動画の最後にうっしーは ”先に本編を知っておきたい人用の説明” をしてくれていて、その中で「なにも知らずにこの動画を見た人は、そんなに居ないと思うけど」というフレーズがあるのですが、私はまさにその「何も知らずに『龍が如く維新』を見た視聴者」です。
この作品は直前に『龍が如く5』のリリースがあったらしく、同じ顔グラの登場人物が多数登場しているとのことで、そのつながりで次に見たのがこちらの作品だった。
そしてこの『龍が如く5』と、冒頭で挙げた『新撰組遺聞』との間に、私が勝手に考えた共通点があり、独り静かに笑いをかみしめています。
(賛同者は見つけられそうにないので・・)
沖田総司と桐生さんのヒートアクション
『新撰組遺聞』は、物語ではありません。
作者の子母澤寛さんが昭和3年に実施した ”新撰組と関わったことのある老人” へのインタビューをまとめた聞き書きとなるものです。
つまり、個人視点の断片情報であることが多く、物語構成がほぼ無いのはもちろん「エピソード」という表現もちょっとそぐわない。
しかし、だからこそのリアリティに満ち溢れている傑作です。
勝海舟が送り込んだ新撰組隊士
この本は『象山の忰』という一章から始まっています。
河上彦斎に暗殺された佐久間象山の息子である三浦啓之助が、勝海舟の紹介状を持って近藤勇の元を訪れ「父の仇を討ちたいから新撰組に置いてくれ」と転がり込んでくるところから始まります。

佐久間象山と言えば幕末の教育者として有名であり、その息子が勝海舟の紹介状を添えてやって来たと言えば、相当なプレミアム付きの案件です。
そして「父の仇を討つ」などの武張った話とくれば、近藤勇にはこれを断る理由がない。
こうして、まだわずか十六、七才の若者を引き取ったばかりか、そのプレミアムぶりを尊重して一定の隊務にも就かせず、かなりの自由を許した。
経緯が経緯だけに隊の幹部たちも彼を丁寧に扱い、殊に学者を以て鳴る参謀の伊藤甲子太郎が啓之助に見せる好意は甚だしかった。
まだ世間の苦労も知らぬ若造が、身分のある大人たちにチヤホヤされまくると、幼少からよほどの教育を受けたのでもないかぎり、増上慢は避けられない。
啓之助もその落とし穴にハマり、言ってみれば「象山先生のバカ息子」という評判を取り始める。
態度のデカいドラ息子にはこうやってわからせてやる!
啓之助はある時、以前に口論でやり込められた相手との刃傷沙汰を起こし、その様子を見ていた古川清吉さんという人が居たそうです。
古川さんは当時の新選組屯所の向かいに住んでいて、時々呼び出されて屯所の掃除など雑用を申し付けられていたらしく、子母澤さんはこの人へのインタビューを元に、その刃傷沙汰の一件を書いています。
三浦啓之助を口喧嘩でやり込めた大阪浪人の何某という者は、そのとき土方歳三と沖田総司が囲碁を打っているのを傍から見物していたのですが、啓之助は卑劣にもその背中から抜き打ちに刀を振ったとのことです。
背後から斬り付けられた何某がワッと驚いて横に倒れると、啓之助のほうも腰が定まらず、そのまま前によろめく。
この事態に土方も沖田も激怒して、とっさに沖田が啓之助の体を押さえて突き飛ばし「この馬鹿者!」とうつぶせに倒れた啓之助の襟首を上からグイと押さえつけ、そのまま畳に擦り付け回したそうです。
鼻頭をさんざん畳に擦られた啓之助は、顔のあちこちが真っ赤にすり剝けてしまったということです。
牛沢さんの実況動画から画面を拝借すると、つまりこの桐生さんと同じ戦闘時のヒートアクションを、あの沖田総司が佐久間象山の息子に食らわせた、という想像が成立するわけです。


⇩の動画の2分30秒前後のところで展開されていますので、是非うっしーの名調子とともに『新撰組遺聞』で古川清吉さんが語った沖田の姿を想像して頂きたいです。
ちなみに『龍が如く維新』だと沖田総司は真島さんの役どころなので、この攻撃を真島さんがやっていると考えると、龍が如くファンなら膝を打って納得するかもしれません。
なお、牛沢さんは『龍が如くシリーズ』の実況に定評があり『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』では劇中に本人が登場するほどなので、SEGAも認めるほどゲームへの愛やそのシンクロ度が高いということなのでしょう。
私は2作しか見てないですが、維新の実況のほうは何周したかわからないほど繰り返し視聴しています。
『新撰組遺聞』については他にも書きたいことがあるのですが、予想外のところで『龍が如く』とつながったのが面白く、今回はそのトピックだけにふれてみました。







