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【新選組遺聞】新見錦?居たかな?そんな局長

前に書いた「新選組初代局長の新見錦(にいみにしき)について、気になることがある」に関するお話です。

(こちら⇩⇩の記事内で少しだけ触れています)

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あまり目立たない存在ですが、新見錦といえば、筆頭局長である芹沢鴨の同郷の同士だった人物です。

 

つまり、新選組結成時の局長3人体制において「芹沢派 2、近藤派 1」という象徴的人事の一端を担った重要人物。

 

隊の中ではトップの地位にありながらも、最後は副長の土方によって切腹に追い込まれる数奇な運命の持ち主でもあります。

なんと言ってもあの強烈キャラ・芹沢鴨の腹心であり、しかもその芹沢が健在とあれば、彼の立場は盤石なものに思える。

 

むざむざと土方にやられてしまうのが、不思議でなりません。

 

ですが『燃えよ剣』という ”土方歳三物語” では、そのあたりの出来事がドラマチックに描かれ、初めて読んだときにはこの問題から完全に目をそらされてしまった。


燃えよ剣(上)

だから時を経た今こそ、疑念を形にしてみることにしましょう。

 

 

やたらと「派閥抗争イメージ」を当てはめたくなる状況

壬生の八木源之丞宅を宿とした、後に新選組幹部となる13名。

近藤一派の8人に対し、芹沢一派はわずか5人。

 

とはいえ、トップである局長職は完全に芹沢系が優勢で、近藤系は近藤勇だけ。

それに対し芹沢系からは、芹沢鴨と新見錦の2名が就任します。

 

かりに局長決定が多数決で決まるなら、明らかに芹沢の意思が通りやすい。

近藤系がこれに対抗するなら、なにか別な手段が必須・・

もうこのあたりで私の脳裏には「派閥抗争」の4文字が強烈に息づいています。

 

そして『燃えよ剣』は、後の伊東甲子太郎加入時もそうですが、完全にこういうバイアスがかかった状態で読んでいくことになる。

 

「陣取り合戦」でよりいっそう高まる派閥感

新見錦は、芹沢派の中では、芹沢自身を除けばトップの地位を得ました。

このことから芹沢とはよほど昵懇であったと、私は解釈しています。

 

新選組は、芹沢が持つ会津藩とのコネが、その成立に影響を与えたと言われます。

少数派ながら局長を二人も輩出したのは、そのおかげな気がする。

 

局長職では芹沢派が近藤派を圧倒しますが、それに次ぐ副長職は、近藤系の土方歳三と山南敬助が独占します。

 

つまり、芹沢系の平山五郎や平間重助には、副長のポジションを渡していない。

この陣容からは、やはり権力の分け合い(牽制)があった様子がうかがえる。

副長の下には「副長助勤」という幹部職があり、ここには局長/副長に就かなかった両派のメンバーがまとまって存在している。

 

となると、やはり両派による高位職の奪い合いを想像してしまうのです。

これは「派閥抗争」という概念に慣らされてしまった現代人の思い込みなのでしょうか?

 

決を取らずに局長の切腹を断行した土方?

どう考えてもトップの意思決定では芹沢派のふたりが結託し、全体的に芹沢色が強い状況だったのではと思われるのですが、こういうのは後世の我々の決めつけなのでしょうか?

 

芹沢はよく料亭などに行き、気に入らぬことがあると狼藉を働いたという話が知られています。

『燃えよ剣』でもそのことが描かれており、そのくだりを読んでいると、酒席での光景が脳裏に浮かんできます。

 

床の間を背にしてふんぞり返る芹沢と、当然のようにその隣に居並ぶ新見の姿。

「新見錦は芹沢鴨の片腕である」という思い込みは、もはやセットになっているからです。

 

もっとも新見の粛清について言えば、仮にその可否を決める局長合議があったとしても、新見当人が決に加わることには無理がある。

 

なんにせよ、権力者の非違を言い立てて処断する行為ですから神経を使います。

そのあたり、どうやって事を運んだのでしょう。

 

ちなみに『燃えよ剣』では土方の「組織に対する勁烈な思い入れ」が色濃く描かれているので、新選組内の組織力学においては、とにかく土方の感情の起伏が激しい。

 

作中最強のモノは天然理心流でもなければ薩長の新式兵器でもなく、ただただ「土方さんのお気持ち」であり、損得や社会通念はその足元にも及ばないのが『燃えよ剣』の特徴です。

 

土方さんが「新選組のトップに近藤を置くため、まず最初に新見を粛清すべき」と思うなら、読者を含めて皆がそのお気持ちに従うのが唯一の決め事なのでしょう。

 

隊内の大物である新見錦もこの決定に逆らうことはできないし、さしもの芹沢も反論できない司馬的世界線で事は進む。(もちろん読者も)

 

とはいえ芹沢は、単に役職が高いだけでなく、剣の腕も冴えています。

 

人を人とも思わぬ暴虐を何度もしてきた男ですから、仲間をかばうための豪快かつ鋭い一閃を、土方めがけて放たないとも限らない。

 

新見の剣の腕前は不明ですが、仮に並み程度だったとしても、いわば凄腕の用心棒が背後に控えているようなものです。

 

ということはやはり、政治的にも、そして物理的にも、新見が一挙に切腹に追い込まれるのは、どうにも唐突すぎる気がする。

う〜ん・・どういうことだ?

<続く>