日清戦争終了後、まだ若い現役の少佐参謀でありながら、海軍大学校で戦術教官を務めた秋山真之。
その秋山教官いわく、海軍戦闘力は ①攻撃力 ②防御力 ③運動力 ④通信力 で構成されるということを前回軽く説明しました。
今回はその続きです。
持ち点の配分センス
真之さんは、海軍戦闘力の四要素を均等配分せず、リソースを割く比率を以下のように説明します。
攻撃力:5
防御力:3
運動力:1
通信力:1
これがいわば「秋山戦術におけるパラメータの振り方」です。
・・どうしてもゲームを連想してしまうなぁ。
「こうげき5」「ぼうぎょ3」「すばやさ1」「かしこさ1」みたいな・・
戦士タイプのキャラですね。
艦種別に特長は様々ですが、総じて ”ぐんかん” だからこれでいいのでしょうね。
「こうげきりょく」の概念を具体化する
私のブログではパラメータ値5の「攻撃力」を採りあげるのですが、真之さんは攻撃力の構成を以下のように表しています。
機力:炮煩、水雷、衝角
術力:砲術、水雷術、衝突術
非常にシンプルですね。
砲熕(ほうこう)とは、大砲や火砲の総称ということらしい。
水雷とは、魚雷や機雷など水中での爆発効果を有する兵器のようです。
そんな中「衝角」と「衝突術」という単語に、軽い違和感をおぼえます。
衝角とは船首の水線下で前方に突出した文字どおりの「つの」であり、敵艦に自艦をぶち当てた際に水面下で相手の船底を破壊する船体の構造です。
⇩Wikipedia「衝角」の項に掲載されている写真です

いわば「超強力な前蹴り」を入れるような物理効果であり、この行為に「爆発」という化学現象は存在しない。
道具も使わない。
ただ己の身体のみで敵を倒すという典型的な肉弾攻撃です。
衝角による攻撃は敵との接触が必須条件のため、戦闘時には互いの艦が動き回る中で、敵を上回る運動が求められる。
となれば速度が重要なはずなので、大鑑を作る能力が増した近代の戦いの中だと、これを積極的に運用したのは、比較的身軽な艦であることが多かったのではないかと思います。
それゆえ、運動力のパラメータが高かったのではないかと思われます。
船で「蹴り」を入れる? 〜衝角って何なのだ?
以下は、私のシロウト考えの連発になります。
軍艦に詳しい方から見れば「何言ってんだコイツ」と呆れると思いますが、あくまでもシロウトの戯言ですのでまあお許しください・・
実のところ私は「艦同士の戦いで『体当たり戦法』なんてあるのか?」と思っていました。
こっちだって壊れちゃうじゃないか、と。

仮に敵を沈めるのに成功したとしても、こちらがダメージを受けて浸水してしまったら、その時点で戦線離脱です。
そんな漠然とした考えがあったため、当初私は衝角の形状を、かなり大掛かりな鎌みたいなものでイメージしていました。

というのは、船体そのものの損傷を避けるには衝角部分がかなりデカくないと、衝撃を受け止める効果が薄くなると考えたからです。
「接触=衝突」を避けるには、できるだけ「接触=刺突」となるように持って行きたい。
つまり、接触の大部分は衝角のみが担当し、自身の身体が敵艦に触れる前に衝突の衝撃が緩和していれば、次の攻撃が可能なコンディションを保ったまま敵を沈められるのでは?
それゆえ私のイメージでは、攻撃が決まった時の姿は「長刀による抱き刺し」
つまり、一度使ったら敵艦を振り解くのが困難なのでは?と、勝手に思っていた。
ですが、よく考えれば船底に穴が開けばよいだけなので、私の想像よりも遥かに「短刀」でよいことになる。

船体に衝突のダメージは負ってしまうでしょうが、私が考えている珍妙な形で敵艦と絡み合ったままということはないので、そのまま離脱して別の敵艦を求めることができたでしょう。
むしろ戦域で敵を串刺したまま、しばらく動けない時間が生じるほうが、よほど危険な気もします。
無謀な「蹴り」の効用
上にも書きましたが、こちらだって壊れて浸水したら一巻の終わりなはずなのに、ずいぶんと乱暴な戦い方をしたとも思えます。
しかし、砲弾の威力や精度に課題が多かった前時代的な戦いでは、”自艦そのものが弾となる” はむしろ確実な攻撃方法になることもあったようです。
「蹴り」も有効だったということですね。

とはいえ、砲弾や爆発物、およびその運用方法の進歩によって衝角は無効になっていったらしく、日露戦争では専ら砲や水雷で勝負がついたようです。
というわけで、炮煩と水雷に並ぶトップ3の一角を締めた衝角ですが、真之さんが講義の際に「衝角と衝突術」に割く時間はあっという間に下がり、やがてはゼロになっていったのでしょうね。
そう考えると「衝角」と「衝突術」が講義で説明されていた記録が残っているのは面白い。実質本位の教育ゆえ、アップデートで消え去っていてもおかしくないですから。
『秋山真之戦術論集』あるいは『海軍基本戦術』、色々と想像できて面白い本です。
<続く>







