【感情会計】善意と悪意のバランスシート

善と悪の差し引き感情=幸福度

ライオンハートを持つ男

ふと思いついたので、ナイジェル・マンセルのことを綴ってみることにします。

 

そこそこ古い時代のF1の話題になるので、好きな方だけお付き合いいただければと思います。

 

 

「セナに対する立ち位置」で認識したドライバーたち

F1グランプリが日本で放映され始めた1987年から、日本人の間でも大いに盛り上がったF1熱。

当時、アイルトン・セナと並び称されるドライバーが何人か居ました。

 

誰を挙げるかは人によって様々なチョイスがあると思いますが、私が最初に買ったF1関連ビデオが『スーパーバトルヒストリー セナvsプロストvsマンセル』というパッケージだったので、私はアラン・プロストとナイジェル・マンセルを挙げたいと思います。


スーパー・バトル・ヒストリー セナVSプロストVSマンセル [VHS]

 

ちなみにですがあるF1雑誌に、セナが亡くなった1994年シーズン終了時点の歴代優勝回数ベスト20が掲載されていて、トップがプロストの51勝、2位がセナの41勝、3位がマンセルの31勝だったので、私のチョイスにも一定の説得力はあると思っています。

 

そしてついでの話ですが、この94年終了時点の優勝回数ベスト20で、5位は21勝のネルソン・ピケです。

 

つまり、サーキット上で直接バトルした同時代人の4名がベスト5を占めた中で、4位がジャッキー・スチュワート(27勝)なのが、ひときわ異彩を放っていました。


ウィークエンド・チャンピオン ~モンテカルロ1971~(字幕版)

スチュワートの現役期間は1965年〜1973年ですので、プロストとマンセルがデビューした1980年よりも、さらに前世代の人です。

 

にもかかわらず、80〜90年代のトップドライバーに混ざって好成績を保ち続けていることに違和感と驚きを感じ、未だに記憶に留まっています。

 

「プロフェッサー」と「荒法師」

・・というわけで、セナの好敵手として名高いプロストとマンセル。

二人ともセナより年上で、F1ドライバーとしても先輩にあたります。

簡単に紹介しましょう。

 

計算し尽くされた冷徹なドライビングに定評があり ”プロフェッサー” と評されたアラン・プロスト。


勝利へのプログラム

1988年にセナがマクラーレンに移籍してふたりがチームメイトになった際、どちらかを指して ”セカンドドライバー” とは公称しづらいチームがひねり出した「ジョイントナンバーワン」とか、翌89年サンマリノでの「紳士協定は破られた」など、二人に関する象徴的なフレーズは多いですが、概して「プロストは賢い(油断ならない)」といったイメージで統一されています。

 

一方のナイジェル・マンセルは、プロストとの対比演出もあったのかもしれませんが、とにかく「やらかし」が強調された人物です。


走ってない奴は黙ってろ!: 燃える男マンセルの セナ・プロ、フェラ-リ…熱く激しいF1バトル全真実! (別冊ベストカー 赤バッジシリーズ 94)

「プッツン」という表現を知る当時のファンは多いと思いますし、87年鈴鹿の予選での「自爆によるチャンピオン逸失」、92年カナダでの「ファイナルラップでメインスイッチを切って優勝逸失」のほか、セナとの絡みでは89年の「黒旗無視事件」で怒った方もかなり居たでしょう。

 

日本で著作のあるマンセル

1991年の『走ってない奴は黙ってろ!』と1993年の『N・マンセルのあばよ!F1』を覚えている方は居ますでしょうか。


N・マンセルのあばよF1: これを語らずにF1マシンは降りられない すべて話そう、優勝、ライバル、インディへ (別冊ベストカー 赤バッジシリーズ 129)

そもそも私がこの記事を書こうと思ったきっかけは、この2冊のタイトルが不意に頭をよぎったからです。

 

村山文夫さんの『F1グランプリ天国』というマンガの中で描かれるマンセルは、思い切りプッツン方面に振り切っているため、その延長で考えれば ”著述という行為に最も遠い男” なわけですが、そんな彼の本が立て続けに2冊も刊行されている実績はあるのです。


F1グランプリ天国(2) (漫画アクション)

ある意味「愛されキャラ」としては、セナやプロストを凌駕した存在なのかもしれません。

 

今宮さんが舌を巻いたマンセルの好判断と凄絶なテクニック

しかし、F1でトップクラスに上り詰めるくらいですから、少なくともレース勘や駆け引きに長けていたのは間違いないわけで、たしか今宮純さんの本だったと思いますが、マンセルの実力の片鱗を語ったエピソードがありました。

 

記憶が定かではないけれど、状況から考えて恐らく1989年シーズン。

あるレースの序盤でマクラーレンの2台を追っているマンセルが、異様なフラフラ走行を見せる。

 

今宮さんの周辺に居たプレスが「ナイジェルががまたおかしなことを始めたぞ!」と言い始め、皮肉な目で見守る中、マンセルはなんと雨上がりのコース内に残っている水たまりに、自ら突っ込んでいく。

 

ドライコンディションのコース内に点在する水たまりを踏むと摩擦係数にイレギュラーが生じ、スピンの危険もあるのでドライバーなら絶対避けるべきということは、少しでもレースを知っている人なら常識的に分かっている。

サーキットに出入りするプレスたちには当然その認識があり、わざわざ危険なことをするマンセルを見て笑い出す人も居たそうです。

 

今宮さんは序盤のこの走行が気になったらしくレース後に聞いてみると、マンセルの答えは実に頭脳的であり、レーシングドライバーとしての実力を強く感じるものであった・・と。

 

「思い切り」と「確かな実力」がなければできない高難易度のドライビング

マンセルが言うには「ここでマクラーレンに離されたら、レースは開始早々で勝敗が決してしまう。なんとか喰らいついてプレッシャーを掛け続けなければ」ということで、多少の無理を覚悟した。

 

しかし、マクラーレンのマシンに対抗するのはやはり困難で、レコードラインをドライビングし続けるとタイヤに負荷がかかりすぎてしまう。

そこで、可能な限りタイヤが行きたい方向へ行かせてやり、限界を超える寸前に調整するということを繰り返した・・

 

今宮さんは「なるほどそれがあの『フラフラ走行』の理由か」と納得したと言います。

 

更にマンセルが言うには「それでもタイヤへの負荷が強く、過剰に熱が発生してバーストが起きかねない」

となれば、さしあたって最も確実に冷却ができるのは「コース上に存在する水」を使うことだった・・

急激なミューの変化による挙動の乱れは織り込み済みで、その対応テクニックを自身が引き受ける計算のもとに、水たまりに突っ込んでいった・・

今宮さんは感嘆したそうです。

 

エンツォ・フェラーリが息子のように愛した伝説のドライバー、ジル・ビルヌーブは、凄絶な状況になればなるほどドライビングに凄みを増したことで有名ですが、そのエンツォ・フェラーリから「君の走りを見るとジルを思い出すよ」と評されたのが、若き日のナイジェル・マンセル。

 

私はかっこいいと思いますね。

愛妻家で子煩悩なところも好きです。