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『重版出来!』の主役は難易度が高そう

しばらく前に見て気に入ったドラマのひとつに、黒木華さん主演の『重版出来!』があります。

 

元柔道日本代表候補が漫画誌の編集部員として、様々な個性の連載漫画家や、様々な事情を抱えた新人漫画家、ヒット漫画の裏に息づく書店員、そして社内の人間関係にもまれながら成長していく様子を描いたコミックをドラマ化した作品です。

 

ネットでは評価に随分と温度差があり、視聴率で判断すると低評価、ドラマ自体の仕上がりでは高評価といった印象があります。

 

「群像劇の造りになっていてで主人公からスポットが外れることが多く、特定のキャラクターに感情移入しづらい」という意見が強いようで、他にも「主人公が優等生すぎる」「その回メインのキャラが活躍する一方、主人公が何もしていない」といったことが言われているようです。

 

このドラマの主人公は、数名の女優さんが断った末に黒木さんに決定したそうですが、上述のように主人公の存在感に揺らぎが多く、事務所や女優の意向が、“常にスポットで照らされている主人公”であることが出演条件だとすれば、その希望には合致しない作品であり、台本を読んだ時点でNGになることは何となく察しがつきます。

 

また、一話ごとに他のキャラクターが強くなる中、最後まで主人公として立ち位置をキープしなければならない難しさについても、台本を読んだ時点で想定できることです。

 

すると必然的に、『黒沢心を演じることの難しさ』という壁を乗り越えることが要求されます。

 

黒木さんは、それをクリアできたからこそ主役を引き受けた、と考えると、彼女の力量を推し量る要因になる気がします。

 

また、毎回変わってしまう重要キャラクターに埋もれてしまわないよう、主人公の魅せ方に多彩なアクセントをつける演出も必須だったはずで、これを失敗すると主人公の存在がとってつけたような不自然さになるおそれがあり、そう考えると「何もしていない」というキツイ評価は、「その場にいること自体には不自然さがない」という肯定とも言えます。

 

群像劇がブツ切れのオムニバスにならないためにはしっかりした芯が一本通っていなければならず、出過ぎず引き過ぎずの主人公を演じた黒木さんは、視聴率的には目立たないながらも質の高い仕事をされたのではないでしょうか。