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名作「竜馬がゆく」で一番つまらなかったシーン

最初にお断りしておきますが、私は司馬遼太郎さんの作品が大好きです。

だから、けなすために書くわけではないということを明確にしておきます。

 

竜馬がゆく」を読んだのは20代半ば過ぎのころで、私の司馬作品没頭状態がピークの頃でした。

常に文庫本を持ち歩き、とにかく時間があればカバンから引っ張り出して、貪るように読んでいました。

 

1ページ読むごとに血が沸き立ち、毎日霞が関から終電で帰宅する毎日にあってもその読書熱は全く冷めず、時に読みながら寝落ちしてひっくり返り、コンクリの壁に後頭部を打ち付けた衝撃で目を覚まし、なおも続きを読むというほどハマりにハマりました。

 

8巻まで読み終わるや否や本棚から1巻を抜き出して再読を開始し、そのまま8巻まで読み切るとすぐさま1巻に、というループを何度も繰り返していたので、いくら読書好きの私でも「さすがにこれは異常だ」と思わざるを得ないほどでした。

 

という熱狂ぶりを披露したうえで『最もつまらなかったシーン』を挙げます。

 

それは、4巻最後の部分で、神戸海軍塾にいる竜馬のもとに、彼を追ってやってきた竜馬の伴侶とされる「お竜」と、竜馬の故郷土佐で坂本家の上司筋にあたる福岡家の「お田鶴さま」、そして別々にやってきた二人が宿にした家の使用人「さち」という3人の関わり合いのシーンです。

 

さちは、お田鶴さまには好意を抱いているため、実は彼女自身が日ごろ接している竜馬に秘かに思いを寄せているにもかかわらず、なんとかお田鶴さまの役に立とうとするのですが、お竜のことは快く思えず、軽い諍いを起こします。

 

3人のおんなたちの気持ちの絡み合いと、竜馬への気持ちに揺れる女心。

おまけに竜馬がこのシーンに全く登場しないことで、物語的にはこの間、舞台照明はずっと彼女たちを照らしている状況です。

 

なぜか私はこのシーンを読んで、気持ちが落ち込むほど退屈でたまらなかったことを鮮明に覚えています。

出張先の稚内のビジネスホテルの一室。最北端の冬の夜のことでした。

いまならそんな退屈な場面は、間違いなく読み飛ばしてしまいますが、当時は真面目に全文を読もうとしていたのでとにかく苦痛だった。

 

私が読んだ司馬作品全般において共通している特徴的な感想は、女性を主体にした場面には魅力を感じない、というものです。

そもそも、そういう場面がほとんど記憶に残っていない。

 

司馬さんといえばやはり、「漢(おとこ)を描く」とか「時代を描く」という具合に私の頭にはインプットされているのでしょうか。

しかし、「竜馬がゆく」の中でも、竜馬が学んだ北辰一刀流千葉道場の長女・千葉さな子は活写されている感じがして感情移入もしやすかった。

 

どのみちあのシーンは司馬さんの創作ですから、それならいっそのことさな子も神戸へ行ったことにして、おんな4人を鉢合わせたら、と考えると、少しは楽しめそうな気もするのですが……。