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井上靖「北の海」の味

食風景の気に入ったシーンの簡単な感想を書いていきます。


北の海 (新潮文庫 い 7-26)

 

井上靖、自伝的小説3部作のラスト、旧制中学卒業後の数ヶ月を描いた作品です。

 

前回のブログで、その1作前の「夏草冬濤」の朝食シーンのことを書きましたが、その3年後の話です。

 

志望校である第四高等学校の下見のため金沢へやってきた洪作少年。

沼津に勧誘に来た柔道部の選手に憧れ、中学に引き続いて高校でも柔道をしようと決意します。

 

来年入学できたら上級生になる柔道部員の下宿先に居候し、初日の朝食のシーンです。

 

「味噌汁を二杯飲み、卵を二個割り、ご飯を三杯食べた。 卵は卓の上に二個出ていたので二個割ったのであるが、一個は杉戸の分であることが後でわかった」 とあります。

 

なぜわざわざこの一文があったのかと思うほどの平凡な記述です。

この作品にはこれが実に多い(リアリティがあり私は大好きです)。

 

少し後のシーンで、先輩の杉戸君が目を覚まし、下宿のおばさんに 「今日は卵ですか、海苔ですか」と聞いているくだりが登場しますが、要は卵か海苔かの違いだけで、朝食はこんなものだということです。

 

朝9時に朝食を食べた洪作は、昼ごはんが必要でしょうが、杉戸君が朝ごはんの卓についたのは11時を過ぎています。

 

夏休み中の話なので、午後には夏稽古のため学校へ行きます。

 

ひょっとしたら杉戸君は朝昼兼用でおかずも昼用のものを食べて間に合わせたのでしょうか。

昼ごはんのメニューが出てこないのが残念です。