【感情会計】善意と悪意のバランスシート

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(10)〜柘植久慶【逆撃】シリーズから『武田家3部作』

主人公の御厨太郎が主張するように、川中島での啄木鳥戦法は愚案です。

 

現代から戦国時代にタイムスリップした彼は、歴史モノを得意とする作家であり、作品に深みを持たせるために現地へ赴いてつぶさに歩き回っています。

 

それも、ただ歩き回るだけでは飽き足らず、同じ季節の同じ時刻に合わせ、気候や明暗など五感から得られる情報がどうだったかまでを詳細に探求しています。

 

このことは、作者の柘植久慶さんが海外で傭兵として戦場に立っていた経験から体得した独自の感覚らしく、同じ地点でも季節と時刻が異なれば環境としては全くの別物で、軍事行動は完全に異なる展開になるとしなければならないとの考えに基づきます。

 

その御厨が軍議の席で主張した最善の策は、妻女山に陣を構える上杉謙信の本体と対峙することではありません。

なぜか謙信が離れた場所に残したままにした、大荷駄(兵站)隊を攻撃することです。

 

兵站部隊を遠くにおいて補給を断ったまま山上に陣を構えて敵と対峙するなど、もしそれを馬謖がやったなら、諸葛孔明が泣きながら斬りに来るおろかな戦い方です。

 

ただし、上杉謙信は神がかったように強い武将であり、その独裁性は麾下の精兵を敏速に動かせる力を持っています。

 

おまけに、大荷駄隊には護衛の兵3千をつけているので、慎重な武田信玄が警戒しながらそちらへ向かうようなら、すぐさま全軍を下山させての挟撃も可能。

 

武田軍が2万といえど、上杉の精兵3千で迎え撃てば、寸刻は持ちこたえるであろう。

自分の本隊が到着するくらいまでは支えきるはずだという読みもあったでしょう。

 

こういっては何だが、大荷駄隊をオトリとして主力決戦に持ち込めれば、今度こそ信玄を打ち砕ける。

……ぐらいの計算あってのことだったと思われます。