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(32)〜柘植久慶【逆撃】シリーズから『武田家3部作』

実行責任者を説得するためには、提案者の『当事者意識』は欠かせない。

 

もしも提案者が大前研一さんならともかく、通常社内で行われる提案や説得において実行者を納得させるには、はたからモノを言っているだけの人間ではパンチが弱くなるのは当然です(ちなみに大前さんは『大いなる実行者』でもあることは言うまでもありません)。

 

だから、無責任な断片材料を提供する程度では、見向きもされないでしょう。

 

武田信玄を説得する主人公・御厨太郎にしても、全く同じです。

いくら信用を得たと言っても、意見を言うだけの男では説得力を持たない。

 

彼はこの物語の主人公ですから、ある程度の主人公補正はかかります。

いざという時の運の良さや、パワーアップ要素などがそれです。

 

しかし、安っぽい現実離れしたパワーアップなどはなく、おそらくは作者の柘植久慶さんが傭兵として戦場で経験した範疇を大きく外さない程度のリアリティを保っているので、せいぜい探索中に狙われたときの直観力や戦闘時の余力といった程度です。

 

説得力バトルが繰り広げられる軍議の場では、御厨の提案が却下される様子が何度も描かれています。

 

己の作戦を受け入れてもらうには、予算(作戦のために割く軍勢)や運用(移動や輸送ルートと時間)及び競合の動向(浜松城に残っている警備と敗戦で引き上げてきた徳川勢)と成果状況(家康自身の生死と敗残軍の扱い)を明確にすることが大前提。

 

それに加えて、遂行にあたっての自分自身の行動を伝えなければ、どんなに彼の案が卓抜していてもプラン化されません。

しゃべればよいというわけではないのです。

 

これはシリーズを通して一貫していると思われる点であり、これもおそらく柘植さんの経験がベースになっているのでしょう。