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(45)〜柘植久慶【逆撃】シリーズから『武田家3部作』


逆撃 三方ケ原合戦 (C★NOVELS)

長坂長閑が有能であるかどうかではなく、有能な家臣から干された格好の自分にとって都合のよい存在であるかどうかが、武田勝頼には必要でした。

 

三方が原合戦の直前に彼が担当した二股城攻めの効率にケチがつけられ、三方が原で家康本陣を壊滅させる最大の殊勲は山縣昌景に取られた。

 

跡取りの勝頼が、父・信玄にアピールできる満足のいく活躍を、今回はまだ一度も見せていない。

 

せっかく陥落させた二股城の功績ですら、彼のやり方に口出しする連中が、こともあろうに信玄の面前で影の薄いものにしてしまった。

 

甲州街道をオープンカーでパレードする夢は儚く消え、無理攻めで多くの兵を失い、上洛の行軍を遅延させたという汚名を着せられてしまった。

 

その口火を切ったのはよそ者の御厨ですが、賛同者はいずれも信玄の信任厚き重臣たち。

 

皆、「都合が悪い連中」だったわけですね。

 

歴史オジサンの目には「武田勝頼は戦略眼のないわからずや」としか映らなかったでしょうが、勝頼の側からは、武田家での振る舞いがいかに困難で歯がゆいものだったか、という格別な思いがあったようです。

 

敵との戦いにおける軍略は、未来からこの戦を詳しく知る軍師・御厨太郎にはお手のものですが、戦いを運営する個人間の感情的なささくれまでを加味すると、歴史の理想論がいかに不十分な理屈であるかを思い知らされます。