前の記事で、パワハラ防止法に伴う企業の関心のひとつとしてアンガーマネジメントがあるということにふれ、同時に「叱れない上司」に関して言えば、一様に実施することは適切ではないと書きました。
会社はあなたの性格に合わせて仕事を振らない
感情を抑えきれないほどパワーあふれる外向的な人へは、「抑制」や「分散」を導くことで対人関係のリスク減少させ、職場を円滑に回す。
アンガーマネジメントとは、そういうことを主眼にしていると思います。
それならば、もともと内省的で、普段から感情を抑えてしまうなあなたは、たとえアンガ―マネジメントの教育や指導を受けたとしても、本来の教育対象ではありません。
「もともとカッとならないタイプの私は、こんな指導なんて気にしないようにすればよい」ということになります。
抑制させられる指示には抵抗感を持たない「叱れないタイプ」
「会社がアンガ―マネジメントを学ばせたいのは、私のような内省型タイプじゃなくて、どちらかといえば激情型の人のはず。私は該当しないから、気にしない」
至極当然で、直截的な結論です。
しかし、あなたが内向的で部下に強い調子で物を言ったり、注意や叱責をすることが苦痛なタイプなら感づいていると思いますが、「自分には該当しないから、気にしない」などと、物事を簡単に割り切れない性格です。
ここには『自他の分離不全』などの要素も関係しますが、複雑になるので割愛します。
「自分には該当しないから、気にしない」と割り切ることができないタイプの人に多い特徴として、積極性を促す呼び掛けには抵抗感をおぼえるが、「より自分を抑えこめ」というメッセージには基本的に前向きです。
本来アンガーマネジメントに積極的に取り組むべき外向性の高い人よりも、はるかに迅速に、そして深く浸透していくでしょう。
自分の性格を助長する上からの指示を、勤め人は求めている
内省的な人にとって、より強度の内省を求められるアンガ―マネジメント教育に従ったとします。
なにやら、『飲んだ毒以上の解毒剤を飲む状況』を想像します。
そうなると、むしろ解毒薬自体があなたにとっては危険な毒物になるのですが、社内通達や研修などでそういった事柄に接してしまうと、それを指示として受け止めてしまう。
いや、うがって考えれば、それも「部下を叱れないことの正当化」であるかもしれない。
内向することは悪いことではありませんが、度が過ぎると良くないのは何でも同じでしょう。
自分が内向的だからといって、反射的に「だから直さなきゃ」と思う必要はない。
ただ、度が過ぎてあなた自身を含めて誰かが辛い思いをするほどなら、何らかの手を打つ必要があります。
そうなるとワンセットのように思いつく『アサーショントレーニング』
外向的な人に、アンガーマネジメントは効力がある。
しかし、内省的で気持ちが内向するタイプの人に有効なのは「アサーション(自己表現)」です。
まずは感情を出せる状態にして、そのうえでアンガーマネジメントを施すのが得策ではないかと思うでしょう。道理からすればそうなりますよね。
会社が単純に “怒りの感情のコントロール施策” としてアンガ―マネジメントを行い、
「これで上下関係は改善し、問題は解消する(した)」
といった空気が、幹部を中心に漂う。
すると、そこで置き去りにされている「そもそも叱れないあなた」の孤独感は増してしまう。
アンガーマネジメントによって、逆に「どう叱ってよいのか、よけいに分からなくなった」が、あなたの本音ではないでしょうか?
『直情径行な爆発型上司用』の感情の出し方を教わっても、あなたの参考にはならない。
だがあなたは「自分は該当しないから、教わったことなんてやらないよ」と割り切れない性格です。
これまでより一層ぎこちなく部下と接する機会が増えたら、逆にあなたがパワハラやモラハラの被害者にならないとも言い切れません。
たとえ部下側に理解があり、やりづらそうにしているあなたを気遣ってくれたとしても、ぎこちないあなたを冷ややかに見ている幹部連中が「能力なし」と酷な評価を下すこともあり得る。
会社が時流に乗った企画をするのは、トレンドみたいなものだから仕方ないとして、やはりあなたにはあなたなりの対処方法があるはずです。