Excelでの作業中、コピー&ペーストを多用する方は多いと思います。
私もその一人です。
その中でも、できるだけキーボードから指を離さず、自分なりのテンポを保って作業したい方は、ショートカットキーを使うことが多いと思います。
私も、テンポよくキーボードを叩いている最中にそれを中断し、マウスに持ち替えて作業することをあまり好まないため、完全にショートカット派です。
意外に使われないが便利なAltメニュー
キーボードに両手を添えたままの作業を好む方の場合、ショートカットのために当然Ctlキーを盛んに使うと思います。
それから、Altキーを押し、特定のアルファベットを順に押すことで所定の操作をする「Altキー利用者」も結構いるとは思いますが、やはり「Ctl + 〇〇」のショートカットほどメジャーではないはずです。
そのAltメニューの中で私がよく使うコマンドで、少々ハードルは高いが便利な機能を紹介してみたいと思います。
マウスを持たずに「コピー&ペースト」できる、“隠れAltメニュー”
「値貼り付け」「書式のコピー」「計算式のコピー」、はたまた「行列を入れ替える」といった内容の貼付け方は、普通に「Ctl + V」を押すだけでは実行できません。
付帯条件が付くコピペは、アイコンを使っていると思います。
(図はOffice2013のExcel)
しかし、いつも使うアイコンなら覚えられるけれど、普段あまりやらない形式で貼りつけるとき、探すのが厄介なことがあります。
マウスカーソルを各アイコンに当てれば、その内容がカーソル下に表示されるのですが、小さいしデザインは似ているし、やはりあまり使わないので都度探すことが多い(そもそもキーボードから手を離している)。
その点、昔ながらの『形式を選択して貼り付け』のサブウィンドウなら、どんなタイプの貼り付けかが文言で示されているので、できればこっちで操作したいところです。
そこでAltメニューを使い、キーボード操作だけでカタを付けます。
メニューにない「つゆだく」をためらいなく注文するかのように
Office2007からメニューバーがリボン形式に変わったことにより隠れてしまいましたが、Office2003までのメニューバーで設定されていた各アルファベットキーを押すと、この『形式を選択して貼り付け』が表示されます。
たとえば、「計算式のコピー」をキーボード操作だけでしたい場合は、コピー元のセルで「Ctl+C」のあと、コピー先セルを選択し「Alt → E → S → F」の順にキーを押せば、最後の「F」が上図の『数式(F)』の意味なので、コピー元の式が目的のセルに設定されます。
上の図はExcel2003のメニューです。
メニューバーの編集(E)でプルダウンするメニューから「形式を選択して貼り付け(S)」を選択するという流れなのですが、このメニューバーが現在はリボンメニューに代わっています。
そこで、今の時代にこの操作を行う時のコツは、変な話ですが『信じること』です。
リボンメニューでは、Eキーの存在が見えないためです。
牛丼屋でメニューにない“つゆだく”を注文できない人は、この記事を読んで実際にExcelを操作して「メニューに無くても行けるモノは行けるんだ」ということを実感してください(笑)
Altキーを押したときのアクション
2007以降のExcelでは Altキーを押すと、リボンメニューの各コンテンツに相当するアルファベットが表示されます。
該当のアルファベットキー(ここでは数式の「M」)を押すと、それに応じてリボンメニューが切り替わるので、「操作した手ごたえ」が一目瞭然で分かるようになっています (下図は「M」の下に展開するコマンドですが、数が多くて小さくなってます)。
しかし、Eの操作はリボンメニューにないため、Altキーを押しても画面の何処にも「E」の文字は現われません。
Altを押して出現するのは「1、2 、3、F、H、N、P、M、A、R、W」です。
上記リボンメニュー図(最初のほう)には「L(開発)」が見えますが、これは私がオプションで追加したメニューなので、初期値は緑太字のものだけになります。
一瞬不安になりますが、ここで怖気づいてはロートルExcelユーザーの名がすたる。
嫌がらせみたいな使いづらいリボンメニューへの転向に、歯噛みしたあの頃の憤りを忘れてしまったのか!
己の記憶を信じ、そのまま往年の指さばきでEキーを押すと、変な表示が出る。
「?」「?」「?」
「エラー慣れ」「ヘルプ慣れ」しているほど誤認しやすいメッセージ
(エラーか!?)
Altを押したときの「無視」に続き、メッセージの表示…
絶対ダメなパターンじゃん、コレ…
慣れたユーザーほど、異常に対するリアクションが早い。
過去の経験から反射的に「ダメか?」と判断してしまう。
しかも、Office製品のヘルプには、自分がいま求めているのとは全く異なる情報が山のように書かれていることも知っているため、即座に「この操作に関係しそうな単語」だけをかいつまんでサッと読み下す習性を持つユーザーが多い。
今はお勉強の時間ではなく業務時間中で、しかも作業途中ということもあり、効果が無いようなら深追いせずサッと手放して、次のことをしなければならないから必然的にそうなるのでしょう。
その素早い判断の中で「以前のバージョン」という語句を「だから今のバージョンでは通用しない」という古文の係り結びのように展開して文章を完結させる人は多いと思う。(『なむ』~『ける』みたいに)
また、「シーケンス」という見慣れない単語に接すると、「意味の分からない単語は飛ばして、次の単語で判断する」という英文読解でやりがちな思考回路が作動する。
すると、次の一文に誘導される。
「取り消す場合はEscキーを押してください」
袋小路に入ったとき、もっとも頼もしい脱出方法が書いてある。
orz (ハァッ! ハァッ! ..アブナカッタゼ) ☜ Exit
信じれば思いは叶う、見えないALTメニュー
こうして頭の中で構成される文脈が「以前のバージョンの仕様です。あなたが押したAltの操作をクリアするにはEscキーで抜けてね」となってしまうユーザーもいるのではないでしょうか。
私もその一人でした。
しかし、ここで大切なのはとにかく『信じる』こと。
スクールウォーズで滝沢賢治先生が何度も口にした「信は力なり」を胸に、メッセージなどものともせずに次のSキーを押すことで道は開けます。
召喚に成功しました。
この標識さえ引っ張り出せば、該当のキーを押すと、あの厳しくも優しかったOffice2003までの感動が再びあなたの前に現われる。
若かりし青春の思いに浸りながらFキーを押し、最後にENTERキーを叩けば、望みどおりに計算式だけのコピーが成立。
当時と変わらぬ光景を目の当たりにできます。
そして、仕事を果たしたサブウィンドウは、何らの見返りを求めることも無く、静かに姿を消す。
「待ってくれ! 消えないでくれ! 君に、そばにいてほしいんだ!」
「私はいつでもあなたのそばにいる。信じて。リボンメニューの意地悪に負けず、自分を信じることができれば、私は何度でもあなたの前に現われるわ」
優しい『形式を選択して貼り付け』のサブウィンドウは僕にそう言い残し、消えていった…。
くだらない妄想にお付き合い頂きありがとうございました。
余談(Don’t think. feel!)
実は私の場合、「ALT → E → S → V」の連続打ちを、頭ではなく左手の指が覚えていたので、自分でも何のキーを押しているかは理解していないまま一瞬で押し切ったら『形式を選択して貼り付け』が登場しました。
「Altの次はどのキーを押すんだっけか?」と頭で考えることをせず、目的と指の動きを直結させた格好です。
そこまでは良いのですが、無事にサブウィンドウを出現させた後で、「これ、どうやって出したんだっけ?」と慌てました。
考えながらキーを押すと、どれだったかわからなくなる。
「これかな?これかな?」とキーボードをいじくり回しているうちに「ヤバい、出し方わからなくなった!」と焦りました。
最も怖いのは、思考しながら指を動かしているうちに、体に染みついた左手の指さばきを失ってしまうことです。
そうなったら、再び出現させることができなくなってしまいそう・・
しばらく、コピペをする都度、無念無想の境地が必要になる時期がありました。
第100話 究極の奥義無想転生! ラオウ、遂にお前を追いつめた!!
「消えないでくれ!」というセリフは、そのときの不安から出たものです(笑)