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『井上靖「北の海」の味(3)続・街の中華屋』


北の海(上)(新潮文庫)【電子書籍】[ 井上靖 ]

 

私もたしか中学生の頃だったか、川越近くの友達の家に遊びに行き、場末の中華屋へ入ってラーメンを食べたことがあります。

 

外食の経験などほとんどなかった頃、とてもセンセーショナルな経験だったため、殊に強く記憶に残っています。 カウンターに腰かけて慣れぬ手つきでメニュー (↓↓↓こんな感じ)を手に取ってみると

 


タカ印 ポップスタンド卓上メニュー立 34-2820 T型 中 透明 ペット樹脂

 

「ラーメン200円」

 

昭和50年代のことですから、今より安いのは当然です。

大正15年が舞台だった作品中で、洪作の食べていたラーメンはいくらだったのだろう?

 

この時の洪作の軍資金は、道場で腰を痛めて動けずに寝ている遠山の財布から出ています。

アンパン購入を頼まれた際に「俺のラーメン代ももらっておくぞ」と一声かけて数枚の硬貨を持ち出しているので、洪作自身の財布は痛みません。

 

当時と今では感覚が違うし、舞台も沼津ですから、東京との比較では色々と違う点も多いでしょう。

 

ちなみに、私が川越のラーメン屋で200円ラーメンを目にしてから、多分数か月後。

神保町でラーメンを食べるという同級生連中と行動を共にしかけたことがあります。

 

一緒にいた仲間のうち、外食に抵抗のある(ということはやっぱり中学の頃ですね)友達は別行動。

 

私は、お腹は空いていましたし、ラーメンなら川越で外食したことがあるので店の前まで行ったのですが、「ラーメン400円」という表示を見てやめました。

 

(高すぎる)

 

川越の中華屋では「ラーメン200円。ラーメン大盛り300円」でした。

 

私にとってはこれがスタンダードになっていた(チャーシューメンだと500円に跳ね上がり、これを注文すると他の客から「ウムッ?」という視線が飛んでくる)。

 

普通のラーメンに400円なんて、とても払う気になれないと驚いたことを思い出します。

でも、都心では普通の価格設定だったのでしょうね。

 


北の海(下)(新潮文庫)【電子書籍】[ 井上靖 ]

 

それから、ラーメン2杯を食べ終わって店を出た洪作が、間もなく藤尾と共に再訪した際に注文したシューマイの値段も気になるところです。

 

なぜなら、私が川越の中華屋で忘れられないもう1品がギョーザだからです。

 

「ギョーザ250円」

 

目の前のカウンター席に並ぶラーメンどんぶりとギョーザの皿、という豊かさの象徴のような光景が、私の意識を捉えて離さないのですが、それをやると450円になってしまう。

 

高級料理「チャーシューメン(500円)」に匹敵する出費は、中高生には中々手が出ません。

 

お腹と財布との3者会談に全精力を費やした結果、妥協案として

「ラーメン大盛り(300円)」

が採用されることになります。

 

ギョーザ欠乏状態のカウンター席で、大事に大事に大盛りラーメンをたしなんでいた記憶が、この時に洪作が注文したシューマイの値段を知りたい気持ちを呼び覚ますのです。

なんと生きた文学作品であることか……