前回記事では、主人公が居候身分であるシリーズを語ろうとし始めるやいなや、そのラインを外れた存在である【アギト】の話だけで完結してしまいました。
「家事手伝い」からの「一人暮らし」、そして最後はレストラン開業ですから、こう並べると津上翔一が居候でないことが如実に顕れるでしょう。
職に就いた平成仮面ライダー
次に、劇中で就職した主人公を挙げてみましょう。
今回も、昭和ライダーの伝統を引き継ぐ王道「居候の地位」にたどり着けなかったメンバーの話です。
あまり注目されない点ではありますが、一見すると居候的風情を出しながらも、実は従業員という立場に陥っている主人公。
これに該当するのは【ファイズ】【オーズ】の2作品です。
経費削減ライダーの【ファイズ】
私は以前の記事で「ライダーの主人公は想像以上に被服費がかかっている」というポイントを挙げました。
頻繁な川落ちや、地べたを転がる回数が多い分だけ服の傷みや汚れが甚だしく、買い替えはもちろんのこと、クリーニング代などが馬鹿にならない出費になっているというものです。
<被服費についてふれたのはこちらの記事です⇩⇩>
この問題を、クリーニング屋で暮らすことでクリアしたのが、ファイズに変身する乾巧(いぬいたくみ)です。
第5話で菊池啓太郎にお金(スピード違反金)を借りるために訪れた巧は、すでに啓太郎との同居を開始していたヒロインの園田真理と共に、「西洋洗濯舗」というクリーニング店を営む啓太郎の店舗兼自宅で暮らし始めます。
一応「アルバイトして返す」という名目があることから、巧が住み込みバイトの職を得ることに成功していることがわかります。
ちなみに西洋洗濯舗は啓太郎の両親が経営する店ですが、ふたりともアフリカに行っているので、実質的に啓太郎が店長となり、3人での共同生活がスタートします。
とはいえクリーニング代はタダじゃない!!
汚れた衣服をプロの技できれいにしてもらうのは良いですが、原価とはいえ確実に経費がかかる。
その分を巧のアルバイト料から差っ引いたら借金返済に支障があると思いますが、啓太郎は巧のファイズ活動に強い関心(憧れ)があるので、巧が汚した衣服の洗濯代は「啓太郎自身が従事する人助けの必要経費」と割り切り、巧への負担は差し控えることでしょう。
衣食住、、とりわけ ”衣” に関するケアが抜群に良い環境で暮らし始めた乾巧は、しっかりとライダーズコストの削減に成功した珍しい主人公と言えるでしょう。
昼夜連勤ライダーの【オーズ】
平成ライダーでは、劇中で就職シーンが描かれる作品は非常に少ないのですが、もうひとつのケースは【オーズ】の火野映司です。
彼はもともと【クウガ】の五代雄介のように、世界各国を旅する生活を続けていて【オーズ】は、そんな火野映司がたまたま日本に留まっている期間に起きた出来事を追ったものです。
目指せ居候身分!
火野映司は第1話で警備員のアルバイトに就いている姿が描かれますが、働き始めて数時間後に同僚の悪事に巻き込まれ、あっという間に放逐されるので収入は無し。
見事に居候の資格条件を得ることに成功します。
乾巧と同じく、第1話においては頑張って無職を貫いた火野映司。
続く第2話でも、わずかな持ち金でアンクのアイス代などを捻出しつつ、引き続き居候の資格条件は維持したままです。
同じ第2話で多国籍料理店『クスクシエ』のアルバイト試験に合格したヒロインの泉比奈との偶然のつながりから、映司はクスクシエでの職を得ます。
劇中で料理運びなどのホール仕事をこなしている姿も散見されるので、映司は明らかに労働している。
そもそもクスクシエ店長の白石知世子さんは映司がオーズであることを知らないので、彼女から見れば映司はただのアルバイト。
そんな知世子さんにとっての映司は、働いてもらってナンボの存在ですから居候身分は最初から成立しないと言えるでしょう。
その意味で、店舗運営にちっとも協力しないアンクこそ、実は「居候の地位」を得ていると言えます。
ダークホースのアンクは「居候身分」を手に入れたか?
【ファイズ】の乾巧同様、火野映司(と相方のアンク)も住み込み形式ですが、クスクシエの場合は店長の自宅ではないようですので、映司は夜間警備の役割も果たしており、わずかながら第1話で全うできなかった警備員という伏線を秘かに回収しているのかもしれない。。
あるいは知世子さんは、優し気で腕っぷしに頼りなさそうな映司より、こと夜間警備に関しては愛想の悪いアンクに大いなる期待を寄せているのかもしれません。
ちょっと言い方を変えれば、人懐っこくて泥棒にもなついてしまいそうな ”映司犬” よりも、誰かれ構わず牙を剥きだす ”アンク犬” に対し、夜のバイト代は傾斜配分で多めに計上しているのではないでしょうか。
となると「アンク居候説」もすっかり影をひそめてしまう。
いやはや、、キャッシュフロークワドラントならぬライダークワドラント(定収入⇒実家暮らし⇒住み込みバイト⇒居候)最終段階の『居候身分』を得る道はなかなかに厳しい・・・