時間がない! もう出ないと遅刻する!
財布、時計、鍵、携帯・・え~と、あとはゴミだ、ゴミ出さなきゃ! それからえーと・・
誰もが経験するこの慌ただしさ。
たとえ今日はミスなく乗り切ったとしても、こんなことを毎度繰り返していれば、やがて
「いけないっ! 財布忘れた」
とか
「あ、ヤカン下ろさなかったけど、コンロの火止めたっけ?」
とか
「しまった。エアコンつけたまま出てきちゃった!」
みたいなミスやチェック漏れが起きてもおかしくない。
時間がなくて慌てるという経験は、ほとんどの人がしていると思います。
そしてその姿は、お世辞にも格好が良いとは言えない。
ヒーローなら特にそうでしょう。
世界を守る正義の使者がアタフタするのはやっぱりカッコ悪い・・
敢然と、そして悠然と悪に挑むのがヒーロー・・なのに
ヒーローが敵に立ち向かうときの象徴的なセリフといえば、たとえば「ゆくぞ!」など、基本的には ”準備が整ったあとに発する” というイメージがあります。
もちろん仮面ライダーの『変身!』という王道中の王道とも言えるセリフも、昭和ライダーではありがちだった「崖の上から悠然とワルモノを見下ろしながら発する言葉」だったりして、とにかく準備が整った前提のものと受け止めていた記憶がある。
つまり我々は子どもの頃から常に、ヒーローの決め台詞というものは ”準備が整った後” のセリフとして親しんできました。
そうそう、やっぱり慌てるヒーローなんていないよね
仮面ライダーに限った話ではありませんが、ときに「襲いかかってくる敵をいなしつつの変身」なんていうケースもあります。
しかしあれも「慌てている」というより「落ち着いて対処する」という感じで、見ていてかっこよかった。
そう、ヒーローには、たとえ慌てていてもそれを顔に出さないヒロイズムがあった・・はずです。
こともあろうに「ベルトが無いんだぁー!」なんて口にする主人公なんて、普通はいない。
たとえ物語内の世界ではその部分があったとて、シーンとして視聴者に観せるためには、そこはカットするのが自然です。
しかし、そのシーンが台本に書かれている【ファイズ】
[バンダイ] レジェンド変身ベルトシリーズ ファイズドライバー
リアリティという点で、これを超える作品はなかなか出ないでしょう。
主人公が「オイやべえぞ、オレ今変身できねえんだよ!」って自分で言っちゃってるわけですから。
怪人が出た! 早く変身しないと!
ということで冒頭の記述に戻りますが
時間がない! もう出ないと遅刻する!
これをファイズの劇中における仮面ライダーに置き換えると・・
「オルフェノク!」
【ファイズ】における怪人の総称 ⇩⇩⇩まあ、こんな感じの連中
S H.Figuarts(真骨彫製法)ホースオルフェノク 約150mm PVC&ABS製 塗装済み可動フィギュア
突然の怪人出現にこう叫んで、主人公・乾巧がアタッシュケースを地面に置いてしゃがみ込み、ロックを外してパカッと開くシーンは、劇中で何度も描かれています。
「財布、時計、鍵、携帯・・え~と、あとはゴミだ、ゴミ出さなきゃ! それからえーと・・」
・・とは言わないにしても、我々が日常の中で経験する、このうろたえた様子もまた、ファイズの世界にはそのままスライドされています。
目の前に敵がいるにしては、準備の手間が多すぎないか?
乾巧はアタッシュケースの中から以下のものを一つずつ取り出していく。
①ガラケー(変身のトリガーになる【ファイズ】の象徴的アイテム。普通の電話機能も備えているため、巧がファイズになることを受け入れてからはアタッシュケースには入れずに持ち歩いている)
②ベルト(ゴツい金属製の帯。前面にはガラケーを差し込むバックル。両サイドにアイテムを吊り下げ収納するための取り付け器具。取り付け器具はアイテムの凸部分を差し込めるよう、正面から見ると四角い穴状に開いている)
③キック用アイテム(四角い凸部分をベルトの四角穴に差し込んで90°回転させることで固定化)
④パンチ用アイテム(上に同じ。共に、使用時の取り外しに際しては、装着時と同様に90°回転させてベルトから引き抜く)
ちなみに③と④については変身時の必須アイテムではありません。
アタッシュケースに残しておいて、いざ使うときに取りに戻っても良いのですが、戦闘中にその余裕があるかどうかは読めないところなので、できれば変身時点でベルトにセットしておくことをおすすめします。
と、注意書きを書くのは簡単ですが、なにせ眼前に敵がいる。
劇中で、ベルトを持ち上げた状態で③と④のセッティングを試みているシーンは、私の知る限り1回しかありません。
だいたいベルトを持ち上げたところでカットが切り替わり、立ち上がったときには③④はベルトの左右に吊り下がっている。
変身さえすれば、高岩成二さんが何とかしてくれるに違いない
乾巧を演じた半田くんは器用そうだけれど、変身の準備は慌ててがむしゃらに取り組んでいる感じがします。
変身後の余裕綽々な、若干相手をナメているようなふてぶてしさを、変身直前の乾巧からは感じられないのです。
SOFVI SCULPTURE STUDIO 仮面555 フィギュア
あまりシャープに変身前の全アクションをやり切ってしまうと、変身後の高岩成二さんのシャープさとの対比が活きてこないからだろうか?
もしも私が変身準備(ベルトを取り出してアイテム装着)をする機会があったら、絶対に高岩アクションのマネをしてしまうと思う。
私なりの ”高岩アクション” とは・・
ざっくり言えば、以下の4点が挙げられるでしょう。
その1:なぜか初見なのにすべてを理解している。戸惑わない。
その2:手にしたアイテムを動作前、または動作途中で軽く宙に放り上げ ”ちょっとした誇示感” を醸し出す
その3:手元を見ない
その4:リテイク不要。一発で操作を完了させる
あたかも自分の体の一部のように使いこなすのが、平成ライダーを象徴する機能美演出「高岩アクション」です。
(放映当時、バイト先でやってました😂)
話がそれましたが、とにかく怪人が迫ってくる(あるいは攻撃してくる)なかで、アタッシュケースを広げて①〜④のアイテムを取り出し、準備を終えてようやく腰にガチャンと変身ベルトはめる一連動作を、劇中で描ききってしまうまどろっこしい尺こそ、観ていてメチャクチャに感情移入できる部分でした。
【ファイズ】にはベルトにまつわるリアリティという点で、もう一つ特筆すべき事象があるので、それについては次回の記事に書いてみます。
次回:
②完全物理系の宿命。変身中にベルトが外れるアクシデント!
一気に丸腰と化す悲劇!