かなり昔の記憶ですが、中川翔子さんのエッセイ本の話から初めましょう。
ネットの宣伝ページで見ただけなので書名も忘れましたが、本の帯に書かれていたとおぼしきフレーズが、私に刺さったのです。
うろ覚えですが
「ベルトが外れた仮面ライダーが、変身解除されてしまうまでの一瞬の姿に、翔子は萌える」
といった内容でした。
目の付け所が、いかにもしょこたんっぽい。
私が思うにこれが【ファイズ】の一大特徴なのです。
変身中にベルトが外れるとき・・それは?
劇中で、腰に巻いていない状態のベルトが「バックル&帯」の完全成形で描かれる、平成ライダーでは圧倒的に数の少ない②完全物理系ならではの『ベルトが外れると変身が強制解除』という展開は、まさにリアリティ満載です。
変身ベルトを①不可思議系と②完全物理系に分類したときの記事はこちらです。
じつは①不可思議系のライダーでも起きている強制変身解除
実のところこの強制解除、必ずしも②完全物理系のライダーだけに起きる現象ではありません。
腰回りにベルトが自動的に出現するとか、腰にバックルを当てると何処からともなく帯が出てくるといった①不可思議系のライダーでもチョイチョイ起きています。
しかしそれは、強烈すぎるダメージを負ってしまったときに限定される。
吹っ飛ばされて一時的に元の姿に戻った主人公が、すぐに立ち直って再変身することも可能です。
【ファイズ】には通常終了コマンドが存在する
一方【ファイズ】には、「通常オペレーション」による変身解除があります。
バックルから抜き取ったガラケーをパカッと開き、特定のキーをプッシュするという操作方法です。
特定のキーをプッシュすると機械音声の「OFF」というカッコいい假野ボイスと共に全身が発光し、乾巧の姿に戻るのが本来の形ですが、この一連の動作がカットされずにすべてオンエアされた回数は、私が覚えている限りたったの1回です。
(假野さんのいい声を堪能したい方向けの動画を発見しました)
通常オペレーションで変身解除した場合は、もう一度ガラケーに555の変身コードを入力してバックルに装着すれば再変身可能・・ということになります。
問題の『強制終了』を語る
ですが、敵に吹っ飛ばされてベルトが外れてしまった場合、そう都合よく傍らに転がっているとは限らない。
おまけに、本体からガラケーが外れてしまった場合、再変身のためには2箇所に移動してアイテム回収しなければならない。
また、運良くガラケーがバックルに留まってくれていても、一旦それを引き抜いて再び変身コードを打ち込み、そのうえで挿し直さないと変身できない。
この煩わしさは、まさに我々が日常で経験する各種デバイスの起動に似ていて、それが劇中で繰り広げられている。
【ファイズ】を観るときの強いハラハラ感は「ベルト(変身解除)が最大の弱点」という使用上の注意に留意しなければならない制約によるところが大きかった。
しょこたんが萌える強制変身解除シーンとは
ドラマの描かれ方として特に興味深かったのが、しょこたんに「萌える」と言わしめた、ベルトが外れた状態のライダーになった一瞬のリアクションです。
①不可思議系の変身が強制解除されるときは、ほぼ例外なく猛烈なダメージを食らっているので、人間の姿に戻るときには倒れていて身動きも取れないことがほとんどです。
しかし②完全物理系の中でも特に【ファイズ】では ”単にベルトが外れただけ” の場合も多い。
自分の身体を見下ろし、何もないツルツルの腰回りになったことに気づいて「ヤベッ!」と狼狽している元気なアクションであることも、しばしばある。
引っ越し中のヤドカリが「ヤバイヤバイヤバイヤバイ次の貝!」と素っ裸で移動するレアな一瞬を見られたときに少し似ていて、しょこたんが萌えるのも理解できる気がします。
(マリンダイビングWEBのサイトより)
海のいきもの ヤドカリと、その仲間たち|Marine Diving web(マリンダイビングウェブ)
「そんなことしたら外れるんじゃないの?」というハラハラ
そして、外れやすいのも【ファイズ】のベルトの特徴です。
センチピードオルフェノクの琢磨くんが「ベルトを奪う」という目的に特化し、ファイズを倒してベルトを奪うのではなく、戦闘中にベルトだけを奪い取る方法に挑んだ戦いを覚えているファンは多いでしょう。
離れた位置からバックルにムチを当てて引き寄せただけで、絡め取られたベルトが宙に舞ったあのシーンです。
(上の写真、ファイズは琢磨が変身した姿で、踏みつけられているのが主人公の乾巧です)
「そりゃぁ、怪人の力で引っ張りゃぁ、人間が腰に巻いたベルトくらい簡単に取れるでしょ」
イエイエ、そうではありません。
ベルトを奪われる寸前の乾巧は仮面ライダーの姿で、超人的な力を備えている。
・・にも拘らずあっさり奪われるファイズ。
ベルトのアジャスト部分が緩んでいるのでは?と疑いたくなるほどです。
この20話のときなどは特に、ダメージと言うほどのものは受けていない状態だったので、鞭に絡まってベルトが飛んでいく様子に驚き、「アッ!」と腰に目を落とす余裕のあるファイズ。
ツルツルの腰回りになった乾巧は普通に立ち尽くしているだけで、ベルトが奪われたことに驚愕するだけの余力がある。
そしてその余力を維持しているヤドカリに、きっとしょこたんは萌えるのでしょう。
変身は、あくまでもベルトによる機械力によってなされる科学的現象であることが、如実に描かれているのがファイズの奥深さです。
さて、思っていたよりはるかに長くなってしまった仮面ライダーの大人向けリアリティ:第1弾「変身ベルトっていつ腰に巻くの?」ですが、このくらいで終わりにしようと思います。
次はやっぱりあれですかね?
仮面ライダーの大人向けリアリティ:第2弾「主人公はどうやって生計を立てているの?」
無尽蔵にお金が湧いてくるなんてリアリティがない。
現実世界の住人として、どうやって食べていくかが描かれていないと・・という視点で仮面ライダーシリーズをおさらいしてみましょう。