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窪田遼「ヘッドフォンララバイ」の味

かなり昔のことですが、青春小説の旗手(と私は思っています)だった窪田僚さん。

 

代表作「ヘッドフォンララバイ」は、当時の私の思い込みをぶち破るインパクトを持っていました。

 


ヘッドフォン・ララバイ―公園通りの青春 (1981年) (集英社文庫―コバルトシリーズ)

 

今でこそ「1文ごとの改行」が多い小説なんて当たり前ですが、当時私が普通に読んでいた作品群では、セリフ以外で一文ごとに改行するなんて、『詩』ぐらいのものでした。

 

ヘッドフォンララバイでは、風景だけでなく、心の情景を描くような感じで、断片のように短文が1行掲載されている。

 

なんといっても、読みやすい。

ものすごく読みやすい。

 

国木田独歩武者小路実篤や、森鴎外夏目漱石とかと比べると、ものすごく読みやすい。

 

ヘッドフォンララバイシリーズは全4巻ですが、貪るように読みました。

珍しいことに、いまだに持っています。

 

さて、この作品はというと、淡島高校に通う3年生の風間黎(れい)という少年が主人公です。

 

父の転勤で北海道に引っ越す母や妹と離れ、東京の三宿のアパートで始まる一人暮らしの日常を綴った柔らかなストーリーです。

 

昭和50年代で、携帯電話なんてものは無く、コンビニ『サンチェーン』が健在の頃です。

 

そして、妹の朋(とも)など家族との会話で、2回ほど登場する「北京軒」という飲食店。

 

いかにも場末の中華屋というイメージですが、そこのメニューとして家族内の共通語になっている『豚肉みそ焼きライス』と『ゴム紐ラーメン』という料理が非常に印象に残ります。

 

場末の中華屋に入って、親父さんがチャンチャンと手際よく作って出てきそうな、味付けの濃い炒め物の定食や、一切凝ってないただただ普通のラーメンなどに郷愁を覚える男性は多いのではないでしょうか。

 

シリーズ4作通して、北京軒に入るシーンはただの一度も無いのに、なぜかこの存在感。

主人公の説明によると、北京軒は家族経営の店だそうです。

 

娘がふたり、店を手伝っていますが、本当は外へ働きに出たいのに親父さんがそれを許さないとかで、その不満が無造作な接客に表れていたりするようで、どうもこの北京軒にもそれなりの物語がありそうだということが、小説の中にほのめかされていて、そんなところもリアリティを感じさせる要因になっています。

 

私も行ってみたいです。北京軒。