加盟店(フランチャイジー)は同志だと、本部(フランチャイザー)は言うでしょう。
「このビジネスにより我々の想いを広く世間に浸透させ、サービスを通じて社会貢献する。その功績としての豊かさを、共に享受しようではありませんか」とか。
しかし、本部が自社商品を「誰に」売る想定でシステムを組んでいるかにより、両者に協同のビジョンが無くなってしまうことがある。
仲間にモノを売るのか、客にモノを売るのか
本部が加盟店に、客へ売りさばく商品を搬入する。
その商品移動が「本部から加盟店への販売価格」で為されたら、そこで本部の販売活動は終了する。(加盟店からエンドユーザーへの販売価格については、妥協を許さず努力義務を強制することが多い)
その後加盟店で売れ残っても、本部は搬入時点で利益まで取っているので、フランチャイザーの側から見れば取引は成功です。
あとは仕入の都度同じことが繰り返される。
「対・加盟店販売」だと本部の利益確定だけが早くなる
「販売店に売る」形式では、エンドユーザーの手に商品が渡るまでの一連の商取引の初期に、まず本部だけが利益確定します。
そして、本部としては加盟店へ出来るだけ高く売りたい。
一方、加盟店はお客への販売が成り立たないと利益確定しないので、張った掛金の回収が済まないかぎり、自分たちにとっての「フランチャイズ事業」が完了しない。
綺麗なスローガンを掲げていても、はじめの一歩…しかも事業の根幹にかかわる重要な事柄で、加盟店と本部の間にあるのは『取引』であって『協同のビジョン』と言えるかどうかの疑義が生まれてしまう。
ここに疑問を持っていたのが、自身がフランチャイザーとして事業展開していたサンマルクの創始者・片山直之さんです。
blog.dbmschool.net
フランチャイズの理念を「加盟店との共存共栄」と言い切る仕組み
片山さんは、実質的に加盟店に対して販売を行う方法を「フランチャイズの在り方として問題がある」と仰っていました。
契約上はフランチャイズであっても、加盟店は本部がモノを売るための”販路”になってしまっている実態が、商品を現場に卸すときに露わになってしまう。
利益を乗せた売価を回収するのは商売では当たり前ですが、その相手がエンドユーザーではなく加盟店になっているところがほとんどかと思います。
一方、共に社会に向けて事業活動をする仲間を集めるのがフランチャイズ募集の案内文の決まり文句でしょう。
ならば最終的に利益確定するタイミングも、仲間たちと分け合ってこそのフランチャイズではないのかということを、片山さんは仕組みとして築かれたようです。
私が10代でセブンイレブンのアルバイトを始めた頃に、漠然と考えていたのはこちらに近いものでした。
もちろん私は無知ゆえにそう思っていただけですが・・
片山社長は、元々は店舗のオーナー兼店長だけあって、エンドユーザーに接することが生産性の源泉であることを深く理解しておられたのだと思います。
大きな会社の社長になってもその意思が変質することなく「お客さんに一番近いところが偉いんだ」と発言するあたり、現場感が強くて私は好きです。