【感情会計】善意と悪意のバランスシート

善と悪の差し引き感情=幸福度

ウルトラセブンの気持ちを考察する(ペダン星人へのオーバーキル)②

せっかくの最強技ワイドショットの使用例として、なぜかペダン星人の「宇宙船破壊」が紹介されていた『決定版ウルトラ兄弟』


決定版ウルトラ兄弟 (1979年) (小学館入門百科シリーズ)

 

やはりこういった場合、怪獣の個体に発射した画像を用いないと、サイズが違いすぎて弱いものいじめっぽくなるし、見た目に地味過ぎて面白くない。

 

と、「セブンの気持ちを考察する」と銘打っておきながら私自身の文句を並べ立てた前回記事。

 

blog.dbmschool.net

 

すっかり話がそれてしまいましたので、元に戻すことにしましょう。

 

 

今を生きる小学生に通用しないカタルシス

もともとはこういう話でした。

 

なぜウルトラセブンは、ガッツ星人のことは散々いたぶってからとどめを刺したのに、ペダン星人にはいとまさえ与えず、最強技ワイドショットでオーバーキルしたのか?

 

2話続きになるほどウルトラセブンが苦戦した挙げ句、ペダン星人もガッツ星人も、最後は宇宙船を破壊して息の根を止めた点は共通するのに、なぜこんなにも倒し方が異なるのか?

 

ペダン星人が超ムカつく存在だったことを知っているのは ”オトナ” だけ

前回、今回とこの記事を読む方なら今さら説明は不要と思いますが、一応おさらいしておきましょう。

 

ペダン星人とは第14話と15話『ウルトラ警備隊西へ』の前・後編に登場した宇宙人で、地球人が打ち上げた観測ロケットを侵略と勘違いして報復にやってきました。

 

キングジョーという、4つの宇宙船を合体させて成形したロボットを擁し、コイツがメチャクチャに強い。


ウルトラ警備隊西へ(後編)

 

セブンの技が通用せず、戦い始めてもあっという間にワンサイドゲームになってしまうほどでした。

 

その後モロボシダンが密かにペダン星人と会談し、「地球人に侵略の意思はない」と伝えると「地球人は信用できないが、ウルトラセブンの言うことなら本当だろう」と訴えを受け入れ、地球を去ることを約束します。

 

ウルトラ警備隊に戻ったダンも ”宇宙人同士の約束” とキリヤマ隊長に言いかけて慌てて言い直し「ともかく彼らはこのままペダン星へ帰ると約束してくれました」と報告し、事態は収束の方向へ向かいます。


ファイブスタートイ ウルトラセブン 生誕35周年記念 モロボシダン フィギュア

 

しかし、地球の美しさに魅せられたペダン星人は約束を違え、ウルトラセブンさえ倒してしまえば地球人は抵抗できないとばかりに再びキングジョーを始動。

 

いっぽう、地球人で唯一、キングジョーを破壊できるライトンR30爆弾の製法を知るドロシー・アンダーソンを、周到なペダン星人は誘拐して記憶を失わせていたが、ウルトラ警備隊が彼女を取り戻して保護。

 

アンヌの治療により復活したドロシーによって作成されたライトンR30爆弾で、キングジョーは礼儀正しく気を付けの姿勢で神戸の海に仰向けに倒れ、爆散して散った。


ひし美ゆり子写真集 All of Anne:2021

(たしか当時二十歳前後のひし美ゆり子さん。現在にタイムスリップしてもアイドルが務まるほどの美貌だ)

 

炎を噴き上げるキングジョーの体内から、切り札を失ったペダン星人が逃亡を図ったところにセブンのワイドショットが炸裂した・・

 

昭和54年出版の書籍を読む小学生に「オトナの感覚」は理解できない

・・というシーンだったわけで、こう見ると非常にドラマチックな展開の集大成で、当時ウルトラセブンを視聴できた人々が、2週にわたって求めていたカタルシスの象徴がワイドショットだったことがわかります。

 

セブンにしてみればあの一撃は

「コノヤロー!!!!」

という気持ちだったのでしょう。

 

ウルトラセブンとキングジョーの戦いは、セブンの特殊攻撃が通じないという点で絶望的なインパクトがありましたが、それは肉弾戦への移行を余儀なくされただけで、セブンがキングジョーから受けたダメージは、さほどのものとは思えない内容だった気がします。

 

セブンの技が通用しない敵として、バンダ星人が連れてきたクレージーゴンがいますが、むしろこのときの戦いのほうが、セブンのダメージが遥かに強かったように思える。


勇気ある戦い

 

どちらかといえば、ドヤ顔でキリヤマ隊長に「もう大丈夫です」と報告したにもかかわらず、ペダン星人に梯子を外され面子を潰されたモロボシダンの怒りがこもったオーバーキルだったという言い方のほうが相応しそうです。

 

当時の放映内容をよく知る小学館編集部の担当者にしてみれば、その時のフラストレーションとその解放がワイドショット一発に集約しているのかもしれない。


改訂新版 新資料解読 ウルトラセブン撮影日誌

 

でも、放映を見る以前に『決定版ウルトラ兄弟』を熟読した小学生の私にそんな忖度は存在しない。

 

「これじゃない」感が強すぎた。

 

では次回、同じ2話続きでかつてないほどセブンを苦しめたにもかかわらず、最後におちょくられたガッツ星人について、ちょっとだけふれてみましょう。