【感情会計】善意と悪意のバランスシート

善と悪の差し引き感情=幸福度

主人公に魅力あり!! 胡桃沢耕史「翔んでる警視」シリーズ②

悪役に魅力のある作品は面白い

 

悪役が徹底的にワルで、外道で酷いやつであればあるほど、ヒーローが引き立つ。

 

でも、ヒーローがあまりにも清廉潔白であると、なんだか面白味が感じられないことも事実です。

 

たぶん、昔のヒーローは「カッコよい」だけでキャラが立つことが多かったでしょう。

テレビ番組やマンガなどの娯楽が、今とは比較にならぬほど少なかったという背景が、そこにはあったと思います。

 

ということは、娯楽が増えた現代では見る側の目が肥えて、単純なヒーロー像では響かなくなってきている(ある意味マヒしている)。

 

ヒーローに陰があると、物語は格段に面白くなる。

これも、定番的な引き立て要素です。

「他人に正体がばれてはいけない」という設定に惹かれる人は多いでしょう。

 

ヒーロー自身に、ダーティーさがある

これも魅力です。

「誰の味方でもない」とか「悪党ゆえの力強さで誰かを救う」みたいな展開ですね。

 

この二つの条件について書くだけで、結構な記事数がストックできそうなのですが、そこには目をつぶって、今回は「ダーティーヒーロー」という表現が正しいかどうかわからない『翔んでる警視』シリーズの主人公・岩崎白昼夢(さだむ)にふれてみたいと思います。


翔んでる警視 ベストセレクション (広済堂文庫)
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『翔んでる警視』については、私の過去記事で数度書いています。

 

東大卒。国家公務員上級職試験を3番で通過。世界で使われる100以上の言語を使いこなし、一度見たものは忘れない超人的な頭脳を駆使し、難事件をいとも簡単に解決してのける岩崎警視は、警察官という職業からしてすでに『正義の人』。誰がどう見てもヒーローです。

db469buncho.hatenablog.com

 

常に殺人捜査のことばかりを考え、ムダなことをしないで仕事に打ち込む姿は、同じ警察官である「こち亀の両さん」とはかけ離れています。

 

両さんはどう見ても不良警官である部分が強く、それが彼の魅力を引き立てていますが、岩崎警視には、それと似た部分が全くない。

 

しかし、岩崎白昼夢はとんでもないダーティーさを持つヒーローです。

一言でいえば「俺様ぶり」を表さない「俺様ヒーロー」です。

 

岩崎の能力の高さゆえに、周囲は彼に頼もしさを感じるのだが、逆に、能力が高すぎるがゆえに、すべてが嫌味になる。

物語全体が、この歯がゆさで貫かれるところに、初期設定の上手さがある気がします。

db469buncho.hatenablog.com

 

部下の心情を介さない発言がほとんどで、ストレスフルな職場の雰囲気が出ます。

おまけに、セクハラ・パワハラ的な言動もかなりある。

 

これは、この作品が書かれた当時だから著者が叩かれることも無かったのでしょうが、現在この作風で連載できる人気作家はいないでしょう。

相当、毒のある作品という言い方もでき、そういう意味でもハラハラさせられます。今となっては貴重な人気作品かもしれません。

 

そんなダーティーな岩崎警視ですが、だからこそ単身(又はごく少数)で危地に乗り込んだり、絶対的ピンチに陥ったりしたときのドキドキ感もハンパない。

db469buncho.hatenablog.com

 

職務に命を捧げ、誰よりも真面目に仕事に取り組む超エリート警察官で、目覚ましい実績を上げ上層部の覚えもよく、部下からは「この人がいる限り大丈夫」という絶大な信頼感を得ている『ダーティーヒーロー』。

 

設定にも主人公にも魅力あり!! な作品です。