前回記事で、田布施町の内部告発でのパワハラ疑惑から派生して、保阪正康さんの『太平洋戦争の失敗・10のポイント 』で紹介されたエピソードで、「正しいことをした情報参謀」の立つ瀬が無くなったことを書きました。
太平洋戦争末期の台湾沖航空戦で、未熟なパイロットによる誤報が、それを検証しない現地司令部によって海軍軍令部に「大成功」として打電され、今後の作戦に致命的打撃を与えかねない状況を、体を張って報告した陸軍の情報参謀の努力が水泡に帰しました。
怖い上司に真実を伝えに行く
この情報参謀は、中央から現地に出張したときにこの事態に接するのですが、身を賭した報告をした後、そこの方面軍司令官のいるマニラへ向かいます。
司令官は山下奉文(やましたともゆき)。
「イエスかノーか」で知られる有名な人です。
この方は戦犯として処刑された史実などから、このセリフと相まって高圧的な印象があります。
この「イエスかノーか」は、シンガポールでイギリスのパーシヴァルに降伏を迫る強迫的セリフのように喧伝されますが、この『太平洋戦争の失敗・10のポイント 』のこのくだりを読むと、どう考えても山下氏はそういう人ではなさそうな様子がうかがえる。
情報参謀が報告に行くと、山下氏は「祝勝会をするぞ。今日は酒もたくさんある。君も食べろ」と言います。
案の定、方面軍本部にも誤情報が蔓延していて、実態がかけ離れていることを誰も知らない。
司令官が戦勝に喜んでいるところに水を差したら、一体どんなことになるか・・
誤情報に誰もが舞い上がる現場に、真実を携えて入り込む孤独感
もし山下氏が、その後指弾されたとおりの「イエスか!ノーか!」という強圧的人格の人間だったら、それこそどんなパワハラをされるかわかったものではありません。
「貴様の言い様はなんだ! 取るに足らぬ些事を大げさに! 貴様それでも帝国の国防を預かる軍人であるか!」
「貴様のような惰弱な敗北主義者には、大和魂を注入せねばならん! 腐った性根から叩きなおしてくれる!」
「そこへ立て! 歯を食いしばれ!」
・・・とかいう展開があるかも。。
そのあげく左遷、または参謀の身でありながら前線の死地に投入されて散ることになるか・・
しかし、この情報参謀は、ここでも意を決して己の意思を通します。
山下氏と二人きりになったときに、彼が確認した実情をありのままに伝えます。
さて、山下氏はどう反応し、情報参謀はどんなことになったか?
すみません。このところ業務多忙につき原稿にしきれないので小間切れですが、この続きは次の記事で書かせて頂きます。