物語の13日目 11月21日（月）am７：３０
朝倉哲也の二晩の過ちのことは脇に置いて、この日の食事風景を見ていきましょう。
まずは大藪春彦先生の描写からです。
戸棚に残っているマグロの罐詰三個とインスタント・スープに浸した古パンを胃におさめて朝食を終った
気になるところが何か所かあります。
大藪春彦作品では、パンが古くなる理由まで詳細に仕組まれている
朝食シーンで気になったものの一つ。
『古パン』
どのくらい古いのか？
なぜ、古くなったのか？
「そりゃぁ、置いといたからだろ？」
違うな
我々が今向き合っているのは、大藪春彦の世界観だ。
大藪先生が、そんな曖昧な理由でパンを新しいとか古いとか言うはずはない。
大藪流賞味期限を読み解く
大藪先生がこの朝のパンを『古パン』と表現した理由はここにあります。
（※個人の感想です）
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物語６日目、11月14日のシーンで朝倉は「これで三、四日は食い物の心配はいらない」と表現されるだけの食料十数キロを、まとめて買いこんでいます。
順当にいけば、14日から起算して18日までがいわば ”大藪流賞味期限” とでもいうところです。
翌19日以降が「古くなる」と表現されるに値するので、本来なら19日の食事シーンで出番が予定されていたとみてよい。
ではなぜ、それから二日も経過した21日まで、このパンは戸棚に残されていたのか？
我々はここを考えねば、真に大藪作品を楽しめたことにはならない・・
『蘇る金狼』史上でも名高い、戸棚に残されたパンが過ごした『空白の二日間』とは？
（※個人の感想です）
19日（土）と20日（日）に、朝倉哲也が何をしていたのかを思い返してみましょう。
そう、この二日間はずっと、朝倉は小泉経理部長の愛人・永井京子と過ごしていました。
チッ！
ム。
今回も出たな？『チッチ勢』
ちっ！
ﾁｯ(･д･)
ちっ (ーー；)
疾ッ
(￣￣￣￣д￣￣￣￣)ﾁｯ
ﾁｯ!
(-△-）チッ
うーむ……
やっぱり中に一人だけ、どさくさ紛れに宝貝(パオペエ)投げてるヤツ居るんだよな。
人に当たると痛いからやめときなさいって。アレは・・
とにかく、16日に買ったパンが「三、四日」とした大藪先生既定の賞味期限を超え、19日以降に食べることになったから、この時のパンは『古パン』と記されている。
ここを読み解くのが孤独なグルメ『蘇る金狼』の醍醐味ではありませんか。
持っていたのか！『インスタントスープ』
朝倉がスープを飲むシーンについては、かつて触れました。
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この11月11日のシーンでは、朝倉は缶のスープを食しています。
これについて私は「メーカーは【キャンベル】か？ それとも【クノール】なのか？」と随分気を揉みましたが、いずれにしても罐詰であったことはたしかです。
「インスタント」で「スープ」というと、”お湯を注いでできるもの” と、つい思い込んでしまうのですが、気になったので念のため調べてみると、”インスタント” とは手間をあまりかけずに短時間で調理ができる食品の総称らしい。
広い意味では缶詰もこれに含まれるとのことですから、これは大藪先生が我々読者に仕掛けてきた腕試しとでもいえるものかもしれません。
安直に粉スープを連想してしまった私は、まだまだ甘いということがよくわかります。
罐詰で満腹になれるのか？
さて、メインディッシュ『マグロの罐詰』です。
ちなみに「缶詰」と書くよりも「罐詰」という字面のほうが、なにやら豪勢でおいしそうに感じてしまうのは私だけでしょうか？
得体のしれないゴージャス感が「罐詰」という字面に表れているようで、そういうところもまた大藪作品の魅力のひとつです。
昔の罐詰は、今と違ってプルトップなんてありませんから、開ける作業に手間取るがゆえの達成感も相まって、美味しさをいっそう引き立ててくれてましたね。
ということで、見ていきましょう。
『罐詰』を・・
「罐詰シーン」を追え！
朝倉哲也は、この物語開始以降、何度か罐詰を食べています。
直前の罐詰シーン（11月18日）では、鯨を食している。
その三日前の11月14日にも「鯨肉の罐詰」を食していますが、この日は上にも述べた「食料十数キロ」を買い込んだ日です。
念のためその時の記述を確認すると
アパートへの帰路、朝倉はスーパー・マーケットで十数キロの食料を買い込んでいた。
罐詰類とビタミン補給のレモンと安ウイスキー二本が主なもの・・
と書かれています。
どうやらここで記された『罐詰類』に、まだ我々が知り得ぬ大藪ワールドの奥深さが隠されているらしい・・
さんまの蒲焼缶の形状は、なぜあんなにも食欲をそそるのだろう？
11月14日の買い出しの際、朝倉が鯨肉とマグロをスーパーのカゴに入れたことは確実でしょう。
ところで、一口に「魚肉系の罐詰」といっても、どんなものがあるのだろうか？
（エッ？・・わかってますって。くじらは哺乳類。もちろん芸人のほうもでしょ？）
世の中には、誰とでも幸せになれる人と、誰といても幸せになれない人の二通りしかいない。
魚肉の罐詰といえば、子供のころ無性に惹かれた「さんま蒲焼」の、あのグッドな形状が真っ先に頭に浮かぶ私ですが、現在ではかなりのバリエーションが楽しめますね。
缶詰 保存食 4種類 24缶セット 詰め合わせ キョクヨー お魚 惣菜 さば いわし さんま 非常食 備蓄 防災 災害
「24巻セット」ならぬ『24缶セット』
大藪的文字表記で言い換えれば『24罐セット』ということになります。
残念ながら鯨肉はこの中にはありませんが、『蘇る金狼』の舞台である昭和41年と現在とは価値観が違うので、ここは魚類一本に絞って考えることとしましょう。
朝倉の腹は、それで満たせるのか？
食欲をそそる形状の罐詰は、その存在自体が愛おしい。
ただし、大藪先生がこの朝の食事に許した分量はあくまでも『罐詰三個』であります。
このミッションをクリアすることは、ハードボイルド・朝倉哲也にとっての至上命題です。
ちなみに、上の罐詰の容量はいずれも「1個100グラム」
これはいけない。
たったの300グラムでは、朝倉の肉ゲージは決して満タンにならない。
それではHPゲージ回復が為されない。
⇧こちらの画像は「ひきこもろん」さんのサイトから頂きました。
ここはひとつ、補正をかけて辻褄を合わせなくてはなりません。
大藪式の度量衡では、肉類は「キロ表示」と決まっている
色々と探してみたのですが、やはりどうにも分が悪い。
190グラムの缶は、先ほどの100グラムと比較すればほぼ2倍！
普通の人にとっては、十分に堪能できる内容です。
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これ⇩なんかも、かなり惹きつけられます。
味付けが淡くアレンジ自在の水煮は、困ったときのお助け食材……って、今はそういう話ではなかった(;^_^A
いかんせん、食べるのが朝倉哲也なので、かなりの好条件といえども、これを3つ食べたとして、総量は570グラムに留まります。
大藪春彦式の度量衡を発動すれば「半キロと少し」
まあ、朝食ということを考えればこれで十分と言えますが、気になるのは、夜に罐詰を食しているシーンで
罐詰を主食にし
という記述があることです（11月14日）。
そして、続く11月18日では
棚に残っていた三つの鯨の罐詰の蓋を開いて、ガス台の火にかけた
と書かれており、たとえディナーのメインディッシュといえども、いちどきに食してよい罐詰の数量は『３』であるとの厳しいお沙汰がございます。
量でお悩みの朝倉様にピッタリの商品をお届けします
朝倉哲也の食事量は、一般的な成人男性と比較できるものではありません。
そこへもってきて大藪先生は、たった一回の買い出しにおける調達量で「三、四日は食事の心配はない」などと古今未曽有の煽りをかましてくる。
あのときに焦ってＥコマース商店街を駆け回り、何とか工面したウイスキーのことを、私は今でも忘れていない。
そして今回は「朝倉哲也が主食として喰らうに相応しい ”罐詰３個” を探せ」と・・
・・
・・・
・・・・
やってやりましたよ
！
そう、やってやりましたよ
！！
これでも喰らえ！
俺と大藪と朝倉の戦いは、まだ終わらない・・
