私は昔、ジャンプコミックスの『ろくでなしBLUES』が好きでした。
連載前の読み切り作品でグイッと引き込まれ、連載開始時には「おおおっ!」と感激したほどです。
次作『ROOKIES』より知名度は低いものの、そのドラマ性やキャラの魅力なども抜群でした。
帝拳高校に入学した主人公・前田太尊(たいそん)の、ケンカ、ボクシング、恋愛、仲間たちとの絆など、憎めない不良高校生の生活を描いた作品です。
物語は太尊の入学時から三年時までを描いているので、進行とともに時間が経過します。
ということは主人公の進級とともに先輩は去り、後輩が入ってくる様子が描かれることになる。
そこで、同じジャンプ作品である『スラムダンク』と共に、作品内における各世代の存在感について、ちょっと思ったことを書いてみたいと思います。
間に挟まれ受難
あくまでも私の主観ですが、『ろくでなしBLUES』(以下「ろくでなし」)と『スラムダンク』(以下「スラダン」)を読んでいて共通するのは「1年と3年に挟まれた2年が割りを食って、なんだか弱々しい印象」ということです。
たとえば「ろくでなし」では、太尊が入学するなり敵対した応援団とボクシング部には、それぞれ3年に輪島、畑中、浜田といった存在感抜群なキャラが存在する。
ここでは、基本的に2年生は前座になる。
そうでないと、敵方のボスである3年生の強さが引き立たない。
ゆえに、応援団の武藤とボクシング部の大橋という2年生コンビは、太尊がボスに迫っていくときの引き立て役を担うことになってしまいます。
”善戦” すら許されないなんて、ちょっと悲しい。
そして、主人公が3年になったときの2年もパッとしない
一方、太尊の1コ下の学年にも、パッとした人材は見当たらない。
目立つのはせいぜい渡久地誠二くらいのものでしょうが、これもパッとしないことには変わりない。
そして、太尊が3年になった頃、王国に挑戦する新1年生、海老原が登場する(積極的敵対ではないが)。
といっても、さすがにいきなり大将である太尊みずからが、直に戦うわけではありません。
まずは、かつて2年生の武藤と大橋が、1年生の太尊に対して演じたように、渡久地が ”生意気な新入生” をシメようとして返り討ちに遭う(だったような記憶が…違ったらスイマセン)。
「得体のしれぬ新人」の存在が日に日に熱くなるなか、不期遭遇戦のような形で、太尊と海老原の直接対決となりますが、このときは”前哨戦”といった感じで不完全なまま終了。
勝負こそつかないものの、太尊が海老原の強さに驚かされます。
そして、その後決戦となる。
以降は仲間になった海老原ですが、東京四天王・最後にして最強の『池袋の葛西』が率いる集団との戦いの中では、2年生たちを差し置いて、やはり最も頼りになるメンバーとして描かれます。
学園モノの宿命?
主人公が入学した当初に挑戦、または敵対する上級生の代表として3年生のキャラが描かれると、どうしても2年生は引き立て役に甘んじなければならない。
これは物語の必然性と言えるでしょう。
だから1コ上の先輩はあまり目立たなくなる傾向がある。
そして「ろくでなし」のように連載が長期に渡ると、世代交代が行われますが、その中でもこの傾向は継続する。
主人公が2年生の時代はともかく、3年に進級した時に補強される後輩メンバー(1年生)を引き立てる際には、今度は1コ下である2年生が、その任を負うことになる。
結局、主人公の前後1学年がワンクッションになりがちなので「2年生がウィーク」という印象を持ってしまうのですがいかがでしょう。
3年が居ない特殊設定では「強い2年生」がそのまま3年になり、クッション的な役柄の世代はない
ここで少し余談ですが、『黒子のバスケ』の誠凛高校は、新設校の設定です。
黒子が入学した時点の最上級生は2年生。
3年生が居ないという思い切った設定にしているため、2年生が単なる引き立て役に甘んじるのとは全く違っているところが特徴です。
ちなみに私は、頼れる先輩がいるのは、それはそれでありがたいと思うけれど、あまり長いあいだ上に居座られると、それはそれで鬱陶しくなるという「くそ生意気な後輩体質」のため、黒子と同じ代の誠凛高校には入りたくない。
私は高校受験の時「近いから」という理由で学校を選んだので、まったく同じ理由で湘北高校を選んだ「スラダン」のルカワとは案外気が合うかもしれません。
やはり2年が弱く見える湘北高校
その湘北高校には、赤木キャプテンと、3Pシューター三井の3年生コンビが強烈な個性を持って存在します。
湘北はベンチ層が薄いため、実は赤木と三井が抜けると残りの3年生はメガネ君しか居ない。
ということで3年生も脆弱ではあるのだけれど、とにかく赤木と三井、この二人が異常に強い。
2年生の宮城リョータはとても良い選手なのだけれど、数人いる他の2年生部員が相対的に弱すぎて「2年は弱くない」とはちょっと言い難い。
そして1年生は主人公・桜木花道と、そのライバルで超高校級のルカワがいる。
結局、赤木・三井という「2強の1枚看板」しか実は持っていない3年生と同じように、1年生の花道・ルカワの陣容もやはり「2強の1枚看板」でしかない。
決して、『2年に比べて圧倒的に強い』とまでは言い難いはず。
しかし物語の展開上、2強を擁する3年生と1年生は強力な印象がある・・。
そうすると、やはりなんとなく2年生が割りを食ってる感が強いのですが、どうなんでしょうね?
インターハイが終わると赤木とメガネ君が引退し、三井は「選抜も出る」と言って部活に残りますが、やがて卒業してしまう。
1年繰り上がった湘北高校は、戦力がガタ落ちになります。
そして「ろくでなし」と同じ法則で行けば、主人公の1コ下の学年には、あまり大したヤツは居ない。
新キャプテン宮城はこの弱体化したチームで、強豪と戦っていけるのだろうかと心配になります。
大人気漫画だっただけに、人それぞれ思い入れもあって、譲れない自論みたいなものもあるでしょうけれど、私はやっぱり「2年がパッとしない」という印象を持ってしまいます。
余談:描写的に弱かった残念なふたり
これもまたちなみに、ですが・・
同じく「スラダン」の話。
海南戦の後半で、牧に初めてダブルチームで当たる湘北を描いたシーンがあります。
突っ込んでくる牧を最初にマークしたのは3年生の三井と2年生宮城のコンビなのですが、私にはこれがどうにも弱々しく見えてしまった。
そんな読者の気持ちを裏打ちするように、海南の高頭監督がたった一言「二人でいいのか」と発する1コマを挟むと、二人はあっさりと抜き去られる。
さらに突進する牧に立ちふさがったのが花道とルカワの1年生コンビなのですが、こっちの画の迫力がスゴイ。
三井・宮城はともにパワー型じゃないので、牧との比較で弱キャラに映ってしまうということはあったでしょうが、私の「2年が弱いバイアス」の影響も否めないところです。
(巻き添えをくった3年生の三井・・)
逆に、迫力抜群だった1年生コンビには ”主人公補正” が利いていて、そのように見えたのだろうか?
なお、続けざまに4人の敵に囲まれた牧は「こう来るのを待ってたんだ!」と、神宗一郎にパスを送り、ここから名シューター神との本格的なコンビプレイが炸裂します。
そして「牧ひとりを4人で囲む」という安西監督の秘策は、この後に展開する・・奥が深いぜ、海南!
このシーンは本当に熱かったですね!