私が子供の頃に魅了された「サラミ」
ピッツァではスライスされた形でお馴染みですが、少年時代に我が家でお目にかかるのは棒状の固いやつ。
薄いビニール状の膜で全面がコーティングされ、それを剥がさないと食べられないという点で、類似品としてチーカマや魚肉ソーセージがありますが、あそこまでの手軽さはない。
ちょっとだけハードルが高いところが、一層その魅力を引き立たせます。
そしてあの薫りと、噛んだ時に感じる反発力、そのあとに来るスパイシーさと濃い味わい・・。
未だに尽きせぬ憧れを抱かずにはいられません。
私の頭の中では、他の食材でこれほど長い期間、ダントツの存在感を放つものは珍しいのです。
『分厚いステーキとまむしジュース』
昔流行った ” 豆本 ” をご存知でしょうか?
谷村新司さんの『天才・秀才・バカ』はシリーズ化するほどヒットしましたが、あれはこの ” 豆本 ” で刊行されたものです。
当時はこの媒体もかなり知られていて、書店にはたいてい ” 豆本コーナー ” があったほどです。
もう一度読みたい小林弘の『実践ボクサー パンチのテクニック』
そんな ” 豆本 ” の中で私がハマり、繰り返し夢中で読んだのが、元ジュニアライト級世界チャンピオンの小林弘さんが書いた『実践ボクサー パンチのテクニック』です。
『あしたのジョー』の連載が始まったのと同時代に活躍した小林選手は、偶然にもクロスカウンターの使い手として6度の防衛を果たしました。
(たしかブラジルでジョー・メデルのコーチを受けているときに勧められて習得したと書いてあった気がします)
「あしたのジョー」の代名詞とも言えるクロスカウンター。
おそらく小林選手もジョーを引き合いにもてはやされたのではないかと思われます。
しかし小林選手はマンガ人気に乗っかって浮わつくというタイプではなかったらしい。
決めワザ(クロス)を持っていると相手に警戒させて、繰り出すか出さないかは状況により使い分けるといった、いかにも玄人好みの手堅いファイトスタイルに定評があったようです。
買おうとすれば買えるらしいけど、お値段がちょっと・・
『実践ボクサー パンチのテクニック』は、パンチやディフェンスの種類や特徴がわかりやすく説明されていて、それだけでもかなり面白いのですが、ドラマ性にも富んだ読み応えのある本で、生い立ちや体験談なども活き活きと描かれている。
私生児であったがためにイジメられ、自己防衛のためにワルになった小林少年が、ある雨の夜に暗い物置の中で息をつめて、一心にラジオの音声に耳を傾ける。
聞いていたのは白井義男選手の世界防衛戦(パスカル・ペレス戦だったかな?)。
やがてチャンピオンが敗れたアナウンスを耳にしたとき「ボクサーになろう!」と決心したシーンから始まるこの本、非常によく出来上がっている傑作だと思うのですが、もはや手に入らないだろうな・・
一応Amazonで出品されてますが、お値段はなんと19800円~
昭和52年刊行か・・1977年、、いやはや、46年前とは・・
減量明けの御馳走が頭から離れない中学時代の私
いや、それはさておき・・
つらい減量を経て計量をパスした小林選手は、そのあと決まって「分厚いステーキとまむしジュース」で力をつけて試合に臨んだそうです。
「分厚いステーキとまむしジュース」って・・
当時中学生だった私の脳裏に、何度その二つのイメージが浮かんだかは数え切れません。
小林選手がどんな場所で、どんなステーキとまむしジュースを味わっていたのかはわかりませんが、感動ひとしおの忘れがたい食卓だったことはたしかでしょう。
脳内『分厚いステーキとまむしジュース』
私がこの本にのめり込んでいた中学時代はネットもなく、コンビニも存在しない時代。
映像情報は得られないのですべて想像するしかありません。
飲食しながら想像を楽しむには、オーバーラップさせられる食料を求めていくのが最良の道だった。
部活前に食べる/飲む
私は陸上部に所属していたので「スポーツ」という点でも小林選手の状況になぞらえやすかった。
タイミングと言えば・・そうだな。
授業が終わってから部活の開始までに時間が空く場合に用いられた『再登校』という制度。
これがうってつけだ。
この再登校になったときこそ『計量後に空いた試合までの時間』に等しい気分を演出してくれる。
「ここでサラミだ!」
分厚いステーキに代わる存在。これは決まりです。
もうひとつ、飲み物のほうですが、さすがにまむしジュースは用意できません。
家にあっためぼしいモノで、私が好きな飲み物は「罐入りのコンデンスミルク」
上部の両サイドに缶切りで穴を開けて傾けると、トロリトロリとと細い管になって出てくる練乳。
あれを根気よくカップに入れてお湯を注ぐと、甘くて美味しいホットドリンクができる、あのコンデンスミルクです。
濃いめに作ったホットコンデンスミルクとサラミをかじって力をつけ、家から飛び出して部活へ向かう中学生の私は、完全に『実践ボクサー パンチのテクニック』の世界に浸っていた・・
私のサラミ好きに一役買う、美味の思い出です。
最近見かけない『固いサラミ』
中学時代の思い出に照らすと、近所で見かける各種のサラミは、どうしても物足りない。
柔らかいものばかりなのです。
やはり、持った瞬間に、その歯ごたえを感じさせる固いサラミでなければ・・
立てた歯が、顎の力に応じてメリメリメリッと肉に喰い入っていく圧を感じさせる、あの往年のサラミ。
それは決してジャッキーカルパス的な、「指の強さに押し負ける柔らかさ」ではない。
ジャッキーカルパスは細いから指の圧に負ける、というわけではなく、あの材質(?)自体が柔らかいので、あれは私が志向するサラミとはまったくの別物なのです。
ついでに言えば、ジャッキーカルパスは味も優しい。
それはそれで魅力ではあるけれども、”試合前のパワー” を再現したい私にとっては野獣的パワーを感じる強い味と、何よりも強い食感が欲しいのです。
探し求めて信濃屋へ
近所のスーパーを回ってみて目にする太いサラミも、ジャッキー的な柔らかさを持つものばかりで、それはほとんど「触った瞬間」にわかる。
小林弘選手が味わったであろう『分厚いステーキ』を私なりに楽しむためには、むかし食べたあのサラミを・・
と思いつつ、何気なく入った銀座8丁目の信濃屋で「憧れのサラミ」を発見したのは数年前のこと。
パッケージを捨ててしまったので同じものは確認できませんが、おそらく【富士ハム】のサラミです。
これこそ私が求めていたもの。
その後、家の最寄りの信濃屋でも売っていることを知って、そこで買っていたのですが、ある日なぜかサイズダウンしていた。
150グラムのものが無くなって、ハーフサイズのものに・・
お店の方に訊ねると「賞味期限もあるので売れ残りが出ないよう、様子を見ながらの発注なんです」とのこと。
そして先日、とうとう店舗から姿を消してしまった。
これは困る。
近所の信濃屋で買えなくなって・・
もちろん、最近は『分厚いステーキ』代わりにサラミを食べているわけではなく、時々ピザトーストを食べたくなった時などにうってつけだったので買っていただけですが、供給を断たれるとなれば対策を講じたい一品ではある。
ということで最近こちらで買いました。
愛媛県松山にある『有限会社 酒吉』さんが運営する楽天のショップ
自然派ワインと地酒と食品 MOAI です。
【ネコポス発送で送料無料 ※代引き・同梱不可】キングソーセージ 冨士ハム キング 150g×3本 サラミ 富士ハム
これはまさに、私にとっては「当たり」
ちなみにこの商品ページに掲載されている、ショップ担当者の方のコメントは、私がサラミ一般に感じている好みとぴったり一致している。
少し引用してみます。
子供の頃に食べたサラミは、固くて独特の香辛料のスパイシーさがあり、
正直サラミはちょっと・・・な私。
でも、このサラミを食べてビックリ!
口の中でジュワーっと溶け出す脂身のうまいこと、うまいこと!!
噛めば噛むほど肉の旨みが感じられて、
一度食べだすと止まらなくなる美味しさ!!!
「正直サラミはちょっと・・」という感想だけは私と真逆ですが、最初に受ける食感と、噛んだ時に受ける味わいの表現はまったく同じです。
味覚の合う人には親近感をおぼえます。
少なくとも富士ハムのサラミをショップに揃えたバイヤーっぷりが私を惹きつけます。
他の商品ラインナップも大いに気になっているところで、これからいろいろとこちらのショップさんの食品をじっくり見ていこうかと思っている次第であります。
(・・それはそうと、記事の長さが想像の3倍以上になりました。ちょっとサラミのことを書こうと思っただけなのに・・)