【感情会計】善意と悪意のバランスシート

財務諸表から逆算で人心を読むテクニック

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やっぱり「逆撃シリーズ」には魅力あり!!

歴史の「もしも」を考えるのは楽しい。

 

もし、織田信長が往年の逃げっぷりの良さで本能寺を脱出していたら・・

もし、大阪城の豊臣秀頼を関ケ原に出陣させることができていたら・・

  

その後の展開が無限に広がってくるような気がします。

 

しかし、このような空想は虚しいものだという考えもあります。

どうせ「もしも」だから、どんな「その後の展開」にも結局は意味がない。

 

だから、どんな展開を考えても所詮はフィクションにすぎない。

そして、フィクションであることを前提にしてしまったら、仮に物語内でどんなに本格的な歴史検証がされていても、信ぴょう性が感じられないものになってしまう。

 

それだったらいっそのこと、現代にある文明の利器を持ち込む想像のほうがおもしろい。

「戦国自衛隊」なんかはその代表例でしょう。

 


戦国自衛隊

 

さらに、どうせタイムスリップするなら未来とつながっていてもよい。

もともと現代と未来がつながっている「ドラえもん」の世界なら、未来の道具を過去に持ち込んで「歴史のもしも」を展開できて一層おもしろい


ドラえもん&どこでもドア 藤子・F・不二雄ミュージアム限定

 

歴史に関するフィクションは作りやすいかもしれないけれど、無限に広がってしまうその後のストーリーから、どれを選択してどんな要素を合わせるかが腕の見せ所になります。

入り口は比較的簡単かもしれないけれど、ウケるかどうかはやっぱりシビアだと思う。

 

 『もし俺だったらこうしてる』・・という「もしも」

 私は歴史にまつわる書物を読むときは、史実を重視するタイプです。

 

フィクションであるにしても、それなりに歴史的事実が忠実に再現されていないと読む気がしないので、あまりぶっ飛んだ内容とか、最初から事実無視のスタイルで開始している物語は、読むのが不毛だなと感じ、手を出しません。

 

しかし、柘植久慶さんの「逆撃シリーズ」は、この「歴史のもしも」を扱った作品の中で、少し異色な感じがします。

 

「信長が脱出に成功」といった出来事ありきの展開ではありません。

また、「未来兵器を持ち込んだ」といったツールありきのストーリーとも違う。

 


逆撃 大坂夏の陣 (C★NOVELS)

 

「もし俺自身が過去にタイムスリップしたら、何をどれだけできるだろうか」という自分視点であり、何もしなければ史実どおり進んでしまうのを、どうやって捻じ曲げていくかを描いています。

 

おもしろいのは、そこで主人公が最初にするのは“人間関係形成”であるという点です。

 

ここに毎回かなりの字数を割いているのですが、他の物語だとここは無条件に「主人公は受け入れられる」設定で物語は進むでしょう。

「逆撃シリーズ」では、そこは自力で回し続けないと立場が保てないようになっていてリアルです。

 

また、軍師になって適切な指示を出したり、自ら現場で指揮をとることも多いので、歴史事実に詳しいだけでは役に立ちません。

 

戦場における地形を知るのはもちろんですが、季節や時間帯によって、同じ場所でも様相が変わることを理解していないといけない。

 

“川中島”とか“三方が原”とか“南宮山”などは、概念で知っているだけではダメで、ポイントになる地点に何月何日の何時に居るのかによって部隊の行動が違ってくる。

 

留まるか進むかによって、体調管理や装備の仕方を変え、それ用の物資の調達まで手配しなければ作戦が成り立たない、と。

 

さらに、そこを通過するときの敵味方の状態とか、拠点にしたときの利便性までを知って指示を出せるかどうかで、指揮官の価値が問われてしまう。

 

普通の作家でそこまで踏み込んで書き切る人はあまりいないでしょうが、柘植さんは海外での傭兵経験があり、戦闘現場に身をさらしています。

 

的確な指揮とそうでない指揮の違いを生死の境で実体験し、人間関係や物資の有無による戦場での多様な駆け引きの経験がベースになっているので、現代日本の作家で同じ空気感を表現できる人はまずいないでしょう。


指揮官の人心統率術―戦場からビジネスまで

 

柘植さんの作風は、たとえば司馬遼太郎さんのそれと比べるとフィクション要素が前面に出ているため、ある意味でキワモノ扱いかもしれませんが、ちりばめられた価値観の描写は実にリアルで興味深いものが多い。

 

それに、地形に関するリアルさの追求ゆえ、年月日にこだわりがあり、歴史事実も忠実に再現されている。

 

「主人公が現代人」という点を除けば、参謀とかリーダーの在り方を描く「実践編」的な、ビジネスの教科書にもなり得るものだと思います。