【感情会計】善意と悪意のバランスシート

善と悪の差し引き感情=幸福度

給料戦略は「給料戦術」に気を取られやすい

前の記事で「戦略のイメージ」について6段階に分けてみました。

願望(何としても成し遂げたい)

目的(何のためにするのか)

目標(目的を達するにあたり、とりあえず何を目指せばよいか)

戦略(目標を効果的に達成する全体的な方法とは何か)

仕組(戦略を各種の行動に移す際の準備とは何か)

戦術(仕組に沿って、ここに必要な事柄を、素早く正確に繰り返す)

(情報源はランチェスター経営の竹田陽一先生です。そして、竹田先生自身は元海軍軍人で航空自衛隊の育ての親である源田実氏の本から学ばれたようです)

 

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年功序列や功労者賞で抜擢された幹部に『戦略』が使えない理由

戦略の語源は「将軍の術」であると言います。

古代ギリシャの時代の意味は「軍全体の効果的な勝ち方、あるいはそのルール」だそうです。

 

前回記事で「目標を効果的に達成する全体的な方法」と紹介しましたが、この『全体的な』というところにポイントがあるようです。

 

ということは、たとえば末端の一作業担当者が、日々繰り返している自身の作業を補強するのは“戦術の強化”であって『戦略』とは言えないことになります。

 

戦略が「将軍の術」なのに対し、そういうのは「兵士の術(戦術)」になるとのことです。

 目先の対応で積み重ねた年次は『戦略家』の資質にはならない

では、いくら必死に考えても、自分1人が行うことだと戦略とは呼べないのか?

これについても、ランチェスター経営の竹田陽一先生は、分かり易い言葉にまとめています。

 

たとえば、経営戦略というのは「会社全体の効果的な業績アップの方法」で、これを担当するのは経営者ということになります。

 

それから、これを営業に適用すると「営業全体の効果的な成果の上げ方」で、これを担当するのは会社の規模によりますが、小規模なら社長で、少し大きくなると普通は営業部長です。

 

ということは、実質的な人数が1人でも、それが単体でなく『全体としての動き』ならば、戦略という言葉を当てはめても間違いではなさそうです。

 

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きっとこういうところも、戦略という言葉が百人百様の解釈を生み、濫用されてしまう原因かもしれません。

 

「〇〇長という肩書がついた自分が考えるから戦略だ」とばかりに、些末なルールをさも高尚そうに掲げる上司がいる一方、平社員だがチーム全体の動きやすさを考えて理想的な業務現場の構築に効を発する部下もいるので、そうなると言行不一致な現場になりますから、そこのメンバーにとって、戦略と戦術を正しく捉えることは困難になります。

 

『あなたの給料戦略』は?

では、前回記事の冒頭に書いた給料戦略の決心を、分解してみます。

あなたはこう考えました。

 

収入を増やしたい!

副収入を作るのも考慮したいが、まずは本業の給料をアップさせたい!

そのために、働きを認められて出世する!

これが自分の『給料戦略』だ

 

つまり「社内であなたが名実ともに出世して、今より多額の報酬を手にするための効果的な方法」を“戦略”とします。

 

ここでさっそく、「じゃあまずは自己研鑽だ」という人もいるでしょうが、ちょっと待ってください。

 

あるいは「あの商談(他には『開発』とか『プロジェクト』)を成功させるポイントを再検討しよう」と考えた人もいるかもしれませんが、それもちょっとストップです。

 

それから「やっぱり××部長の引き立てが有るか無いかが成功のカギになるから、好かれるための戦法を仕掛けよう」といったことを模索する人も、一旦止まってください。

 

たしかにいずれも出世に影響があるかもしれませんが、明確な「願望」「目的」「目標」をどのようにおいて、連携させていますか?

 

もう一度書きますが、戦略の位置づけはトップではありません。

 

願望(何としても成し遂げたい)

目的(何のためにするのか)

目標(目的を達するにあたり、とりあえず何を目指せばよいか)

戦略(目標を効果的に達成する全体的な方法とは何か) ☜ココ

仕組(戦略を各種の行動に移す際の準備とは何か)

戦術(仕組に沿って、ここに必要な事柄を、素早く正確に繰り返す)

 

戦略なき戦術は兵士を犬死させ、土台なき戦略は戦いを失う

前回記事にも書きましたが、無機質な戦略は求心力が弱くなる可能性があります。

他人はもちろん、自分自身のモチベーションを保つのが困難な場合も出てくるでしょう。

 

また、「戦略」をゴールにした自己研鑽が頭脳的な活躍を阻害することがあるように、戦略をゴールにしたことによって本末転倒を起こしたり、バーンアウトしてしまう危険もあります。

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上に挙げたような「自己研鑽」「手近で短期的な成果」「上司への取り入り」といった事柄は、たとえ思慮が浅いものだったとしても、いずれもそれ自体がひとつの分野として独り歩きしやすいトピックです。

 

そのため多様多彩なノウハウにあふれ、参考資料も膨大にあって迷うこともあるでしょうし、定量データにし易いメリットにも恵まれていますので、一旦手掛けると目の前に次々と越えるべきハードルが現われてあなたを翻弄します。

 

目先の達成感に浸るうちに視野が狭くなり、自分が進んでいる道が、本来目指すべき方角なのかどうかが俯瞰できなくなることもあります。

 

そんな状態に陥ると、他人の忠告が耳に入りづらくなり、驀進する道の途上で他人を出し抜いたり蹴落としたり、傷つけたりすることへの感度も鈍くなってきます。

 

手段に溺れた結果、職場で孤立する頑張り屋がバーンアウトするのは「ふとした気づき」から

たしかにあなたの戦略は「社内であなたが名実ともに出世して、今より多額の報酬を手にするための効果的な方法」でした。

 

しかし、見事に戦略を達成しつつあるにもかかわらず、他人から見たあなたは「平気で他者を陥れる無情の輩」ということになりかねない。

 

最初からそのつもりでやっているならイメージのギャップにショックを受けることはないでしょうが、あなたはただ、自分が豊かになりたかったから努力を続けていただけだとしたら、いつの間にか自分の周囲に面従腹背する部下ばかりになっていることに恐怖を感じる日がやってくるかもしれない。

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戦略を頂点において、それを軸に人生を回したことによる弊害を、あなたは被ってしまうことになります。

「戦略は下から3番目。中間管理職」と考え、一旦その上流に思いを馳せてみましょう。