【感情会計】善意と悪意のバランスシート

善と悪の差し引き感情=幸福度

【北斗の拳の食事情】①違和感をおぼえる設定を語る

北斗の拳は、純粋なバトル漫画です。

 

愛憎や友誼・信念や使命といった、熱い想いや形而上の世界観を描く物語において「食事」を表現する重要性は低く、さほど重視した描かれ方はしていません。

 

しかし北斗の拳の舞台である「インフラや社会秩序が崩壊してしまった世界」では、人間が生きていくうえで、食料は欠かすことのできない最重要の資源です。

 

ゆえに、バトルが深みを増していくまでの間、時代背景を説明するためや、苛烈な生き様をピンポイントで表すギミックとして、北斗の拳でも ”飲食 ” に関するコマは随所に見ることができます。

 

しかし、決して ”日常生活” に根ざしたものではないため、その描かれ方にはかなりの違和感がある。

 

そう、『蘇える金狼』に見る大藪春彦的世界観のごとく、ストーリーの外側にある描写なのに、まるでピン留めしたかのように、読み手の脳裏に強烈な印象を残すシーン(漫画なので「コマ」かな)が存在するのです。

 

 

水へのこだわりが強い男

私の記憶に残る「違和感ある食事シーン」について、数回に分けて書いてみましょう。
第1回はこれです。

<北斗の拳 第3巻より>

 

背後に並ぶ酒瓶やグラス。そして男が腰かけているのはストゥール。

ここがバーであることは一目でわかります。

 

私たちの日常をベースに考えた場合、まず間違いなくフキダシの「水」の一文字は「酒」になるでしょう。

 

男のポーズもそれを雄弁に物語っています。

 

どうでしょう、この『腰を落ち着けてじっくり飲るぜ感』

どう考えてもここでは「酒だ!」が似合っている。

 

強要の仕方に関する違和感

物資が不自由で、無頼漢が水分を求めて強要している背景はわかるけれど、それなら店のおやっさんに詰め寄って胸ぐらづかみや壁ドン的に迫るでしょう。

話は逸れますが⇧⇧コレ、『Photo AC』から「胸倉」でキーワード検索して出てきた結果なのですが、中々にブラックですね。

 

元の画像は上半分のお人形さんだけなのですが、そこから『デザインAC』へリンクする際のおすすめテンプレートとしてこれが提供されているのです。(こんなかんじ⇩⇩)

エッジが利いてますな・・

 

あの悪名高き「ジャッカル」は、実は【あの人】だった

で、本論に戻りますが、

 

つまり、バーのオヤジさんに酒ならぬ水を強要するならば、その時の姿勢は ”立ったまま” が基本と思われます。

 

しかしこの ”カウンターにドッカリと腰を下ろしたスタイル” には、明らかに飲食を楽しみに来た空気感が漂ってしまう。

ひょっとして彼は、水を、お猪口や升でグイっと飲るようなオツな楽しみ方を知っているのかもしれない。


小柳産業 国産天然木 一合枡 寿 64006

 

そう考えたときに私の脳裏をよぎったのは、美味しんぼに登場した杜氏の喜山徹平さんです。

第19巻2話「杜氏と水」に登場した喜山さんは、自分をヘッドハントした江戸一番という酒造の専務が、あまりにも水の味に無頓着であったことに腹を立て、就職を断って揉め事を起こします。

 

前職を辞めようと思ったのは、売れるからという理由で品質を落として大量生産を要求する蔵主に嫌気がさしたからという、いかにも職人気質な男です。

 

「水」にこだわるジャッカルと喜山さん

この回の話は、専務の兄である蔵主が、喜山さんが大事に持ってきた水と、山岡が用意した2種類の高品質な水を見分けられたことによって丸く収まり、水の味が分かる蔵主のもとでなら働けると就職を決めるところで落着します。

 

この喜山さんなら、どんな状況のなかでも『本当に美味しい水』の味を理解して尊重し、心ゆくまで堪能することが可能でしょう。

 

ということは、彼が喜山さんだった可能性が否定できない。

 

喜山さん変貌の謎

しかし一体、なぜあの実直な職人であった喜山さんが、ジャッカルと名乗る悪漢になり果ててしまったのでしょうか。

 

この喜山さんが・・

 

これほどまでに変貌してしまった・・

 

彼がここまで変わってしまった理由とは何なのか?

 

 

 

これか!

これがあの喜山さんを様変わりさせてしまったのだな

 

変わり果ててしまった喜山さんだけれども、水に関する鋭敏な感覚だけは健在だったというあたり、職人気質の強さを感じます。

 

ついでにもう一つ、彼が味方につけたデビルリバースは、専らその体格の大きさが語り継がれていますが、彼にはもう一つ、あのケンシロウを驚愕させた『羅漢仁王拳』の一流の使い手という一面があります。

ただデカいだけの男ではなく、名のある流派の、それも一流の使い手を選別し、仲間に選ぶあたりにも、いかにも品質にこだわるあの頃の喜山さんの性質が、核の炎にも負けない職人魂の発露を感じるのであります。