大藪作品の主人公の食事があまりにも破天荒なので、もう少し書いてみます。(この記事は過去記事を大幅に改修した再掲です)
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朝倉哲也が~♪ 朝食を食べーるー♪(嘉門達夫風に)
この作品の主人公・朝倉哲也は東和油脂という大企業の経理部員です。
彼は経理部長・小泉の愛人を垂らし込んで自分の野心のための道具にします。
彼女を騙すために借りて、偽りの愛の巣としたアパートでの、ある朝の光景です。
ベーコンエッグの皿の横に、トースターが置かれ、京子はトースト二枚と生ジュースを食べています。
しかし朝倉のほうは、一斤近くのパンを食べます。
一斤・・
一斤というと、カラオケボックスで見るハニートーストを想像します。
あれを一人で食べると考えると、明らかに持て余しますね。
あえてポンドで表現するのは、バター消費の本場フランスへのリスペクト?
朝倉は甘いものが嫌いなので、もちろんクリームなどはパンに塗りません。
ここで彼が食べたのは「バターとチーズを半ポンド」です。
半ポンド=225グラム
絶句せざるを得ません。
スーパーなどでよく見かける雪印バター1箱が200グラム。
<アフィリエイトリンク~半ポンド弱のバター>
あれの約1.1倍ものバターを、たった一斤のパンに塗りきれるだろうか?
もはや職人芸。朝倉哲也のバターさばき
テーブルの上にはトースターが置かれていて、京子はそれを使ってパンを焼いている。
朝倉が食べた一斤近くのパンは、何枚切りだったのでしょう。
8枚切りだとすれば、1枚当たりの厚さはそれほどありません。
京子が2枚を食べているので、残りは6枚。
この6枚に対して、一箱以上のバターをどう使っていくのか?
ただし、この⇩⇩⇩大きさを1斤と表現する場合もあるらしく、むしろ私はこっちを最初に想像していました。
さすがにスーパーやコンビニで売られている一般的な食パン1袋だったら、225グラムのバターを使うとパンがグチャグチャになりそうです。
そもそも、薄い食パン6枚程度じゃ、たとえ焼きたてでも1ポンドのバターは溶かし切れない。
さらに、同じ分量のチーズもある。
さて、職人・朝倉哲也はこれをどうさばくか?
両面にバターを塗ったパンは、食べ方に技量が要る
朝倉は、この作品の中で何度も、缶詰やチーズをパンにはさんで食べています。
この時も絶対にはさんでいるはず。
よく焼き上がった熱いパンにバターをはさんだら、普通は溶ける。
過度に大量のバターが溶けたならば、それを吸収したパンはシナシナになり、やがては端からボタボタと垂れ落ちるでしょう。
内側に挟んだバターが溶けて外側まで侵食し、つまんでいる両手の指まで油だらけになるほどグショグショになった食パンで、分厚いチーズをはさむ。
いっそのこと、チーズでパンを挟めばよいという状態ではないかと思います。
マズそう・・
バターは「塗る」ものじゃない、「噛む」ものだ(by朝倉哲也)
いや、私の想像力が弱いのかもしれない。
「朝倉はバターをパンに塗っていない」と考えれば、頭に浮かぶ映像は全く違うものになります。
バターとチーズを厚めに切ってパンにはさんだら、そのまますぐにかぶりつけばよい。
分厚いバターを、チーズと共に前歯でサクッと噛み割り、咀嚼して食べる。
濃厚な乳製品摂取。
「主食がパンである」という考えは、朝倉にはありません。
また、朝倉は劇中で2回ほど目玉焼きを作ったと思いますが、使った卵の数は5個です。
この朝も普段どおりだったことが想像されます。
g-graphicaさんによる写真ACからの写真
恐ろしいほど過剰な動物性たんぱく質、動物性脂肪の摂取。
単にワイルドという表現では収まりがつきません。